2017年08月03日 18:03 弁護士ドットコム
コナン・ドイルの名作推理小説『シャーロック・ホームズ』シリーズを翻訳し直して、全作品無料で公開しているウェブサイトが、ツイッターで「これはすごい」などと話題だ。サイトを紹介するツイートは1万1000回以上リツイートされている。
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このサイトは、コンプリート・シャーロック・ホームズ(http://www.221b.jp/)。サイト上には、「既存の著作権に抵触しないように、全ての作品を改めて原作から翻訳し直して公開しています」と説明されている。そもそも「著作権に抵触しない」とはどういう意味だろうか。サイト運営者に聞いてみた。
このサイトでは2008年から『ホームズ』シリーズが無料で公開されている。翻訳を担当したのは、ITエンジニアの寺本あきらさん。寺本さんは専門学校で英語を学び、その後も仕事で英文を読んだり、翻訳本を出すなどしているという。「著作権に抵触しない」とはどういうことなのか。
「原作を著したコナン・ドイルは、1930年に亡くなっていますので、世界の大部分で著作権は切れており、パブリックドメインとしていろいろなサイトに掲載されています。
しかし、それは英文で、訳文は独自の著作権があり、初めて日本語全訳された延原謙氏の没年は1977年ですので、現在も著作権は生きています。ですから勝手に利用して、サイトで公開すると権利の侵害になるはずです。
ただ、自分で訳すのなら、原文がパブリックドメインですので、訳文を自分の自由にできるようになり、それをこのサイトで無償公開します、そういう意味です」
著作権については放棄しているのだろうか。
「著作権はたしか自然に発生するものと理解しており、また放棄をしてはいません。コピーライト表記も入れています。再配布も許可していませんが、現在のサイトは誰もが無償で自由に閲覧していい、という状態です」
『ホームズ』シリーズの最初の作品『緋色の研究』は1887年に発表され、名探偵シャーロック・ホームズの登場から今年は130周年を迎えるが、いまだに世界中で多くのファンに愛されている。どんな思いで翻訳し直すことにしたのだろうか。
「シャーロック・ホームズは有名ですが、みなさん、意外にオリジナルを読んでいないことに気づいたからです。映画・漫画・派生作品などで間接的に知っていることが多いようです。アメリカ人でも原作はめったに読んでいません。逆に原作を読むと、『あの映画のあの場面はこれがネタだったのか』と思うことがいっぱい出てくるのではないかと思います」
「ホームズ」シリーズの面白さ、楽しみ方はどこにあるのだろうか。
「シャーロック・ホームズの現代的な面白さは『専門職の孤独』ではないでしょうか。職業が細分化されていくほど、自分の仕事を本当に理解できる人間は減っていく。
ホームズも世界に1人の『顧問探偵』という立場を作ったために、本当に理解できる人間には出会えず、モリアーティ教授という『悪の総元締め』と対決するとき、初めて対等の相手と戦えることに、むしろ喜びを覚える。この辺は、現代人にも通じるメンタリティではないでしょうか。『ゴルゴ13』なんかもそういうキャラクターですね」
(弁護士ドットコムニュース)