スパF3 予選でフロントローを独占するも勝ち星を掴めず
2017年7月28~29日
ベルギー/スパ・フランコルシャン
伝統のスパ24時間レースのサポートレースとなるFIA-F3ヨーロピアン選手権 Rd.6 ベルギー、スパ・フランコルシャン。
アルデンヌの森の中にあるこの全長7kmにも及ぶクラシックレイアウトのサーキットは、猫の目の様に変わりやすい天候“スパウェザー”とともに他に類を見ない高速コーナーのオールージュに代表される等、キャラクターの濃いコースとして知られる。毎年このレースは変則的なスケジュールとなり、今年も木曜日から予選が始まった。
二回の予選(レース3のグリッドはQ2のセカンドベストが採用される)でプレマ/セオドールの4名のドライバーはそれぞれが好位置につけることができ、すべてのグリッドでフロントローを獲得し、チームは大いに期待を持って決勝を迎えた。
レース1
グリッドは#53 カラム・アイロットが2番手のフロントロー。#3 マキシミリアン・ギュンターは4番手。6番手のタイムをマークした#8 周冠宇はペナルティを受けてしまい3グリッド降格の9番手。そしてこのコースを初めてF3で走る#25 ミック・シューマッハは14番手とやや後方からのスタートとなる。
昨年は土砂降りに見舞われたこのレースも今年はドライコンディションでのレースとなった。ポールの#31 ランド・ノリス(カーリン)に次いで好スタートを切ったカラムは1コーナーを通過した段階でノリスのスリップに入る。
名物のオールージュからケメルストレートでスリップから抜け出しオーバーテイクしようとした瞬間、カラムの右フロントタイヤとノリスの左リアタイアが軽くタッチ。高い速度を維持したままランオフエリアからコースに戻ったカラムは縁石でジャンプしてしまいコントロールを失い#34 ジェイク・ヒュース(ハイテックGP)にヒット。
ヒュースはそのままウォールにぶつかりクラッシュ。セーフティカーが出ることとなってしまった。5番手に落ちたカラムはレース再開後にドライブスルーペナルティーが科せられ、勝負権を失い14位完走に留まった。
再スタート後、ノリスに張り付いて2位をキープしていたマキシミリアンだったが徐々に遅れ始め、後ろからきた#99 ニキータ・マゼピン(ハイテック)にオーバーテイクされてしまう。マキシミリアンはその後もペースが上がらずに3位をキープ。なんとか表彰台の一角を獲得した。
一方のFDA(Ferrari Driver’s Academy)ドライバーの周冠宇。こちらもユーズドタイヤが災いしペースが上がらず、後ろから来たミックに交わされてしまう。
周は結局、順位を落とし12位完走に留まるが一方のミックは突然、覚醒したかの様な素晴らしい活躍でポジションをグイグイと上げる。
スタート直後からポジションを二つあげたミックはその後、SC解除の再スタート時もまたも順位を上げ、最後は昨年のシーズンオフからMRFでライバル関係にあったVARの#96 ジョイ・モーソンや#17 ハリソン・ニューウェイ等と激しい順位争いをし6位でゴール。ルーキーポディウムは4番手で逃したものの、予選14位から8ポジションアップを果たした。
レース2
ポールこそノリスに譲ったもののカラムがふたたび2番手でフロントロー、周が3番手、マキシミリアンが4番手と最前列の二列/4つのグリッドのうち3つを奪う好調ぶり。ミックだけが予選を外し15番手に留まるがレース1での活躍の様子から大きな期待が持てる。
全車クリーンスタートを決めたレース2。トップのノリスの直後を3台のプレマ/セオドールのマシンがスリーワイドで追いかける。ケメルストレートでカラムはノリスをオーバーテイクしトップへ。
そこへレッドブルリングのレースあたりから好調の波を維持している中国人ドライバー、周冠宇がカラムのすぐ後ろについてノリスをパス。
しかし、その直後ノリスが周にヒット。周はスピンしそのままレースを終えてしまう。このアクシデントで後方集団は大混乱。そこを冷静に切り抜けたミックはポジションを一気に10番手までアップする。
しかしSCは出なかった為、レースはそのまま続行。トップに立ったカラムを後ろからマキシミリアンが果敢に攻め立てレコームでオーバーテイク。しかしその後のペースが上がらず、レース1をリタイヤで終えたヒュースがトップの2台に後方から徐々に迫る。
最終コーナー手前でヒュースはカラムをパス。カラムはこれで3位へと落ちるもののヒュースのスリップへ。そのままケメルストレートでヒュースをオーバーテイク。一周の距離が長いコースと高速コースの特性を考慮した独自の戦い方でのバトルが展開される。
一方のミックもこの序盤の段階で9番手まで上がって来ており早くも6ポジションアップ。さらに前を行くマゼピンのマシンを果敢に攻め立てる。
マキシミリアンを先頭にやや距離を置いてカラム。その後ろには3台のマシンが連なるがこの時点でプレマ/セオドールの勝利は固いと思われた。カラムはマキシミリアンに猛プッシュし、一度は開いた差を詰めてオーバーテイク。ふたたびトップに返り咲いた。
しかしこのバトルの間に後続車が追いついてきてしまい、1位から5位までが一つのグループになる。にも関わらずギュンターはふたたびやり返しトップを奪回。
この間に#62 フェルディナンド・ハブスバーグ(カーリン)がこのトップ2台に完全に追いついてしまう。そして明らかにタイヤが厳しくなってきていたカラムをパス。それに続いてヒュースもカラムを抜いて行く。
