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水瀬きいの突撃インタビュー! vol.6 千代勝正選手

2017年08月01日 18:42  AUTOSPORT web

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今回の突撃インタビューのお相手は、千代勝正選手! 意外な一面を見ることができました。
2017年からオートスポーツwebナビゲーターに就任した水瀬きいさんに、日本で活躍するレーシングドライバーに突撃インタビューをしてもらうことになりました。第6回目は、じつは初めての日本人ドライバー。スーパーGT500クラスでS Road CRAFTSPORTS GT-Rをドライブする、千代勝正選手です!

 これまで5回お届けしたこのコーナー。きいさんの語学力を活かして全員外国人ドライバーだったのですが、今回は初めての日本人。今季はスーパーGT500クラスでS Road CRAFTSPORTS GT-Rをドライブする千代勝正選手です! 以前からきいさんとは顔見知りだったとのことですが、いったいどんなインタビューになるでしょうか!? ではさっそくどうぞ!

※この取材はスーパーGT第4戦スポーツランドSUGOの金曜日に収録しました。

■今年のGT500はワガママ女子!?
水瀬きい(以下Kii):まずは今季、GT500とブランパンGT含めて、シーズン前半戦を振り返ってください。
千代勝正(以下KC):スーパーGTはまだ思うような結果が出ていなかったですからね。去年の開幕は初めてのレースで予選で首位だったりと、いいスタートだったんですが、途中で怪我をしたり。今年はレギュレーションが変わって『よし、いくぞ!』と思っていましたが、まだ開幕3戦で結果が出せていないんですよね。ブランパンでもまだ結果が出ていないので、苦戦中です。

Kii:ブランパンGTはひさびさに参戦して、いかがですか?
KC:やっぱり難しいレースです。60台のクルマが一斉に走って、しかも全部GT3ですからね。コース1周の長さは日本と大して変わらないのに、そこに60台もいるから全然スペースがないんです。それで一斉に15分間で予選をやるので、スペースを作ってクリアラップをとるのが、本当運試しみたいな感じで。クルマの速さもドライバーの腕も必要ですが、運も大きいです。すべてかみ合わないと勝てないレースですね。楽じゃないです。

Kii:スーパーGTに話を戻します。2017年のニッサンGT-RニスモGT500はどんなクルマですか?
KC:去年と比べると、新しいレギュレーションに合わせて25%ダウンフォースが減っていて、それを取り戻すためにエアロも改良されています。エンジン等は正常進化なのですが、レギュレーションの違いが大きくて、ダウンフォースが少なくなった分、空気に頼らないメカニカルグリップが必要になっています。どのメーカーも同じだと思いますが、その部分の味付けというか、セッティングが難しくて、開幕から苦労していますね。機嫌がいいときはすごくいいんですが、それ以外はちょっとジャジャ馬ですね。

Kii:昨年までのGT500とはやはりけっこう違う?
KC:違いますね。やはりダウンフォースが減っているから、昨年まではちょっと無理をしてもクルマがついてくる。限界が高かったからごまかせた部分もあったけど、今年はちょっとミスをするだけでごまかしがきかない。ドライビングはすごく難しいです。繊細ですね。優しく扱わないといけないです。強引に扱うと言うことを聞いてくれないです。

Kii:まるでワガママな女子の扱い方みたいですね!
KC:そう。優しく扱わないと(笑)。

■ちょっぴり意外なジェンソン・バトンとの関係
Kii:GT500にステップアップして、GT500のなかでの戦いにはもう慣れましたか?
KC:2年目なのでだいぶ慣れましたけど、トラフィックの抜け方や、タイヤ開発とクルマの開発のスピードが速いので、セッティングに対するコメント力やフィードバックの力がすごく難しいです。言葉や伝え方もすごく勉強しています。戦い方という意味ではいろいろなバトルも経験できていて、成長は感じられていますが、自分のなかではまだスッキリしたバトルが経験できてないですね。

Kii:では、チームメイトの本山哲さんとはふだんどんな関係ですか?
KC:そこ聞きます(笑)? 本山さんは忙しい方なので、ふだんサーキット以外でゴハンに行ったりとかはそれほど多くないです。年の差は離れていますけど、本山さんは兄貴肌というか、すごく頼れるお兄さんって感じですね。ニッサンのドライバーはみんな慕っていますし、優しいです。

Kii:ところで、公式テストのとき、TEAM MUGENのNSX-GTをテストしたジェンソン・バトンさんとよくお話しされているシーンが見かけられましたが、どんな関係なんですか?
KC:良く見ていますね~。僕のブランパンGTでのチームメイトにアレックス・バンコムというドライバーがいるんですが、彼のお兄さんのクリス・バンコムというドライバーがいるんです(編注:FIA-GT等スポーツカーレースで活躍)。彼はバトンさんと大親友なんですよ。たとえばフランスでレースがあるとするじゃないですか。そうすると、モナコで1~2日ゆっくりしたりするのですが、そのときにクリスがいて、バトンさんもいて、一緒にゴハン食べたりしています。F1日本グランプリのときも、クリスに誘われて食事に行くと、バトンさんがいたり。そのうちに面識ができて、仲良くさせてもらっています。
僕がブランパンGTのポールリカールで優勝したときも『優勝したらモナコに帰って来い』と言われていて、行ったらみんなF1から帰っていて、僕のチームメイトとバトンさんと、あとはデイビッド・クルサードなんかもいたりして。すごいメンバーでしたね。東京でもダニエル・リカルドとかも良く会ったりします。

