ヤマト運輸の下請け会社に残業代を請求したところ、業務請負の契約を解除されたという男性(44)が8月1日、地位確認を求めて労働審判の申し立てを行った。代理人の指宿昭一弁護士が同日、厚生労働省で記者会見を行った。
「ヤマト運輸では改革が進んでいるが、下請け企業では進んでいない」
男性は、ヤマト運輸の下請け会社で2007年頃から貨物自動車運転手として働き始めた。当初は週1~2日の契約だったが、2009年頃からは少なくとも週6日以上勤務していた。契約書は交わしていないという。
2009年12月頃、仕事の内容は変わらないのに、同社は運転手に「輸送業請負契約書」への署名・捺印を求めた。男性は署名・捺印を拒否したが、他の運転手は署名・捺印をした。
日給は1万2000円で残業代が出たことはなかった。男性を含む7人の運転手は2015年6月に時間外労働・深夜労働・休日労働の割増賃金の支払いを求めて、東京地裁に賃金等請求労働審判を申し立てた。残業代は合計で約420万円になるという。
男性は同年8月、冷凍庫に保管しなければならない荷物を、冷凍庫に入れないで帰宅してしまった。同月11日、下請け会社は原告との「運送請負契約」を「解除」し、懲戒解雇をするという通知を送付した。
指宿弁護士は、「ミスをしたのは事実だが、懲戒解雇にあたるようなものではない」と指摘。また、
「ヤマト運輸でも残業代を支払ったりと、改革が進んでいるが、下請け会社ではそのような改革が進んでいない。実態は正社員であるのに、業務請負だと言われたり、『請負契約書』への署名を強要されたりしている。また残業代を請求したことで契約を解除されるような現実がある」
と語った。
申立人の男性は「10年以上やっていてこれまで事故を起こしたことはありません。それも社長の取り巻きが起こしている事故に比べればはるかに軽微なものでした。今回の解雇は不当解雇だと思います。納得いきません」と訴える。
今回の労働審判を通して「会社ときちんと対話できるような関係を築きたい」という。
「これまでも会社には疑問に思うことがたくさんありました。例えば、タイヤがパンクしていてもそのまま仕事に行かせるようなことがありました。『人を轢いたらどうするのか』と聞いても、『いいから行け』としか言わないんです。いつもは取り巻きが間に入って、社長と直接話すことができませんが、きちんと対話できる関係を築きたい」
労働審判を申し立てた運転手7人は、労働組合である各専労協で分会を結成し、現在も係争中だ。男性は残業代請求に加え、地位確認を求めており、「職場に戻れるなら戻りたい」と語っている。