2017年のスーパーGTも後半戦へ突入。GT300は勢力図が見えはじめたか GT500優勝のARTA NSX-GT、そしてGT300優勝のARTA BMW M6 GT3による、まるでCMのようなウイニングランが展開されたスーパーGT第5戦富士。今回、もともとコース特性として合っていたBMW M6 GT3とブリヂストンタイヤによって、まさにARTA BMW M6 GT3はパーフェクトなレースを戦ったと言える。
「最高です! 今年はARTAが20周年ということで鈴木亜久里さんからは『タイトルを獲れ!』とハッパをかけられていますが、GT500とダブルでポール・トゥ・ウインなら、それに匹敵するんじゃないか」と高木真一は語るが、実際ランキングでもARTA BMW M6 GT3は今回の勝利でランキング3位に浮上してきた。
そんな歓喜で幕を閉じたスーパーGT第5戦富士だが、実はもうシーズンも後半戦に突入している。そこで、今回のレースを終えてランキングがどうなったか、そして今季はどんな流れなのかをチェックしておこう。
■メルセデス勢のなかでも速さをみせるグッドスマイル
第5戦終了時点で、ランキング首位はグッドスマイル 初音ミク AMGの谷口信輝/片岡龍也となった。今回、ARTA BMW M6 GT3ほどの速さはなかったにしろ、抜群のペースでレースを戦い抜き、素早いピット作業とともに2位でフィニッシュ。15点を積み上げ、50点とした。チームは先週、ブランパンGTシリーズのスパ24時間を戦い、メルセデスベンツAMG GT3を2台壊してしまったが、「今回は(修理費用)ゼロ円! しかも2位!」とスパの借りを返したようだった。
今回、グッドスマイル 初音ミク AMGは片岡がスタートしたが、ソフトよりのタイヤで27周まで引っ張り谷口に交代。タイヤ無交換作戦を採ったJAF-GT勢を抜き、ARTA BMWも見える位置にはつけたが、最後は2位を確実に獲る方向にシフトしている。70kgでのこの成績は、周囲にとっては脅威でしかない。
「いちばんはヨコハマタイヤさんが、僕たちのクルマにマッチするクルマを作ってくれているのが大きいよね。今年はメルセデスのセットアップも進んでいる」というのは谷口だ。
また、片岡も「今回は平和な週末でしたね(笑)。選手権を考えてもちょっと楽にはなりますが、鈴鹿では僕たちが得点できない可能性もあるので、そこでライバルが来てしまう可能性がある」という。
「鈴鹿ではダメージを少なくすれば残り2戦が楽になりますが、追いつかれるとそこからやり直し。まあ滅多に獲れないステータスの『100kgゴールドステッカー』を貼りますから(笑)。僕は以前、レクサスISでそれを貼ったこともありますが、そのときはポイント獲ってますからね」
今季、メルセデス勢が好調なのはLEON CVSTOS AMG、そして第4戦優勝のGAINER TANAX AMG GT3を見ても分かるが、LEONはこれまで着実にポイントフィニッシュしていたものの、今回はスタート直後の接触~ペナルティで後退し無得点。また、GAINER TANAX AMG GT3も公式練習からヒットされてしまったりと波に乗れず無得点となってしまった。
一方、同じく無得点となってしまったのは、第3戦のウイナーで、第4戦でも3位に入ったVivaC 86 MCの松井孝允/山下健太だ。ふたりは現在41点を重ねているが、今回は無得点となった(山下は第2戦でGT500をドライブしたが、無得点だったため同じ点数)。
「残念ですけど、去年も夏の富士は無得点でしたから。このチームとドライバーなら、巻き返せると思うんです。鈴鹿とタイは得意なので」というのは松井。ちなみに、トラブルは電気系で、土屋武士監督によれば「ほぼ起きないタイミングで、パーツがかんでしまったのが原因。でも20年以上レースをしていても見たことがないトラブルなので、行いが悪かったのかな(苦笑)」という。
■得意なところでしっかりとポイントを獲ることが王座への道
さて、結果グッドスマイル 初音ミク AMGがランキング首位、そしてVivaC 86 MCがランキング2位となっているのだが、これについては面白い分析がある。現在グッドスマイル 初音ミク AMGは、開幕戦の岡山での勝利、そして第4戦SUGOでの4位、そして今回の2位と、GT3勢のなかで得意なコースではきっちりと獲り、JAF-GT勢が得意なところでも少しずつポイントを重ねている。
また、JAF-GT勢が得意なコースで確実にポイントを重ねているのはVivaC 86 MCだ。特にオートポリスでの優勝、ウエイトを積みながらのSUGOでの3位が大きい。本来、GT3が得意なコース、JAF-GT勢得意なコースで他のチームが得点を重ねていれば、必然的に2台の得点は少なくなる。だがそこで2台が高いチーム力で獲っているからこそ、この2台のランキング上位が生まれている……というのだ。
もちろん今回のようなBMW M6 GT3勢の躍進、リストリクター径アップ+自信をつけつつある若き久保凛太郎で速さを増すTOYOTA PRIUS apr GTなど、中盤戦で力を発揮するチームが増えれば、2台の得点は減っていく。だが、そのなかでスーパーGT王座への王道である“取りこぼさない”をできるのが、GT3勢(なかでも今季好調のメルセデス勢)ではグッドスマイル、JAF勢ではVivaC 86 MCという分析なのだ。
ちなみに、この2チームの強みとして、今季決勝日朝のフリー走行がなくなったという指摘もある。GT300チームのなかには、ふだんチーム全員が集まれず、サーキットでぶっつけ本番の作業になることもある。そのなかでいかに強いチームを作っていくのかが、現代のGT300では重要……ということなのだ。
もちろん、今後もラウンドによって予選等で速さをみせてくるチームは多いだろう。そんな“第3勢力”が2チームのポイントを奪っていけば、より今季のGT300のタイトル争いは混迷になるかもしれないし、それでも2チームがなおも強さをみせるかもしれない。終盤戦、ぜひ注目いただきたいポイントだ。