2018年からインディカー・シリーズでは“ユニバーサルエアロキット”が導入される。シリーズ主催するインディカーが選定したダラーラがデザインするエアロキットを出場全チームが使うことを義務付けられる。
2015年から3シーズン続いたホンダとシボレーによるエアロキットバトルは、参戦する自動車メーカーだけでなく、エントラントにも多大な費用負担をかけ、結果的にレースをつまらなくしていた。
メーカーごとのルックスの違いや、空力での競争というおもしろみは増えたが、多くのコースでシボレーユーザーが優位を得る結果となり、勝てる可能性を持ったエントラント数の減少、競争レベルを低下を招いてしまう本末転倒となっていた。
経費抑制のため、モノコックタブは2012年から使われているダラーラIR12(DW12とも呼ばれた)を2018年以降も3年間は引き続き使用。サスペンション、ギヤボックスも継続使用だが、ブレーキはフリクションパフォーマンス製がキャリパー、ローター、パッドと全面採用される。競争をエンジンのみとすることで、第三、第四の自動車メーカーの参戦が実現することをインディカーは期待している。ホンダとシボレーも新たなチャレンジャーは歓迎だ。
8月初旬、2018年用ユニバーサルエアロキットの初テストがインディアナポリス・モータースピードウェイで行われ、1週間の後にはミド・オハイオスポーツカーコースでロードコース用エアロのテストも開催された。
丸みを帯びたサイドポッド、グッと低められたエンジンカウル、タイヤランプのラインなどによってレーシーかつコンパクトなイメージに変わった。ホイールガードの廃止により、リヤヘビーだった重量配分も改善。より大きなダウンフォースをフロア下で生み出すことが今回の設計コンセプト。そうすることでタービュランスを減らし、マシン同士が接近して走れる環境を作り出そうというのだ。
テストを担当するチームに来年度に向けた大きなアドバンテージを与えることがないよう、マシンのメンテナンスはインディアナポリスにあるダラーラのファクトリーでのみ行ってよいルールとされている。走行データもチームに持ち帰ることは許されない。
インディカー及びダラーラが2台のシャシーとユニバーサルエアロキットを用意。現在シリーズに出場中のホンダとシボレーにそれぞれ1台ずつが委ねられた。エンジンは2017年シーズンで現在使われているスペックが搭載された。
ホンダのオペレーションはシュミット・ピーターソン・モータースポーツ、シボレーはチーム・ペンスキーが担当。ドライバーはホンダがオリオール・セルビア、シボレーがファン・パブロ・モントーヤだ。どちらも大ベテランで経験豊富、フィードバック能力の高さで定評がある。また、今年のインディ500に出場していながら現在レギュラーシートを持っていない点でもベストと判断された。
初テストが時速200マイル超で走るインディアナポリスというのは驚きだったが、念のため2日間スケジュールされていたテストは1日間だけで終了した。順調に必要とされた項目のチェックを完了させることができたからだ。ホンダもシボレーもワイヤーハーネスのトラブルを出したが、それが解決されるとオーバーヒートなどの問題も一切なく、どちらも100ラップほどの周回を重ねた。
「マシンは見た目の通りに速い。走行フィーリングも良い。接近しての走行は一切しなかったが、今年までのインディよりも前のマシンに接近して走ることができるのは間違いない。ダウンフォースをフロア下で作り出しているからだ。来年のインディ500は激しいバトルになる」とベテランドライバーふたりは新型マシンを絶賛していた。
ミド・オハイオではロードコース用バージョンのユニバーサルエアロキットがテストされた。こちらでも2台で200ラップのテストがなされ、よりエキサイティングなレースが行えるマシンになっていることがベテランドライバーたちの走行によって確認された。
「ロードコースでも前を走るマシンに接近した状態で走りやすくなっている。コーナーでもマシンを振り回して走れるし、とても楽しかった」とモントーヤは話した。
ショートオーバルでのテストもこの後に予定されているが、今年のレースよりも前を走るマシンとの距離は半分ぐらいに縮められるのではないかという期待がされている。そうなればオーバーテイクのチャンスも増え、ファンとすればより見ていて楽しいレースになる。ドライバーたちもバトルを堪能できるというものだ。
キットのデリバリーは11月下旬に一斉に行われ、各チームのプライベートテスト開始は2018年に入ってから解禁される予定だ。