スーパーGT第5戦富士ではレクサスにホンダ、ニッサンが反撃開始。レース中は随所で三つどもえのバトルが繰り広げられた いよいよ伝統の鈴鹿1000kmが、今季“ファイナル”を迎える。2018年から『鈴鹿10時間』として開催されるため、スーパーGTでの1000kmレースは今季がラストとなるのだ。
さて、『1000km』というと皆さんはどんな距離を想像するだろうか? この距離は、東京から大阪までの往復とほぼ同じ。自家用車なら新東名を使っても片道6時間=往復で12時間はかかるが、これをスーパーGT500クラスのマシンたちは6時間に満たない時間(昨年優勝タイムは5時間45分!)で、しかも真っ直ぐではないコースを走ってしまう。これだけでもすごさが伝わるだろうか。
そんな鈴鹿1000kmは、1年を通じてスーパーGT最長のレース距離で開催されるレース。ふだんは1回(500kmの場合2回)のピットストップで争われるが、鈴鹿1000kmでは2017年も最低5回のピットストップが義務づけられた。レース距離を考えても耐久レースの様相が濃いのだが、近年は短距離レースなみに毎スティントで速さが求められ、競争も激化。なんと2016年のチェッカー時のタイム差は1.242秒だった。
さらに、レース距離が長い分さまざまなドラマが起きる。レース展開を狂わせるセーフティカーや、夏ならではの通り雨等々……。今でもスーパーGTの歴史に残るドラマが数多く起きている。また、スーパーGTの規則ではレース距離が700km以上の場合は得点が多くなる。つまり、鈴鹿1000kmはシリーズを考えた上でも、落とせないレースなのだ。それがより一層の競争の激しさを生んでいる。
今季の鈴鹿1000kmは、ただでさえドラマチックなうえに、話題が豊富だ。特に、2009年のF1ワールドチャンピオンであるジェンソン・バトン(TEAM MUGEN)、そして日本GP鈴鹿F1で表彰台を獲得した実績、そして今年のル・24時間/WECなどでドラマを生んだ小林可夢偉(LEXUS TEAM WedsSport BANDOH)の第3ドライバーとしての参戦だ。
鈴鹿でのテストですでにGT500マシンをドライブしているふたりだが、チームによればレースでのドライブ時間もかなり多くなりそう。ふたりが競り合うシーンもひょっとするとあるかもしれない。もちろん、元F1ドライバーに負けじと、シリーズにレギュラーで参戦しているドライバーたちも奮闘することは間違いないだろう。
さて今季の1000kmは、いったいどんな展開になるだろうか? スーパーGTはまったく予測がつかないところが面白さではあるのだが、鈴鹿で6月に行われた2回のテストを振り返ってみると、シーズン序盤戦を圧倒したレクサスLC500勢は、スーパーGT特有のウエイトハンデが第6戦は最も多く加算されているはずで、レース距離の長い鈴鹿はそれが少しずつ響いてしまうかもしれない。
逆に注目したいのは、ホンダNSX-GT勢、そしてニッサンGT-R勢だ。テストではKEIHIN NSX-GTやMOTUL AUTECH GT-Rが速さをみせており、MOTUL GT-Rのロニー・クインタレッリも「すごくフィーリングがいい」と語っていた。
実際、7月22~23日に行われた第4戦SUGO、8月5~6日の第5戦富士でも、2車は速さを見せており、特にホンダ勢はSUGOで予選トップ3を独占。残念ながらSUGOではレース展開に恵まれなかったが、続く第5戦富士ではARTA NSX-GTがポール・トゥ・ウィンを達成している。
そのほかのホンダ勢はRAYBRIG NSX-GTの8位が最上位と苦戦したが逆に言えばウエイトハンデが軽い状態で鈴鹿に挑むことになる。また、ニッサン勢もMOTUL GT-Rが第5戦で2位表彰台を確保するなど、復活の兆しをみせた。
そして忘れてはならないのが、レースのもうひとつの主役であるスーパーGT300クラスだ。近年のGT300も、GT500同様毎スティントフルプッシュが必要で、毎年僅差の争いが展開される。昨年は優勝したSUBARU BRZ R&D SPORTと2位の31号車TOYOTA PRIUS apr GTの差はわずか8.395秒で、3位のGAINER TANAX GT-Rとはテール・トゥ・ノーズだった。
GT300クラスはFIA-GT3規定車両が多数で、国産車を中心としたJAF-GT/マザーシャシー車両がそれに対抗するが、この鈴鹿ではレース距離が長いため、ピットストップ時間が短いJAF勢が有利と言われている。GT3勢が上位にいくためにはピットストップ時間の分をコース上で稼がなければならないため、困難な戦いを強いられる。
とは言え、昨年3位のGAINER GT-RはGT3車両で、上位進出への可能性も充分高い。事前のテストでもGT3勢が好タイムを出しており、まったく予想がつかない戦いになるだろう。GT500とはまた違った戦いになるので、こちらもぜひご注目いただきたい。
鈴鹿1000kmは、夕暮れのなかライトを照らしたマシンたちがチェッカーを受け、花火が上がり、表彰台下を埋める多くのファンが、ウイナーを讃える姿が印象的で、ドライバーたちも「この光景を見たい」と語る。
最後の鈴鹿1000kmで、その光景を見るのは誰だろうか? そしてそのドラマを、ぜひ鈴鹿サーキットでご覧いただきたい。