2017年08月01日 19:13 弁護士ドットコム
ヤマト運輸下請けの運送会社に勤めていた男性(44)=東京都江東区=が8月1日、荷物積み下ろしのミスで懲戒解雇されたのは無効だとして、同社を相手に地位確認と出勤停止以後の賃金などを求めて東京地裁に労働審判を申し立てた。
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申し立て後に記者会見を開いた男性によると、同社の従業員は、単発の運転手も含めると100人ほどおり、仕事の95%がヤマト運輸からきているという。男性は2007年ごろから同社で週1~2のペースで運転手として働き始め、2009年ごろからは週6日以上働くようになった。いずれも契約書はなく口約束だったという。2009年の12月ごろには、同社が全運転手に対して労働契約を請負契約に変更するよう契約書へ署名を求めた。男性はこれに納得できず、署名を拒否した。
仕事の日給は1万2千円で、たとえ労働時間が16時間であっても残業代は一切出なかった。時給換算すると、530円だったこともあるという。男性は度々会社側に残業代などを要求したものの、役員を通じて伝えられた社長の返答は「NO」の一言。そこで男性は他の運転手らと共に労働組合に加入し、2015年6月には労働審判を提起した。
男性は2015年8月2日、ヤマト運輸の冷凍庫に保管しなければならない荷物を、冷凍庫に入れずに残したまま帰宅してしまった。すると同月4日に出勤停止を通告され、同月12日には、運送請負契約を解除することを文書で通知された。また男性が請負契約を結んでいなかったことから、文書には予備的に、懲戒解雇をするという旨も書かれていた。
代理人の指宿昭一弁護士は「もの言う労働者だと言うことで、ちょっとしたミスを捉えて解雇したのではないか」と指摘する。男性は「会社の言いなりになるのは嫌だと今回、審判を決意した。自分では一回のミスで懲戒解雇というのは、明らかにおかしく、不当解雇だと思っている。社長と対話がしたい」と訴えた。
また、指宿弁護士は「運輸業界では、ヤマト運輸が未払い残業代を運転手に支給するという賢明な判断をした。大手でそう言った業界の改革の動きがあっても、残念ながら下請けではほとんど行われていない」と業界の問題点を指摘した。
運送会社は「労働審判について承知していない」とコメントした。
(弁護士ドットコムニュース)