トップへ

『ジョジョ』小松菜奈が語る、“原作もの映画”への取り組み方「どれだけオリジナルにできるかが肝」

2017年08月03日 16:02  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 シリーズ累計発行部数1億部を超える荒木飛呂彦原作の人気コミックを、『無限の住人』の三池崇史監督が実写映画化した『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』が、8月4日に公開される。“スタンド”と呼ばれる特殊能力を持つ高校生・東方仗助が、平和な町“杜王町”で発生した連続変死事件に立ち向かう模様を描いた本作。リアルサウンド映画部では、山崎賢人演じる主人公・仗助の同級生で、神木隆之介演じる転校生・康一の世話係に強い使命感を抱く、奇妙な雰囲気を持つ美少女・山岸由花子を演じた小松菜奈にインタビュー。大人気コミックの実写化作品に出演することへの思いや、共演者や監督の印象、そして独自の演技論などについてもじっくりと語ってもらった。(編集部)


参考:小松菜奈の微笑は、撮る側の力量を試す 『沈黙』から『溺れるナイフ』まで表情を考察


■「私にとってはプレッシャーでしかなかった」


――大人気コミックが実写映画化されるということで公開前から大きな話題になっていました。原作コミックは読んでいましたか?


小松菜奈(以下、小松):もちろん存在自体は知っていたのでビジュアルにも馴染みがあったのですが、普段ほとんどマンガを読まないので、原作も読んだことはありませんでした。ただ、周りの友達にも熱狂的なファンがたくさんいて、いろいろな人から「今度『ジョジョ』やるんでしょ!?」と言われたり、連絡がきたりしたんです。他の現場のスタッフさんからも「やりたかった」とか「撮影を見に行きたかった」という声をたくさんいただいたので、そんなにすごいことなんだなと実感しました。日本だけでなく世界中で人気な原作ですし、楽しみにしている人がものすごくたくさんいたので、私にとってはプレッシャーでしかなかったです。「ちゃんと山岸由花子を演じられるのかな……」と思っていました。でも、由花子役として私の名前を挙げていただいたのは本当に嬉しいことでしたし、一緒にお仕事をしたいと思っていた三池(崇史)監督をはじめ、キャストの方々の名前を見て、絶対に楽しくなる作品だと思っていました。


――そんなプレッシャーの中でどのようにして山岸由花子の役に挑んだのでしょうか? 昨年9月に行われた製作発表会見では「ワカメをいっぱい食べて髪の毛を伸ばしている」と発言されていましたが(笑)。


小松:そうでしたね(笑)。でも結局もう少し長さがほしいということになって足しました。あまりにも長すぎるとバランスが合わなくなってしまうけど、長い方が気持ち悪さや不気味な感じが出るということで、ヘアメイクさんと相談しながら髪型を作っていきました。あと、血の気のない感じを出したくて、肌もいつもよりちょっと白くしました。


ーー内面的な部分はどうでしたか?


小松:どう演じれば魅力的になるか、みんなが気になる存在になるかというような、私自身が由花子としてどういう風に生きられるかをいろいろ考えながら探っていきました。やっぱり由花子には妙な空気感があるんですよね。康一(神木隆之介)に気持ちを伝える時も、普通に伝えるのではなく、「なんかこの子、変」みたいなところがあったらいいなと思ったので、視線をそらさずに康一のことをずっと見続けたり、話す時にはすごく近くで話したり、由花子だったらこうするなという自分自身で研究したことを意識するようにしました。だから由花子の衣装を着て髪をセットすれば、自然と由花子になった気持ちになれたんです。探り探りではありましたが、髪の毛を触る仕草も含めて、服装や髪形に助けられた部分はすごく大きかったですね。


――共演シーンが多い神木さんとは『バクマン。』(2015年10月公開)以来の共演ですね。


小松:とは言っても『バクマン。』では神木さんとの共演シーンがほとんどなかったんです。だから『バクマン。』の時に神木さんと話した記憶があまりなくて(笑)。


ーー確かに佐藤健さんとのシーンがほとんどでしたね。


小松:今回改めて思ったのは、神木さんは普段すごく元気で明るくて無邪気な方なのですが、お芝居に入ると、ものすごく繊細な演技をされるんです。自然とキャラクターに溶け込めるのは本当にすごいなと思いますし、いろいろな役を器用にこなされている。私にとっても尊敬する役者さんのひとりです。自分とは全然違う生き物だなという感じです(笑)。


ーー自分のような人間からしたら、神木さんも小松さんも同じ生き物だと思いますが(笑)。錚々たる顔ぶれの中で主演を務めた山崎賢人さんとの共演はいかがでしたか?


