2017年08月03日 09:43 弁護士ドットコム
2017年5月に京都市でひき逃げされ、重傷を負った男性(35)について、京都府警が道交法違反(道路における禁止行為)の疑いで書類送検していたことが分かった。
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報道によると、男性は泥酔して市道の中央付近で寝そべっていたところを、トラックにひかれ、左脚に全治1か月の重傷を負った。トラックの運転手は道交法違反罪で罰金40万円の略式命令を受けている。
今回、被害者である男性も道交法違反の疑いで書類送検されたのはなぜなのか。また寝そべっていたことで、被害者が損害賠償請求をする場合の請求額にも影響してくるのか。木野 達夫弁護士に聞いた。
道路交通法の「道路における禁止行為」とはどういうものか。
「道路交通法には道路上でしてはいけない『禁止行為』が幾つか規定されています(道路交通法76条)。たとえば、交通の妨害になるようなものを道路に置く、石などを道路に投げる、信号機が隠れるような看板を設置する等です。
これらの行為が禁止されているのは、もちろん、交通の安全のためです。『禁止行為』の中に、『酒に酔って交通の妨害となるような程度にふらつくこと』や『交通の妨害となるような方法で寝そべること』も含まれています。」
今回のように、ひき逃げの被害者が書類送検されることはかなり珍しいのではないか。
「今回の書類送検はかなり異例です。道路に商品を出したり、看板をおいたりする行為はよく見かけます。酔っ払って千鳥足の人もときどき見かけます。それでも、悪質でない場合は取り締まらないことが多いと思われます。件数が多すぎて全てを取り締まれないという事情もあるでしょう。
道路に寝そべる行為も『交通の妨害となるような』場合は本来違法です。しかし、危険性が低い場合は警察官が注意したり、その人を保護したりして、特に刑罰を与えることは少ないと思われます」
それほど今回のひき逃げ被害者の行為は、悪質だったということか。
「今回の事案では、実際に、トラックにはねられています。気の毒といえば気の毒ですが、報道によると、寝そべった道路は『幹線道路』だとされています。
通常、ドライバーは道路に人が寝そべっていることを想定して運転していません。もし、ドライバーが被害者に気付いて急ハンドルを切ったり、急ブレーキを踏んでいれば、別の大きな事故につながった可能性もあります。そのようなことを考慮して、異例の書類送検に踏み切ったのでしょう」
今回の被害者がトラックの運転手に損害賠償請求をした場合、損害賠償額にも影響してくるのだろうか。
「今回の事案では、民事の損害賠償の場面でも大幅な過失相殺が行われると思われます。夜間、道路に寝そべっている人を発見して避けることは容易ではないからです。今回の事案の場合、詳細の事情にもよりますが、被害者の過失割合はおおよそ60%~70%と認定されるものと思われます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
木野 達夫(きの・たつお)弁護士
兵庫県弁護士会所属。昭和63年大阪府立大手前高校卒業、平成7年神戸大学法学部卒業。平成12年司法試験合格。平成21年より梅田新道法律事務所パートナー弁護士就任。平成24年兵庫県弁護士会に登録変更し、宝塚花のみち法律事務所にて執務開始。平成26年兵庫県弁護士会伊丹支部副支部長
事務所名:宝塚花のみち法律事務所
事務所URL:http://www.hananomichi-law.com/