1997年に開業したツインリンクもてぎが、今年2017年、20周年の節目を迎えている。それぞれが完全に独立したロードコースとオーバルコースを持つという、世界的にも稀有なレース場として生まれて早20年。その歴史を彩ってきたドライバーやチーム首脳たちに、もてぎにまつわるエピソードや想いを聞く。第13回目は長きにわたってホンダのメインドライバーとして活躍する道上龍だ。
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道上龍とツインリンクもてぎの関係は、開業当時から深いものだった。
「1997年のツインリンクもてぎのオープニングのときにオーバルを走らせてもらった記憶があります。その後、レースでの初勝利はGTで無限×童夢で1998年にポールをとって優勝したとき。2007年のTAKATA童夢の時代もGTで優勝しています。あと、フォーミュラニッポンでは1999年に、当時遅いと言われていたローラで表彰台に上がりました。そう意味では思い出が深いコースのひとつですね。ホンダのテストでもよく使われるし、何かあるとテストはもてぎが多いので、1年を通して一番多く通っているサーキットだと思います」
GT、そしてフォーミュラともに、道上とツインリンクもてぎの相性はかなりよかったようだ。
「ツインリンクもてぎではそんなにリタイアもなかったし、本当に悪い思い出はないですね」
近年で言えば、昨年、道上はホンダのワークスチームのエースとして、世界選手権のWTCC日本ラウンドにスポット参戦を果たした。だが、道上が走り慣れたホームコースであるツインリンクもてぎのWTCCで感じたのは、WTCCドライバーの世界レベルの高さだった。
「ツインリンクもてぎでの開催でしたので、もっと行けるのではという自分への期待があったんですけど、ふたを開けてみると世界のツーリングカー使いはやはり速かった。彼らも初めてというわけではなく、1年ぶりにもてぎを走るというだけの話なので、自分と条件は一緒でした。自分が長年走ってきたサーキットだけに、もっと行けると思ったんだけども、そんなに甘くはなかったです」
GTマシン、フォーミュラ、そしてさまざまなハコ車でツインリンクもてぎを走行してきた道上。その中でも、道上にとって一番、ツインリンクもてぎと相性がよかったのはどのマシンになるのだろう。
「スーパーGTの前(2004年以前)のNSX-GTですね。ツインリンクもてぎはコーナリングスピードが高くストップ&ゴーのサーキットで、MRの特性を活かせるコースなので、とても相性はよかったですね」
道上にとっては、ツインリンクもてぎでのレースにはまた別の魅力があるという。
「抜きどころが少ないといわれているサーキットではありますが、WTCCではあまり関係なかったですね。みんなどこからでも抜いてきます。レースのカテゴリによっては、合う合わないがあるとは思いますけど、ツインリンクもてぎのように抜くのが難しいコースで抜けたときの喜びはすごく大きいです」
今年で開業20周年を迎えるツインリンクもてぎ。改めて、道上にとってどんな存在なのか。
「ツインリンクもてぎが開業した当時から知っているので、とても慣れ親しんだコースです。遊べる施設もたくさんあるし、キャンプもできる。自分の子供たちも僕のレースの応援に来た時は遊園地で遊んだり、アトラクションでバイクに乗っていたりしています。僕がイタリア行っている時にも、子どもたちはトライアルを見にツインリンクもてぎに来ていたくらい、僕と家族にとって身近なサーキットです」
関係が長く深いだけに、これからのツインリンクもてぎへの道上の期待も大きい。
「佐藤琢磨選手がインディ500で勝利して、オーバルレースが注目されている今、ツインリンクもてぎのオーバルもこのまま残してほしいと思います。今は震災の影響で使用できないですが、オーバルを何かうまく使ってもらったりして、よりいろいろなお客さんが来て遊べるような環境であってほしいですね。ツインリンクもてぎにしかできないことをしてほしいなと思います。僕自身としては、まずはWTCCのツインリンクもてぎ戦で表彰台に立てるように頑張ります」
道上とツインリンクもてぎの関係は、これからもまだまだ続いていく。