さすがにカラムも抵抗をしたがすでに余力は無く、あっさりとポジションを明け渡す。各コーナーでスライドしてしまうほどタイヤを使い切ってしまったカラムに#1 ジョエル・エリクソンが近づいてこれもあっさりと交わしていく。
結局、カラムは7位までポジションを落としたところでチェッカーとなったがレース後にマゼピンにペナルティが与えられて繰り上がり6位となった。
一方のトップを走るマキシミリアンも状況はまったく同じで、ハブスバーグにあっさりと抜かれて首位陥落。あれほど完璧に見えたチームの牙城があっさりと崩れ去ってしまった。
2位に落ちたマキシミリアンにヒュースが近くが、こちらはマキシミリアンとほぼ同じ状態で抜くにはいたらず。しかしここまでタイヤを温存してきたエリクソンは前を行く二台とはまったく異なるスピードでマキシミリアンとヒュースを追いかけ回し、ラスト3周でまずヒュースを、次の周にはマキシミリアンを抜いて2位となり、マキシミリアンはレース1(第16戦)と同じく3位へとドロップした。
予選を失敗した為、他の3台と大きく違うセットで臨んだミックはここでもそれが功を奏し、トップ10フィニッシュとなる9位でゴール。ルーキークラス2位も手に入れて表彰台に登った。
レース3
予選2のセカンドベストでのグリッド。ポールはカラム、2番手周、3番手マキシミリアンとグリッドのトップを完全に抑え、このウイークエンド初の優勝に大きな期待が掛かった。ミックはこの予選は13番手となっている。
レースは完璧なスタートでプレマ/セオドールのワン・ツー・スリー体制。ミックも後方でジャンプアップに成功。ケメルストレートで周がカラムをパス。ユーロF3史上で初めて中国人ドライバーがトップに立った! そこへレコームでノリスが割って入り、周、マキシミリアン、ノリス、カラムとなったがトップに立った周はグングンとリードを広げる。
ノリスがマキシミリアンを交わして2位に浮上。しかし周のリードは大きく、初優勝の期待が一気に高まった。
ヒュースが5番手に浮上。同じタイミングでカラムがマキシミリアンをパスして3位へ。マキシミリアンのスリップにヒュースが入り、オールージュを抜けてケメルストレートの入った時、ヒュースのフロントタイヤがマキシミリアンのリアタイヤを突いてしまい、マキシミリアンは最高速を出している状態でマシンがスライド。
さらに横を向いた時にヒュースのマシンが突っ込んでTボーンクラッシュ。マキシミリアンはスピンしながらガードレールに何度も叩きつけられて大破、リタイヤとなった。
SCとなり、そこまでの貯金は全てゼロになっての再スタート。周はノリスにオーバーテイクされ2位へ。さらにチームメイトのカラムにもパスされて3位に落ちてしまう。その後方からまたもやヒタヒタとエリクソンが近づいてきて周を、その次にはカラムをオーバーテイク。
完璧な予選ポジションからスタートしたチームは、この時点で二台ともタイヤに問題を抱え、完全に優勝のふた文字から見放された展開となってしまった。
最終ラップ。タイヤの問題はむしろカラムの方が深刻で、周は最後の力を振り絞りカラムをオーバーテイク。3位表彰台を獲得した。
カラムは4位、後方から着実に順位を上げてきたミックは8位で、またもや大きくジャンプアップ。ルーキークラスの表彰台を再度、獲得した。次のレースは夏休み明けの8月19~21日、オランダ・ザントフォールトのレースとなります。
ドライバーのコメント
#3 マキシミリアン・ギュンター
レース1の結果は悪くないが、マシンのバランスの悪さは解決しなかったよ。ノリスを攻められないんだ。そんな調子だからマゼピンにも抜かれてしまった。今回は周りもとても速く、ポジションを守るのが精一杯だったよ。
レース2も同じく3位。カラムとは良いバトルができたけど、引き離すには至らないよね。カラムのスリップでチャンスを掴みたかったんだけど、そうなる前に後ろのクルマが僕と同じラインを使ってきた。結果はご存知の通りさ。仕方がない。こういうこともあるのがレースさ。
他のライバルも同じくポイントを多く稼げていないから、結果的に僕が選手権をリードしている様なもんだよね。とにかく夏休みに入りリフレッシュしてザンドボールドに向かいます。
#8 周冠宇
予選を終えてレース1へ向けてセットアップを変えてみたんだ。ところがこれがまったくダメ。ユーズドタイヤでスタートしたんだけど、途中でタイヤが完全に終わってしまったんだ。
レース2はスタートが上手く行き、これはイケると思った瞬間にあのクラッシュさ。フロアまでダメージを受けてしまったよ。そこでレース3へ向けてマシンを完璧に組み直してもらった。そしてこれが当たったんだ。
SCまでは全てがOKだった。けどSCがいなくなって再スタートしてからはリアタイヤにデグラデーションが出てしまいダメ。最後の最後にカラムを抜いたけど、あれが精一杯だったよ。
#25 ミック・シューマッハ
予選が終わり、レース前に全てのプランを練り直したんだ。それが結果として良かったと思う。前方のグループに入れてバトルもできてポイントも稼げた。この伝統のコースで走れて良かった。自分をさらに成長させることができました。
#53 カラム・アイロット
予選から上がったり、下がったりと目まぐるしかった。レース1でイケた!と思ったらアクシデントでペナルティ。
レース2ではマキシミリアンと戦えたけど、結果的にタイヤをダメにしてしまった。最後のレース3のスタートは良かったけど、スリップでやられてしまった。レースの前半はペースを掴めて良かったんだけど、リアのデブリが出始めて、もう後半は全然ダメ。あの4位が精一杯でした。