ThreeBond Racing 2017全日本F3選手権 第7大会 ツインリンクもてぎ レースレポート 2017年8月4日
7月29日~30日、全日本F3選手権シリーズ第7大会(第14戦、第15戦、第16戦)が、栃木県ツインリンクもてぎにて、土曜日に第14戦、日曜日に第15戦と第16戦が開かれる3レース制で開催された。1大会3レース制の今回は、公式予選で記録したベストラップタイムにより第14戦、セカンドベストタイムにより第15戦、第14戦決勝レースの順位により第16戦のスターティンググリッドを決定するという規則で公式予選が行われた。
公式予選
土曜日は朝から曇天となったが、気温は28度と蒸し暑い。公式予選は午前10時10分から始まった。1大会3レース制の今回、使用できるタイヤは予選決勝を通して3セット。ツインリンクもてぎはオーバーテイクが難しいコースで、スターティンググリッドはいつも以上に重要な意味を持つため、チームは予選に2セットのニュータイヤを配分、2回のタイムアタックを行い、1セットを決勝レースのために温存する作戦をとった。
1セット目のニュータイヤをはいたアレックス・パロウはセッション開始直後からウォームアップしてタイムアタックを行い、1分45秒017を記録したが、その後#1坪井翔選手、#36宮田莉朋選手がこのタイムを上回り3番手となる。パロウはタイムアタックを続けたが順位は変わらず、その後#23高星明誠選手がこのタイムを上回ったため4番手となった。
ここでパロウは1セット目のタイムアタックを終えてピットへ帰還。この時点で順位は4番手。チームはマシンに2セット目のニュータイヤを装着したが、その他のセッティングは変更せず、伊与木が「ウォームアップをもう1周多く」とだけ指示を与えるとコースインのタイミングを待ち、30分のセッションが残り10分となったところでコースへ送り出した。
パロウはアタックするポジションを選びながらタイヤをウォームアップ、4周目に自己ベストの1分44秒600を記録、トップに立った。しかし直後に坪井選手がファステストタイムを更新しパロウは2番手となった。アタックを続け、1分44秒632を記録したがセッション終了直前に高星選手がタイムを上回ったため、パロウは3番手でセッションを終えた。
この結果、ベストタイムで決まる第14戦のスターティンググリッドは3番手と決まったが、セカンドベストタイムで決まる第15戦のスターティンググリッドは、最後に記録した1分44秒632が採用されて2番手となった。
第14戦 決勝
土曜日午後3時50分に第14戦の決勝レースがスタートした。コンディションは曇天でドライコンディションのまま。スタート合図とともにパロウは3番手のスターティンググリッドでクラッチをミートした。ところがそこでエンジンがストール、グリッド上に立ち往生してしまった。
再スタートを試みるが、そこへ後方から加速してきた選手が避けきれずに追突、右リヤサスペンションが壊れてしまった。その後再スタートしたが走行続行は不可能な状況で、ピットロード出口付近までスロー走行し、コースサイドにマシンを止めレースを終えた。
レース後、チームは破損箇所を修復するとともに、エンジンストールの原因を探るためにクラッチ周りをチェック、パロウともクラッチの使い方を改めて確認しあい、今後のレースに備えた。
一方今大会の規則により、第14戦スタート直後にリタイアを喫したパロウは、第16戦でスターティンググリッド最後尾の19番手からスタートすることになった。
第15戦 決勝
第15戦決勝レースは日曜日午前10時25分から始まった。土曜日の段階で日曜日は雨模様となることが予報されていたが、雨は夜半には止み、レースが始まる頃にはコース上はほとんどドライ。チームは公式予選で使った1セット目のタイヤをマシンに装着、パロウをコースへ送り出した。
2番手グリッドからスタートしたパロウは、スタート合図の瞬間、ストールさせないよう慎重にクラッチミートを行う。その結果わずかに加速が鈍り、後方の高星選手に並ばれ、第1コーナーで先行を許した。背後には#2大津弘樹選手も迫ったが、3番手のポジションを守りレースを始めた。
実は前日、マシン修復の過程でチームはギヤレシオに変更を加えていたが、必ずしもドライバーの感覚には噛み合わず、グリップ感不足に悩み、自分のドライビングができずにいた。
「パロウは夏場、ミュー(摩擦係数)の高い日本のサーキットを日本のタイヤで走ることに慣れていません。車のバランスは悪くないのにヨーロッパ製タイヤとの特性の違いにより、グリップ感不足を感じ取ってしまうんです。加えて、もてぎを初めて走ると言うことも影響していると思います」と伊与木は状況を説明する。
その結果、パロウはトップを走る坪井選手とほぼ同じペースで走りながら追いつくことはできないまま前を走る高星選手、後を走る大津選手と間隔を開けて単独走行となり、そのまま14周を走りきって3位に入賞を果たし表彰台に上がった。
第16戦 決勝
第16戦の決勝は20周の長丁場となるため、チームはニュータイヤ1セットを温存していた。ただしスタート位置は最後尾である。伊与木は「nothing to lose」とパロウに伝えグリッドへ送り出した。
チームはグリッド上で前後ウイングを1段階寝かせ、最高速重視のセッティングに切り替えた。「Nクラスのマシンをたくさん抜かなければいけないし、もたついていたら前のクルマが逃げてしまうので決断した。
でもその分コーナリングは厳しくなるし、レース後半はリヤタイヤがルーズになるリスクもあった」と伊与木はその狙いを語る。
日曜日午後3時55分、第16戦決勝レースがスタートした。19番手グリッドからパロウは猛然とダッシュ。前方に並んだNクラスのマシンを7台抜き、1周目12番手、2周目9番手、3周目8番手と順位を上げた。しかしここからは同クラスが相手となる。
パロウは8周目にようやく1台を抜いて7番手に進出し、前を走る#7阪口晴南選手との間隔は2.4秒。阪口選手をパスしなければ選手権ポイントを獲得することはできない。パロウは周回毎にその間隔を縮め、12周目にはコンマ5秒まで接近した。
しかし、ただでさえ前のマシンに接近すればダウンフォースが抜けて操縦安定性が低下するうえに、最高速を重視してダウンフォースを減らした影響でリヤタイヤは消耗が進みバランスも崩れ始めていた。最終ラップまで阪口選手を攻めたが届かず、結局7位で20周のレースをフィニッシュした。
この週末、パロウは第16戦で3位入賞ポイントの5点を獲得し通算ポイントを87点としたがランキングではトップの高星選手と44点差、2番手の坪井選手と13点差の3番手へ後退した。またThreeBond Racing with DRAGO CORSEはチームポイントランキングで2番手と26点差の3番手を守った。
ドライバーコメント
アレックス・パロウ
ツインリンクもてぎは初めて走るサーキットでした。走り出しから、タイムはそれなりに出るのにどこかグリップ感が得られず、なかなかマシンをベストなバランスに持って行けませんでした。
予選では途中セッティングの変更はしなかったのですが、2セット目でタイムが出ました。でも第14戦の決勝レースではエンジンをストールさせてしまいました。完全に自分のミスです。レースを台無しにしてしまい、皆さんに大変な迷惑をかけて自分にがっかりしました。
第15戦では絶対にストールさせないように慎重にスタートしました。その結果ひとつ順位を落としてしまいました。その後のレースではマシンのバランスがあまり良くなくて、あれ以上自分ができることはありませんでした。第16戦では、最後リヤタイヤがルーズになってしまい、どうしても前のクルマをオーバーテイクできずにポイントが取れなかったのが残念です。