Kii:そういう接点だったんですね! さすが世界の千代さん。
KC:いやいや(笑)。

Kii:ところでテストといえば、23号車MOTUL AUTECH GT-Rに乗ることもあると思いますが、何かS Road CRAFTSPORTS GT-Rと違いを感じますか?
KC:セッティングが違いますね。23号車はロニーさん(ロニー・クインタレッリ)と次生さん(松田次生)の好みのセッティングですが、ちょっと味付けが違います。大きく変わるわけではないんですけどね。でもGTは日によって印象が変わりますからね。ドライビングのアジャストはちょっと必要なレベルですけど、お互いにデータを共有して、調子悪いときはどちらかを参考にしたりするので、それほど離れているわけではないです。

Kii:「GT500は女子」ですからね!
KC:そう。気分屋なの(笑)。気温や路温でクルマが変化するので、それで大きく変化しますね。

■じつは千代勝正は“お祭り男”だった!?
Kii:では、ちょっと話題を変えて。最近のマイブームを教えて下さい。
KC:なんだろうなぁ……!? 夏だとウェイクボードをしたりしますけどね。ジャンプとかはできますが、回転なんかはできないです。やり過ぎると怪我もしちゃいますし。スノボも行きますけどね。あとは友だちと出かけたりとか。そう言えば僕、趣味とかあまり言ってないかもしれませんね。音楽も聴くし……。

Kii:多彩なご一家の出身ですけどね。
KC:そうなんです。親はミュージシャン(編注:ギタリストの千代正行さん)なんですけど、僕はあまり音楽の才能はないみたいです(笑)。昔はバンドをやったりしていましたけど、今は全然触れないです。

Kii:なんの楽器をやってたんですか!?
KC:最初はドラムとギター。でもドライビングの方が楽しいので、そちらにいきました。う~ん……あとはなんだろう? <しばらく沈黙> あ、分かった!『お祭り』です。

Kii:!?!? お祭りがマイブーム!?
KC:お祭り大好きなんですよ。1年に一度、必ずデッカいお祭りに行くようにしているんです。去年は青森のねぶた祭に行ったんですよ。超楽しい! 東北新幹線で行って、跳人の衣装着てみんなで跳ねるんですが、超汗だくになりましたよ! お祭りは全力で楽しみます。

Kii:それはなんかちょっと意外ですね!
KC:お祭り男なんです(笑)。その前の年は徳島の阿波踊りに行って、それも踊りましたねぇ。今年はよさこい祭りに行こうと思っていたんですが、飛行機と宿がとれなくって。先日は平塚の七夕祭りも行ってきましたよ。それで短冊に願いごと書いてきました。

Kii:カワイイ~!
KC:以前ちょっとふざけて『世界王者』って書いたんですよ。そうしたら2015年、ブランパンGTシリーズのチャンピオンも獲って、スーパーGTでもチャンピオン獲って、バサーストでも勝って、すごかったんですよ(笑)。それから七夕は力入れてます! 良ければお祭りの歩き方教えますよ。

Kii:ワタシ、浴衣も暑くて無理です~。え~、ところで最近髪型を変えましたよね?
KC:けっこう切ったと思います。

Kii:えっ!? そんなに切りましたか?
KC:眉毛が主張しすぎるから目がいかないですかね(笑)。特に髪型は理由はなくて、気分転換です。最近ずっと長かったから、切りたくって。一度切り出すと、どんどん切りたくなってしまうんですよ。今は切りたい方向に進んでいます。あ、でもこれ以上は切らないと思いますよ(笑)。

Kii:ところで、最近は自撮り棒使ってないんですか?
KC:たしかに! そういえば使ってないですね。いちおうレースのときにカバンには入っているんですよ。でも、優勝するまで使いたくなくて。GT500に上がってからはまだ新人だし、あんまり出しゃばっちゃいけないかな~というのもありますし、自撮り自体もマイブームがちょっと去ったかもしれません(笑)。次はドローンですかね。

Kii:三栄書房からもドローンが出ていますよ。
KC:そうなんですか! 使ってみたいです(笑)。ウェイクボードとか上から撮ったらめちゃカッコ良さそうじゃないですか。

Kii:では最後に。今季の目標、意気込みを教えてください。
KC:今年はまず勝ちたいです。GT500の2年目で、表彰台はあるけどまだ勝っていないので。そこからチャンピオンを目指したいです。まずは勝たないとチャンピオンにいけないと思うので。

Kii:ありがとうございました!

<編集部から>
今回のインタビューは、スーパーGT第4戦SUGOの金曜日にお時間をいただいて取材しました。初めての日本人ドライバーのインタビューですが、取材自体だいぶ場数をこなしはじめたきいさんだけに、けっこう話も盛り上がりました。千代選手の意外な一面、ぜひご堪能ください!

千代勝正
1986年12月9日東京都生まれ。本文中にもあるようにギタリストの父、モデルの姉(かつてニスモのレースクイーンを務めていたこともある)をもつ多彩な一家の出身。2002年にレーシングカートにデビューを果たし、FCJ、全日本F3 Nクラスとステップアップ。11年にはNクラス王者を獲得した。2012年にGT300デビュー。2015年にはニッサンGT-RニスモGT3を駆り、バサースト12時間、ブランパンGTシリーズ日本人初王者、GT300クラスチームチャンピオンと華々しい成績を残し、16年からGT500に挑戦している。