2017年08月08日 09:53 弁護士ドットコム
離婚に向けての話し合いや別居をしている間の「不倫」に関して、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに質問がいくつか寄せられています。
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ある男性は、妻が家事をしなかったり、セックスレスだった結婚生活に見切りをつけるために別居をして、離婚に向けての話し合いをしていました。別居から半年の間に、別の女性と親しくなったそうです。「それでも不貞行為にあたるのか」と心配しています。
また、ある女性は夫から「離婚したい」といわれて別居することになりました。ところが、その後、夫が彼女をつくって交際していることを知りました。とてもショックを受けている様子で、慰謝料を求めたいと考えています。
たしかに、離婚に向けての話し合いをしているとはいえ、相手がすぐに離婚に応じない場合、不倫していたら道義的に問題がありそうです。一方で、もはや修復不可能なくらいの期間別居している場合は、新しいパートナーをつくっても許されそうな気もします。法的にはどんな問題があるのか。柳原桑子弁護士に聞きました。
「離婚が成立しておらず、法律上の婚姻関係が継続しているときは、基本的に『不貞行為』が成立するものと考えられます。『不貞行為』は、責任を負うべき離婚理由になり、損害賠償の対象となります。
ただし、離婚協議中や別居中であれば、その状況、別居期間および別居の理由などを総合的に考慮したうえで、夫婦の婚姻関係はすでに破綻していると認められる場合には、不貞行為として責任を負うことにはならないと考えられます。
配偶者の一方が別の異性と性的関係をもったとしても、すでに保護に値する夫婦間の貞操義務はなくなっており、そして配偶者の一方が別の異性と性的関係をもつことは、夫婦の婚姻関係を破綻させた事情ではないと評価できるためです」
「同居しているよりは、別居中のほうが破綻と判断されやすいとか、別居して間もないよりも、長期間別居を継続しているほうが破綻と判断されやすいといった傾向はあります。また、同居していても、別居期間が短くても、それまでの関係性や状況によっては、破綻していると判断される場合もあります。
逆に、別居期間が1年以上になっていても、この間、子育てだったり、家族生活の維持に相互に協力していたと認められると、破綻してないと判断されることもあります。なので、破綻と認められる基準のようなものを一概に示すことは難しいことです。
裁判上の離婚事由として、民法で規定されている『不貞行為』とは、性交渉(セックスや口淫など)を伴う交際をいいます。そこまで至らないのであれば、不貞行為とはいいませんが、裁判上の離婚事由としては、『その他婚姻を継続しがたい重大な事由』に該当する場合はあります。
ですから、『不貞行為』には該当しなくても、交際の程度によっては、法的にも『許されないこと』(違法性があること)に該当する可能性があるものもあります。
結局、違法性があるかどうかは、婚姻関係の破綻と評価される状況になってから、交際したかどうかという問題になるので、なかなか事前に『これなら大丈夫』と太鼓判を示すのは難しいです」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
柳原 桑子(やなぎはら・くわこ)弁護士
1998年弁護士登録 第二東京弁護士会所属
離婚事件・遺産相続事件などの家事事件、破産事件、不動産関係事件等を中心に、民事事件を扱っている。「離婚手続きがよくわかる本」、「よくわかる離婚相談」、「相続・贈与・遺言」監修(いずれも池田書店)。
事務所名:柳原法律事務所
事務所URL:http://www.yanagihara-law.com/