小松:山崎さんとは同じ事務所なのですが、共演は今回が初めてでした。山崎さんも神木さんと同じく、普段は明るくて自由な感じの方です。山崎さんが演じた東方仗助は、とても派手な髪型と服装で、普通だったら違和感を覚えると思うんです。なのに、それをまったく感じさせない。演じる役を自分のものにしているんですよね。これだけの人気キャラクターの役で主演を務めるということで、もちろんプレッシャーもあったとは思うのですが、本当にハマっているなと思いました。これまでは恋愛映画をたくさんやられていたイメージでしたが、今回はまた違う、絶妙な表情だったり感情だったりが、とても素敵に映っています。同世代としてはとても刺激になりました。


ーー山崎さんと初共演というのもそうですが、三池監督の作品に出るのも今回が初めてというのは少し意外でした。


小松:三池監督は「来た仕事を断らない」と聞いていたので、まずその精神がすごいなと思っていたんです。しかもちゃんと三池監督ワールドが繰り広げられていくので、すごくカッコいい監督だなと。CGを使った大きな作品もたくさんやられてきているので、三池さん自身がすごく派手な人なのかなと思っていたのですが、実際はあまり喋らない、優しい方でした。


ーーそれは演出においても?


小松:そうですね。現場も段取りよく進んでいって、「あれ、もう終わったの?」という感じで。演出に関しても、特にこうしてほしいとか、こう動いてほしいとか指示されるわけではなく、「自由にやっていいよ」という感じで、私たち役者に任せてくれました。もちろん気になるところがあったらきちんと言ってくださるので、とても信頼できる存在でした。


■「また関われる機会があれば、海外のお仕事もぜひやってみたい」


――今回のようなアクション映画から恋愛映画まで、小松さんは様々な役柄を演じられていますが、作品ごとに新たな表情を見せているように感じます。演技において、作品ごとにアプローチを変えるのでしょうか? それとも自分の中にパターンとして何か決まりがあるのでしょうか?


小松:どうですかね……ちょろちょろと出ているとは思います(笑)。というよりも、いろいろな役をやらせてもらう中で、やっぱり周りの共演者の方々が引っ張ってくれる部分もありますし、自分の中でこうしようというのは特にないですかね。可愛らしい女の子の役だったら、そういうタイプの女の子のモテ仕草を研究したり、行動をじっくりと見たりしてキャラ作りをしていくことはありますけど、どちらかというと、その場その場での感覚というか、自分がこうなんだろうなと思ったことを頭の中に入れてやっている感じなので、あまりその辺りは意識せずにやっているかもしれません。


――小説やマンガなど原作があるものとないものとでは、また異なってきそうですね。


小松:そうですね。それは全然違うと思います。マンガ原作だとビジュアルがあるので、それに寄せてしまう自分がいる気はします。でも、全部を気にしてしまうと面白くないじゃないですか。そこで自分のお芝居というか、自分が演じることで出せる味がキャラクターにも生きてくると思います。なので、原作があるものとないものとでは、結果的には変わってきますけど、原作があるとかないとかは、あまり気にしないようにはしています。その作品の世界観やキャラクターの魅力は残しつつも、どれだけオリジナルにできるかが肝だと思います。


――人気マンガの実写映画化となると原作ファンからは厳しい意見も出ることもありますが、その辺りは意識しましたか?


小松:今はすごい実写化ブームですよね。原作ファンの方は自分が本当に好きなものに対して愛がある。だから実写化されるのは嫌だと思う人がいるのは当然だと思います。でも、原作は原作だし、マンガはマンガだし、実写化は実写化なので、別物と思って観てもらえれば楽しめると思うんです。ひとりの人間がこうしてマンガのキャラクターを演じると、キャラクターに血が入った感じがして、それはそれで良さや味が出たりしますし、逆に原作を知らない方が映画を観て「『ジョジョ』って面白いじゃん!」と、原作も好きになる逆のパターンもあるはずです。マンガの方が面白かったと思う人もいれば、映画の方が面白かったと思ってくれる人もいると思うんです。特に女性や若い方にとっては映画の方が入り口として入りやすいと思うので、今回の作品が『ジョジョ』を知るいいきっかけになればいいなと思います。


ーー今回の作品はスペイン・シッチェスでロケが行われ、ヌーシャテル国際ファンタスティック映画祭やファンタジア国際映画祭など海外映画祭へも選出されました。マーティン・スコセッシ監督の『沈黙ーサイレンスー』でハリウッドデビューもされた小松さんですが、以前と比べて海外を意識するようになったのではないでしょうか。


小松:海外の作品は日本の作品と現場の雰囲気も全く違いますし、また違う楽しさがあるので、本当に“別物”という感じがしました。当たり前ですけど、『沈黙』の現場では英語が飛び交っていて、なんだか不思議な気持ちになりましたね。それがすごく新鮮で面白かったんです。演出においても、向こうは感情をあらわにするような豊かな演技が求められるような気がしますが、日本の場合は繊細さが大事。どちらにも良さがあるので、その両方のパターンを経験できたのは自分にとってもすごくよかったなと思っています。また関われる機会があれば、海外のお仕事もぜひやってみたいですし、日本の映画も大好きなので、いろいろな監督や役者の方々とこれからもお仕事ができたらいいなと思っています。吸収力や感じ方も全然違ってくると思うので、とにかく若いパワーを大事に、若いうちにもっといろいろなことを経験しておきたいなと思っています。(取材・文・写真=宮川翔)


※山崎賢人の崎は立つ崎(たつさき)が正式表記