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『バイプレイヤーズ』の系譜を継ぐ『居酒屋ふじ』 役者が“本人役”を演じる理由とは

2017年08月04日 10:03  リアルサウンド

リアルサウンド

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 遠藤憲一、大杉漣、田口トモロヲ、寺島進、松重豊、光石研という6人の名脇役が本人役で出演し、大きな話題を集めたテレビ東京系の深夜ドラマ『バイプレイヤーズ』。普段は知ることができない俳優たちの素顔が垣間見られるのと同時に、映画界&ドラマ界の“あるある”もしくは、まことしやかに囁かれている業界話が盛り込まれており、一般視聴者だけでなく、業界内部でも話題騒然だったのは記憶に新しいところ。そんな『バイプレイヤーズ』の系譜を継ぐドラマが現在放送されている。それが同じテレビ東京系の深夜ドラマ『居酒屋ふじ』だ。


(参考:『まんが島』は映画版『バイプレイヤーズ』だ! 名脇役たちは監督の腕を問う


 主人公は、永山絢斗演じる売れない俳優の西尾栄一。どうにもうだつのあがらない彼が、Instagramで知り合った美女・鯨井麻衣(飯豊まりえ)、通称・クジラちゃんが「気になるお店」としてInstagramに写真をUPしていた“居酒屋ふじ”に足を踏み入れたことから、その店に集う客たちと交流を重ねていくという物語。


 どこか懐かしい昭和臭が漂う“居酒屋ふじ”の店内に入ってみると、天井も壁も有名人のサイン色紙でいっぱい。これまで多くの有名人が訪れてきた知られざる名店(居酒屋)を舞台にドラマを作っているが、ここで注目なのは、“居酒屋ふじ”の常連客として毎回登場する大森南朋。『バイプレイヤーズ』にも本人役でゲスト出演していたが、こちらでは主演なうえに今回も本人役。さらに、第1話、第2話のゲストとして登場した大杉漣は『バイプレイヤーズ』のメインキャストであったし、第5話にゲスト出演する椎名桔平も『バイプレイヤーズ』に続いての本人役。


 これが『バイプレイヤーズ』の系譜を継ぐドラマと書いた所以だが、では、なぜ彼らはそんなに本人役を演じたがるのか。その答えは、制作陣の遊び心に乗った俳優たちの心意気が一番だとしても、本人役=あて書きされたキャラクターを通して、自分に対して抱かれているイメージを再確認するのと同時に、そこから生まれるギャップを彼ら自身が楽しみたいという思いがあるのではないかと思う。そして、それは視聴者側からしても、「大森さんは普段、こんな感じの人なんだ」と思ったり、第2話で若い女性たちに“陰毛占い”なるものを勧めていた大杉連(“エロ”杉漣)の姿を観て「大杉さん、まさかのキャラ変!」と思ったり、本人役を嬉々として演じている俳優たちの姿に興味を掻き立てられる。


 さらに、この『居酒屋ふじ』においては、セリフにも遊び心が仕込まれている。大森南朋が若い女を連れて店を出ていった大杉連に対し、「『バイプレイヤーズ』をやってから若い子に人気があるんだよ」とぼやくシーンや、第3話のゲストだった水川あさみが、じつは博多出身で、博多弁が抜けないのを悩んでいると告白するシーンでは、「うち、水川あさみとよ。クールビューティよ」と言う水川に対し、常連客の一人(諏訪太郎)が「人は見た目が100パーセント。その訛りじゃ、イメージがね…」とこぼす。このようにちょいちょい本人に関わるワードやエピソードが登場し、視聴者のツボをくすぐってくるのだ。


 次週以降の本人役のゲストも、第5話の椎名桔平、第6話の長山洋子(居酒屋ふじの店内には、なぜか第1話から彼女のポスターが貼ってある)、第7話の前田敦子ら注目のキャストがずらり。彼らがどんな演技を見せてくれるのか、そして第1話に一瞬だけ登場して怪しい行動を見せていた篠原涼子が、今後、どのように物語に絡んでいくのか、期待が高まるばかりだ。


(馬場英美)