FIA-F4選手権シリーズの第5大会が、8月5~6日に富士スピードウェイで開催され、第9戦は角田裕毅(SRS/コチラレーシング)が、第10戦は大湯都史樹(HFDP/SRS/コチラレーシング)が制して、ともに今季2勝目をマーク。2戦連続で2位を獲得した笹原右京(HFDP/SRS/コチラレーシング)が、引き続きランキングのトップをキープしている。
このレースウイークの富士スピードウェイは、絶えず上空に厚い雲を浮かべており、その切れ間からは強い日差しが注がれていたものの、いつ雨が降ってきてもおかしくないような状況ではあった。
しかし幸いにして、終始ドライコンディションは保たれ、天候の心配は杞憂だったようだ。木曜日に行われた専有走行では宮田莉朋(FTRSスカラシップF4)が好調で、HFDP勢を久々に封じ込めたが、金曜日の専有走行では大湯都史樹(HFDP/SRS/コチラレーシング)が、逆に宮田を封じこんでいた。
そんな状況は土曜日に行われた予選でも保たれ、大湯はベストタイム、セカンドベストともにトップでWポールを獲得する。
「しっかり自分の力を出し切れたという感じです。チームメイトも宮田選手も速いですから、決勝は接戦になると思いますが、前回の富士では着いていくのがやっとだったのに今回は勝負できそうで、自分だけじゃないチーム全体の確実な進化を感じています」と大湯。
土曜日に行われる第9戦は、これに角田裕毅(SRS/コチラレーシング)、笹原右京(HFDP/SRS/コチラレーシング)、そして宮田と続いたものの、宮田には度重なった走路外走行のペナルティとして3グリッド降格が命じられてしまう。
さらに決勝を前にして、衝撃的な出来事が。マシントラブルによって、大湯がリタイアとなってしまったのだ。ポールポジションのグリッドがぽっかり空いた様子が、なんとも寂しげで……。
しかし、これにより一気に有利になったのが角田、そして笹原だった。ふたりとも好スタートを切って後続を寄せつけずに1コーナーへ。しかし、レース序盤は平木湧也(DENDOルボーセF4 FTRS)、川合孝汰(DENSOルボーセF4)、河野駿佑(HubAuto F110)が食らいついて離れず。さらに宮田を加え、6台でトップグループが形成されるようになる。
このなかで最初に動いたのが河野だった。4周目の1コーナーで川合をパス。その勢いで平木にも迫る間に、徐々に角田と笹原は逃げ始めていた。河野が続いて平木をかわしたのは、6周目のダンロップコーナー。そして、ようやくエンジンに火が入った感のある宮田も、その1周で川合を、8周目には平木をかわしてくる。
9周目には川合も抜いて、宮田は3番手に浮上。だが、その時すでにトップを争う角田と笹原は4秒先を行っており、引き続いた河野のチャージこそなんとかしのいだものの、もはやトップをうかがえるような状況ではなくなっていた。
「スタートがうまくいって、その後(笹原が)なかなか離れなかったんですが、序盤は特にプレッシャーを感じることなく走っていました」と角田。しかし、笹原も抜き切れないまでも、冷静にチャンスを待ち続けていた。
「終盤はミスも多くなって、最後はギリギリでした」という角田は最終ラップのヘアピン立ち上がりで姿勢を乱し、これを笹原が見逃さなかった。まずダンロップコーナーで仕掛け、ここでの逆転は果たせぬと判断した後は、最終コーナーにターゲットを。そしてアウトからふたたび仕掛けたものの、その直後にリヤがずるりと……。
これで勝負は決し、角田が第2戦以来となる2勝目をマーク。「着いていけたのに、スリップストリームで抜けなかったのは、僕も不思議なところで」と語る笹原が2位で、3位は宮田。そして、表彰台にはあと一歩届かなかったものの、河野が4位で久々の上位入賞を果たすこととなった。5位は平木が獲得した。
日曜日の第10戦にはマシンのダメージも癒えた、大湯がグリッドに並ぶことに。続いてグリッドに並んだのは笹原、宮田、角田、平木、そして河野と、第9戦でも存在感をアピールしたドライバーたちだった。引き続き大激戦が必至とされる状況のなかで、早々にトップグループを築くことになったのは大湯と笹原。1周目を終えた段階から一騎討ちに持ち込んでいた。その後方で大きく順位を上げていたのが河野、宮田に続く4番手へ。
「第9戦を走れなかった分、タイヤが残っていたので序盤に関しては、確実にマージンがありました。でも……」と大湯は、なかなか笹原に対して絶対的な差をつけられず。むしろ、終盤には笹原の方がラップタイムで上回るようになり、よりバトルが過熱の方向へ。「ミスなく走り続けていたら、最後に差が詰まってきたんですが、やはり僕のタイヤも厳しくなってセクター3を滑らせずに走るのが精いっぱいで。スリップストリームには入れましたが、抜くまでには至りませんでした」と笹原。
コンマ4秒差ながらも、辛くも逃げ切りに成功した大湯は、第6戦以来となる今季2勝目をマーク。
「今まででいちばん落ち着いて走れました。ちょっと落ち着きすぎていたかも(苦笑)。そのぐらい昨日から、今日のレースをすごくイメージして実際そのとおりのレースができました。ぶっちぎりたかったけど、そうはいかなかったのは、笹原選手もやっぱり上手いから。今後はチャンピオンシップ以上に、勝ちにこだわったレースをしたいです」と大湯。
3位でフィニッシュしたのは宮田だった。トップを争うふたりに抵抗を許されなかったのは、序盤からエンジンにトラブルを抱えていたため。「突然エンジンが止まったり、シフトダウン時のスロットルコントロールができなくなったりして……。満足のいく走りができなかったのは残念ですが、それでも3番手をキープして走れたのは良かったです」と悔しそうに語る。
4位は角田で、5位は河野。これは河野の逆襲の兆しということなのだろうか。