2017年08月04日 10:33 弁護士ドットコム
薬の効果についてのアンケートに答えたところ、実名を伏せる約束だったのに、実名とともにアンケートの内容が公開されてしまったーー。こんな相談が弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。
【関連記事:子連れ夫婦、2人分の料理を注文して「小学生の子ども」とシェア…そんなのアリ?】
投稿者は、薬局でダイエットの相談をしながら、勧められた漢方薬を購入していた。半年ほど続けて効果が出たところで、実名を公開しない約束でアンケートに協力した。ところが、薬局のホームページで、実名とともにアンケートの内容が公開されてしまったという。
実名に加えて住まいの所在市や、SNSのハンドルネームまで公開されてしまったというが、このような場合、慰謝料や損害賠償の請求をすることはできるのだろうか。影島広泰弁護士に聞いた。
今回のようなケースで、慰謝料請求はできるのか。
「ダイエットの相談をした事実、またそれにより効果が出たという事実は、他人に知られたくない個人のプライバシーに属する事実です。
したがって、実名を公表しないことを約束してそのような情報を集めておきながら、実名やSNSのIDを含めて公開したことは、その方のプライバシー権を違法に侵害していることになります。したがって、慰謝料や損害賠償請求が可能であると考えられます」
情報漏えいによる慰謝料の相場はいくらくらいなのだろうか。
「これまでの裁判例を見ると、氏名・住所等の一般的な個人情報だけが漏えいしたケースでは、5000円から1万円程度の慰謝料と、5000円の弁護士費用の賠償が認められているのが通常です。
これに対し、エステティックサロンの会社から、氏名、職業、年齢、性別等ばかりでなく、エステのコース名というセンシティブな情報も漏えいした事件では、1人あたり3万円の慰謝料請求と5000円の弁護士費用の賠償を認められています」
今回のケースでは、実名を公開しない約束だったが、公開されてしまった。
「本件は、エステティックサロンの事件と同じく内容がセンシティブである上、エステティックサロンの事件では漏えいの原因はサーバの設定ミスという過失によるものだったのに対し、本件は実名を公開しない約束でアンケートをとっておきながら後に実名を公開していますので、悪質性が高いといえます。したがって、慰謝料はより高額になるだろうと予想されます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
影島 広泰(かげしま・ひろやす)弁護士
03年弁護士登録。ITシステム・ソフトウェアの開発・運用に関する案件、情報管理や利活用、ネット上の紛争案件等に従事。日本経済新聞の2016年「企業法務・弁護士調査」情報管理部門の「企業が選ぶ弁護士ランキング」2位。
事務所名:牛島総合法律事務所
事務所URL:http://www.ushijima-law.gr.jp/