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自閉症で身体障がいを持つ娘のため バリアフリー・テーマパークを創設した父(米)

2017年08月07日 21:23  Techinsight Japan

Techinsight Japan

娘の名前が付けられたバリアフリーのテーマパーク(画像は『Morgan's Wonderland 2017年6月19日付Facebook「Happy Fathers Day to you and yours! Seven years ago Mr. Hartman opened Morgan's Wonderland in honor of his largest inspiration, his daughter Morgan.」』のスクリーンショット)
障がいを持つ娘と遊びたがらない他の子供たちを見た父は、22年間携わってきた事業を売却し、どんな障がい者でも訪れることが可能なテーマパークの設営に挑んだ。2010年に米テキサス州サンアントニオにオープンした「モーガンズ・ワンダーランド(Morgan’s Wonderland)」は開園以来、来場者が100万人を超えたという。『BBC News』『London Evening Standard』など複数メディアが伝えた。

テキサス州に暮らすゴードン・ハートマンさんは、当時12歳だった自閉症で認知力と身体に障がいを持つ娘モーガンさん(現在23歳)をプールへ連れて行った。モーガンさんが他の子供たちと遊びたがって近寄っても無視され、子供たちは離れて行ってしまう。ゴードンさんは「きっと障がいを持つ娘とどのように接していいのかわからなかったのでしょう」と明かすが、その様子を見て心が折れたという。

妻のマギーさんと娘が気兼ねなく遊べる場所に連れて行ってあげたいと探してみたものの、障がいを抱える子供たちに適した遊び場など存在しないことを実感した。

そこでゴードンさんは「特別なサポートを必要とする子供たちがそうではない子とも一緒に遊べるテーマパークを作ろう」と決心し、2005年9月にこれまで自分の仕事だった住宅建設事業部を売却。障がいを持つ人々の手助けをする非営利慈善団体「ゴードン・ハートマン・ファミリー基金(The Gordon Hartman Family Foundation)」を立ち上げた。

そして2007年に同州サンアントニオに25エーカー(東京ドーム約2個分)にもなる「モーガンズ・ワンダーランド」の建設を始め、2010年に障がい者のための初のバリアフリー・テーマパークが完成した。メリーゴーラウンドや観覧車、ミニチュアトレインなどのアトラクションを備えたテーマパークには総工費3,400万ドル(約38億円)かかったが、ゴードンさんは「子供たちの笑顔を見ているとそれだけの価値はありますよ」と言う。

認知理解度が5歳レベルという自閉症のモーガンさんは当初、テーマパークに慣れるのに時間がかかったそうだ。しかし、「今ではこのテーマパークをとても気に入ってくれて、お気に入りのアトラクションは砂の広場とブランコだと言っています。娘はこのテーマパークに自分の名前が付いていることを知っていますが、ここがどれだけ多くの人の心を動かしインスパイアしているかは理解できていないと思います。来場者たちはモーガンに話しかけてくれるので、娘は以前よりもよく話すようになりました。今は何度か手術を受けて、身体的な障がいも克服しつつあります。私たちは娘がここまで成長してくれたことを嬉しく思っています」と話している。

ゴードンさんは今年6月、1,700万ドル(約19億円)をかけて「モーガンズ・ワンダーランド」の隣にウォーターパーク「モーガンズ・インスピレーション・アイランド(Morgan’s Inspiration Island)」をオープンさせた。夏になると車椅子に乗った子供たちにとってテーマパークは暑すぎて、来場が減ることを考慮してのことだった。

園内の施設の一部では、筋肉や冷えなどの問題を抱える子供たちのために温水を使用しており、電気ではなく防水加工された圧縮空気で動く車椅子が提供される。テーマパーク、ウォーターパークともに医師やセラピストが常駐しており、特別なサポートを必要とする子供たちでも快適な環境で心置きなく遊べることができるのだ。

高額な費用をかけて築き上げたこれらの施設ついて、ゴードンさんはその心境をこのように語っている。

「障がいを持つ子供たちが、そうでない子供たちと一緒になって楽しく遊べる場所を造ることは私たち夫婦が最も望んでいたことであり、ついにゴールに達したという気分です。人は健常者とそうでない人はやはり違うと言いますが、ここに来ると皆同じということに気付きます。つい先日も、車椅子の少女が健常者の女の子のところへ寄って行き、2人は一緒に遊んでいました。その姿を見てとても嬉しくなりました。ウォーターパークを開園してからは、障がい者の息子を持つ父親から『息子は今まで水で遊んだことがなかったんです』と涙を流して喜ばれたこともありました。」

今や「モーガンズ・ワンダーランド」には、アメリカ全土だけでなく世界各地からの来場者が年間およそ10万人にも上る。障がい者は入場無料となっており、もちろん健常者も入園可能だ。ゴードンさんによると、スタッフの3分の1は障がい者で来場者の4分の3は健常者とのことだ。

また、「ウチの地域にも是非、建設してほしい」といったリクエストがメールや手紙でゴードンさんのもとに多数寄せられるという。しかし今のところその予定はなく、テーマパークがあるサンアントニオに10代の障がい者たちを対象にした文教施設の建設計画を立てているそうだ。

しかし多くの入場者で賑わうものの施設を運営し続けることは厳しく、オープン以来毎年100万ドル(約1.1億円)以上の赤字が出ているのが現状だ。子供たちの夢を叶え続けるために、なんとかして負債を無くしていきたいとゴードンさんは話している。

このニュースを知った人々からは「なんて素晴らしいお父さんなんだ」「こういうテーマパークが世界各地にあるといいのに」「娘への深い愛があるからこそだね」「金銭的に余裕がないとできないことだけど、ゴードンさんは人としても素晴らしい」といった声があがっている。

画像は『Morgan's Wonderland 2017年6月19日付Facebook「Happy Fathers Day to you and yours! Seven years ago Mr. Hartman opened Morgan's Wonderland in honor of his largest inspiration, his daughter Morgan.」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)