7月25日、メルセデスベンツが2018年シーズン限りでDTMドイツツーリングカー選手権からの撤退を発表したが、DTMを運営するITR e.Vとともに共通のクラス1規定を導入してレースの共同開催を進めてきたスーパーGTに、その影響はあるのだろうか。スーパーGT第5戦富士の定例記者会見の場で、GTアソシエイションの坂東正明代表がこの件について語った。
7月末の深夜に電話が鳴り、メルセデスのDTM活動終了の一報を知ったという坂東代表。その後、ITRの代表で元F1ドライバーでもあるゲルハルト・ベルガーとテレビ電話で会談を行ったことを明らかにした。
「この件でいちばん驚いているのはITR側で、アウディもBMWもビックリしているという状況。ベルガーとはテレビ会見で今後、どうするかについて話し合いました。基本的に、2018年はこれまでのレギュレーションがあるので、今までと同じ形で運営していくことには変わりはない。その後、2019年以降については、今月いっぱいまででアウディ、BMW、ITRが話し合って動向を決めていく形になっている」と坂東代表。
「我々としては、これまで同じ道で約束ごとを守りながら、2リッターターボエンジンで共通化する、ダウンフォースを削減する、コストを削減するという方向で進めている。向こうにもいろいろな問題があると思うが、我々としては今の状況下で粛々と今後に向けて進んでいく」と、GTAとしては変わらぬ姿勢を明言した。
「中長期でみると、EVの導入の可能性などは我々も考えていかなければならないが、スーパーGTにおいては、日本のモータースポーツでここまで築き上げたものが、会社の方針、方向性で辞めるということはあり得ない話で、きちんと筋を通してもらうことになる。いちマニュファクチャラーの都合で止めるということは大きな問題であって、そういう形で日本のマニュファクチャラーとはお付き合いをさせてもらっています」
メルセデスのDTM撤退の背景には、フォルクスワーゲンの燃費問題によるドイツ国内の世論や、7月に明らかになったメルセデスの欧州発売のディーゼルエンジン車のリコール問題、そしてEV技術への大きな転換などのタイミングが重なったものと考えられ、メルセデスはF1でも先日参戦継続が発表されていたが、それまでは撤退の噂も流れていた。
スーパーGTファンとしては、同じく世界最高レベルのハコ車レースであるDTMからメルセデスが去ることは悲しいニュースだ。それでもなお、アウディRS5、BMW M4とレクサスLC500、ニッサンGT-R、ホンダNSX-GTが戦うレースは、日本だけでなく世界中のファンにとっても大きな夢であるはず。
メルセデスの撤退を機に速度を落とすのではなく、むしろこの出来事をきっかけに、いち早い交流戦の実現に向けて日本側とドイツ側、双方のアクセルを加速してプロジェクトが前に進むことを願いたいが、そのためにも、まずは今月いっぱいのドイツ側の判断が今後に向けての大きな一歩になる。