2017年08月03日 10:53 弁護士ドットコム
客が帰った後のテーブルに、食べきれなかった料理の皿。居酒屋ではよく見かける風景だ。
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さすがに、食べかけの焼き魚や大皿料理は別だろうが、手付かずの唐揚げやポテトフライに、「もったいないなあ」と感じる人は少なくないのでは。
残った料理は、そのまま店員に引かれ、廃棄されるだけ。せっかくの料理をゴミにするなんてーー。そんな風に考え、残った料理を、ほかの客や皿を下げる店員が食べてしまったとしたら、法律的に問題になるのだろうか。大橋賢也弁護士に聞いた。
ーー料理は誰のものになるのか?
注文した料理がお客さんのもとに運ばれてきた時点で、料理の所有権は、お客さんに帰属します。
では、お客さんが残していった料理の所有権はどうなるのでしょうか。常識的に考えて、お客さんは、食べ残した料理の所有権を放棄したと考えられるでしょうから(持ち帰りを希望しなかったことを前提)、通常はその時点で、残された料理の所有権は、お店に帰属することになると思われます(法律用語でいうと、無主物先占といいます)。
ーー食べ残しを店員や他の客が食べたらダメなのか?
たしかに、食べ残しはもったいないですし、お客さんが食べ残した物を店員さんや他のお客さんが食べても体調を崩すことはないと思われるため、食べても良いように思われます。
しかし、店の営業者は、食べ残された食品の管理や処理について関心を持っているでしょうから、営業者から、「食べて良い」と言われない限り、食べない方が良いでしょう。
ーー店の責任者の許可を得ずに食べたら窃盗罪などの罪に問われる?
可能性があるかと言われれば、可能性はある、という答えになります。お客さんが食べ残した料理の占有は店に移ることになるので、営業者に無断で食べてしまえば、窃盗罪が成立することになります。ただし、このようなケースで営業者が、従業員や他のお客さんを窃盗罪で告訴することなど通常は考えられません。
ーー残した客が、帰りがけに「食べてよ」と言い残していたり、お店の人の許可があったりした場合はどうか?
お客さんから「食べてよ」と言われた場合は、お客さんから食べ残した料理の贈与を受けたことになります。したがって、従業員の場合は、仕事中にお客さんの食べ残しを食べるという”見た目”の問題はありますが、法律的には何の問題も生じません。
また、お店の営業者の許可があった場合も何の問題も生じません。ですから、お客さんが帰った後、営業者に「もったいないから食べてもいいですか?」と確認し、「食べても良い」という回答を得てから食べるようにすれば良いと思います。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
大橋 賢也(おおはし・けんや)弁護士
神奈川県立湘南高校、中央大学法学部法律学科卒業。平成18年弁護士登録。神奈川県弁護士会所属。離婚、相続、成年後見、債務整理、交通事故等、幅広い案件を扱う。 一人一人の心に寄り添う頼れるパートナーを目指して、川崎エスト法律事務所を開設。趣味はマラソン(フルマラソン等多数完走)。
事務所名:川崎エスト法律事務所
事務所URL:http://kawasakiest.com/