全国優良石材店の会は8月4日、「『お墓』および『お墓参り』が子どもの情操教育に与える影響」の結果を発表した。
近年、遺骨をお墓に納めないスタイルを選択するケースが増えている。同団体は、伝統に縛られない自由な選択をよしとする風潮があるといい、
「『お墓参り』などの慣習が受け継がれなくなることにより、日本ならではの精神文化が希薄化し、道徳観・倫理観が損なわれるのではないかと懸念されています」
と説明。「お墓参り」の頻度と成長後の情操や人とのかかわり方の関連性を探り、結果を開示することで葬送形態の選択の一助としてもらうことを目的として実施した。
調査は5月2~9日、15~29歳の男女1000人を対象にインターネットで行った。
伊田准教授「習慣的なお墓参りでポジティブな感情が定着」
初めてお墓参りに行った時期を確認すると、最も多かったのは「3歳以下の時」で50.1%。次いで「幼稚園生の時」(29.4%)、「小学校低学年」(18.4%)となり、10歳までに1度はお墓参りを経験しているようだ。一方、小学校高学年以降を回答した人は全体の1.8%に留まった。
初めてお墓参りに行った年齢別に、「他の人の命も大切だと思う」「自然の美しさに感動することがある」などの生命尊重・美的感情を測る項目について聞いた。すると「3歳以下」で「生命尊重・美的感情が高い」という結果になった人は67.9%。「幼稚園生」(59.1%)、「小学校低学年」(67.0%)と比較して若干ではあるが高い。これについて静岡大学教職大学院の伊田勝憲准教授は、
「乳幼児期にお墓参りを経験していることが、子どもにとって自分自身が大切にされることと、お墓参りを通して先祖が大事にされていることが実体験と重なり、時間的に限りのある『命』を持つものすべてに関心が高まるからではないかと思います」
と分析している。また「将来の夢や目標に向かって努力することは惜しまない」という自尊心・肯定感の高さを測る質問の結果を、小学校低学年頃の墓参りの頻度別に見ると「全くあてはまらない」と答えたのは「年に1回程度」で4.1%、「月2~3回程度」で2.3%だったが、「月1以上」では0.0%だった。これについて伊田准教授は
「最初は『非日常』に感じられるお墓参りが習慣化されることで、徐々に日常として定着し、お墓参りの瞬間に一時期抱いていた『感謝』や『努力』などのポジティブな感情が、やがて自分らしい感情や思いとして日々の生活を方向付けるようになると考えることができます」
と説明している。
お墓参りをすると先祖と自分の繋がりを実感?
また、小学校低学年頃までのお墓参りの頻度と既婚率には関係を見ると、最も既婚率が高いのは「月に1度以上」の人で34.6%。以降「年に2~3回」(22.7%)、「年1回程度」(20.4%)と続き、「数年に1回程度/行ったことがない」は14.3%となっている。子どもがいる既婚者の割合を見ると、「月1以上」が21.2%ともっとも多かった。
伊田准教授は「複数の要因が背景で関連していると思うが」と述べた上で、
「お墓参りにより先祖と自分のつながりを実感するとともに、その延長線上である自分と子孫のつながりを意識し、次の世代へ育てることへの関心が高まったのでは」
と解説している。
ただ、現在お墓参りに行く頻度は「年に1回程度」が38.7%で最多。「1年以上言っていない」(15.5%)、「行かない」(8.2%)という人もおり、「月に1回程度行く」は2.7%に留まっている。