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続きが気になってやめられない! 女性たちの戦い描くトルコドラマ『オスマン帝国外伝』の中毒性

2017年08月08日 12:13  リアルサウンド

リアルサウンド

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 一時でも韓国ドラマにはまったことのある人なら、毎回、エンディングで起こるとんでもない出来事の続きが気になって、2話、3話とどんどん観てしまい、気づくと夜が明けていたというような経験があるのではないだろうか。


参考:トルコ版“大奥” 女同士の愛憎ドラマ『オスマン帝国外伝 ~愛と欲望のハレム~』予告編


 この『オスマン帝国外伝 ~愛と欲望のハレム~』も、そんな風に、続きが気になってやめられないドラマだ。


 物語は、1520年にセリム一世が逝去し、息子であったスレイマン一世がオスマン帝国の第10代皇帝に即位するところから始まる。時を同じくして、ルテニア(現在のウクライナ)で司祭の娘であったアレクサンドラ(後に皇帝によってヒュッレムと名付けられる)は捕虜となり、オスマン帝国のハレム(後宮)に献上されることとなる。


 奴隷船の中で死を考え、ひとり反抗的な態度をとるアレクサンドラだったが、生き抜くためにと、皇帝スレイマンの寵愛を受け、側女になることを決意する。しかし、後宮にはスレイマンの息子を産み、妃となったマヒデブランや、皇帝の側近で弟のように信頼されているイブラヒムが、アレクサンドラの野望を阻むのだった。


 歴史が苦手な人でも、あるひとりの女性が宮殿の後宮(皇帝や王などの后妃が住まう場所)に入ってきたことで起こる波乱の物語であれば、すっとストーリーの中に入り込むことができるだろう。なぜなら、『大奥』など、この手のストーリーには大抵の人は馴染みがあるからである。


 こうした後宮を描いた作品では、登場人物が政治的な陰謀の結果、何かと幽閉されたり、攻撃されたりするものである。アジアの歴史上の出来事を描いた作品の中にも、有名なものでは、米びつ事件というものがある。この事件は、朝鮮王朝の英祖の時代、大臣たちの対立から、世子(跡継ぎとなる息子)が謀反を企んでいるという根も葉もない噂がたてられ、それを信じた英祖は世子を米びつに閉じ込めて8日後に死なせてしまうという出来事である。この話は、韓国ドラマでは『イ・サン』や、『秘密の扉』、映画ではソン・ガンホとユ・アインというキャストで制作された『王の運命-歴史を変えた八日間-』という作品にも描かれている。


 また、中国では、三大悪女のひとり、則天武后がライバルである皇后と後宮を貶めるために、彼女たちの腕と足を切断して酒の甕の中に閉じ込めたことも有名で、このエピソードがアレンジされ、映画『西太后』の中でもフィクションとして描かれている。


 この『オスマン帝国外伝』でも、これに通じる残酷なシーンも出てくるし、女性たちの熾烈な戦いが描かれている。後宮(ハレム)の中は、どこの国でも同じ様相であるし、宮廷には宦官(去勢された官吏)も存在する。巨大な権力にむらがるときの人間の心理というのは、どこの国でも同じなのだなと思うと、興味深い。


 また、それがドラマや映画になるときに、どこの国でも中毒的な手法で描かれている。そんなことを知れば、普段はなかなか触れることのないトルコのドラマを見るときの心理的なハードルも下がるのではないだろうか。


 本作では、ヒロインのヒュッレム(アレクサンドラ)と、皇帝妃のマヒデブランのバトルが見どころのひとつとなっている。明るくエネルギーに満ち、わざとらしいくらいの大胆なテクニックで皇帝をおとしていくヒュッレムに対し、どこか陰キャラで、そのくせ感情にまかせてヒュッレムを攻撃することで自爆して皇帝からの寵愛を失っていくマヒデブランが、回を追ううちにどうなっていくのか、気になって続きが観たくなって仕方がなくなる。


 しかし、生き抜くために皇帝の愛を得るなどという目標であっても、そこに向かうためには、目の前のことにいちいち反応して右往左往するよりも、どっしり構えて少し先を見ていないといけないのだという教訓めいたことも感じてしまうのである。(西森路代)