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ブリヂストン 2017年86/BRZ第5・6戦十勝 レースレポート

2017年08月01日 06:32  AUTOSPORT web

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#770山田英二 2017年86/BRZ第5戦十勝
2017 TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Race [Professional Series] 第5戦

変則Wヘッダーの初戦で山田英二が3位表彰台獲得
開催場所:十勝インターナショナルスピードウェイ
開催日:2017年07月29日(土)~2017年07月29日(土)

 昨年に続き、今シーズンも2連戦となる十勝スピードウェイ。しかしワンデーレース×2ではなく、変則的な構成とされていた。予選は土曜日の第5戦のみで、その結果を受けて第5戦がスタート。翌日の第6戦には予選がなく、第5戦のレース中のベストタイム順でスターティンググリッドが決まる。
 
 参加しているドライバーたちはチャンピオンを狙っているだけに、当然シリーズポイントを積み上げたい。そのために最も有効な戦略を取るのが、プロのプロたるゆえんかもしれない。結果として第5戦は、その影響を大きく受け普段とはまったく様相が違ってしまった。
 
 実はこの大会前にペナルティが公示された。TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Raceでは、通常のレースペナルティの他に、ペナルティポイント制が採用されている。
 
 ペナルティの程度によってポイントが積み重なり、それが4点以上となった時にはスターティンググリッド降格か、予選ベストタイムの抹消というペナルティが与えられる。今回のレースでは、#1佐々木雅弘選手(ブリヂストン)、#5井上尚志選手(ブリヂストン)、#31青木孝行選手(ブリヂストン)の3選手に、10グリッド降格のペナルティが与えられた。
 
 予選結果に対して10グリッド降格が実行できない場合、つまり最後尾まで10台に足りない場合は、ピットスタートとなる。つまりエントリーが26台なので、予選16位以上に入らないと自動的にピットスタートになってしまうというわけだ。

●予選
 北海道出身であり、十勝スピードウェイがホームコースでもある#369平中克幸選手(GY)が、金曜日から速さを見せていた。その勢いのままに、予選2位となった#60服部尚貴選手(DL)を0秒358引き離して、見事にポールポジションを獲得した。2015年から参戦をはじめて以来、初のポールポジションとなった。

 3位には、十勝スピードウェイの走行経験はほとんどないというハンデをベテランの技術で克服した#906新田守男選手(ブリヂストン)が入った。
 
 4位に#90阪口良平選手(ブリヂストン)、5位には#770山田英二選手(ブリヂストン)となった。

 注目された佐々木雅弘選手は、コースとの相性が悪いのもあってか、17位。井上尚志選手は21位。つまり自動的にピットスタートとなった。そして青木孝行選手は積極的にピットスタートを選択する意味もあってスローペースで予選を走り、最下位の26位。
 
 オーバーテイクが難しい十勝スピードウェイということもあり、下位スタートでは多くのポイントを得ることができない。であれば第5戦を諦めて、第6戦のためにできるだけ速いベストラップを出しておきたい。
 
 そのためには集団と離れてピットから遅くスタートし、フリーな状況でアタックするのがベターという作戦だ。

●決勝レース
 結果としてピットスタートしたのは3台ではなく、4台だった。ポイントランキング2位の#97近藤翼選手(ブリヂストン)は予選を15位で終えていた。この場所からスタートしても多くのポイントを獲得するのは難しい。しかも第6戦でも、同じような結果になる可能性が高い。そこであえてピットスタートを選択したわけだ。
 
 またチームメイトの#76小河諒選手(ブリヂストン)は19番グリッドからスタートしたものの、スローダウンして最後尾まで下がりベストラップを狙うという戦略を採用していた。
 
 レースはスタートで服部尚貴選手が先行し、トップに立つ。しかし速さに勝る平中克幸選手がジリジリと差を詰め、オーバーテイクのタイミングを狙っていた。
 
 そして5周目、ついに平中克幸選手がトップに立ち、ジリジリと服部尚貴選手との差を拡げていき、そのままチェッカーフラッグを受けた。地元北海道で、今シーズン初勝利をポール・トゥ・フィニッシュで飾ることになった。
 
 3位以下は意外なほど動きのないレースとなった。これは翌日に控えた第6戦を見据え、リスクを避けた結果といえそうだ。オーバーテイクの難しい十勝スピードウェイでは、無理なチャレンジは接触やコースアウトのリスクを大きくしてしまうからだ。
 
 3位には山田英二選手、4位新田守男選手、5位井口卓人選手と、ブリヂストン装着勢は、トップ10の中に6台が入った。

●コメント
3位表彰台を獲得した#770山田英二選手(ブリヂストン )のコメント。
「レースは理想的でしたね。とにかくほかのブリヂストン(装着)勢の前に出たかったんですね。2周目にベストラップを出すために、前に詰まりたくなかったんですよ」

「スタートで3位にポジションを上げたことで、しっかりとタイムを出すことができました。前後のマシンとは少しスペースがあったので、タイヤのマネージメントしながら走ることもできました。明日は5番手からのスタートになるんですが、連続表彰台を目指したいですね」

2017 TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Race [Professional Series] 第6戦

佐々木雅弘がうっぷんを晴らす快走で2位表彰台

開催場所:十勝インターナショナルスピードウェイ
開催日:2017年07月30日(日)~2017年07月30日(日)

 前日の第5戦でのベストラップのタイムによって、第6戦のスターティンググリッドが決まるという変則的な2レース制によって、今回のレースはより複雑なものになった。
 
オーバーテイクポイントがない、とよくいわれる十勝スピードウェイだからこそ、予選順位はそのままレース結果に直結してしまう。

第5戦は完走扱いにならなくてもベストラップの記録は残るので、第5戦のレースで1周だけアタックして良いタイムを出せば、第6戦を前方のグリッドからスタートできるというわけだ。

 その第5戦でペナルティポイントによって10グリッド降格となることが決まっていた#1佐々木雅弘選手(ブリヂストン)、#5井上尚志選手(ブリヂストン)、#31青木孝行選手(ブリヂストン)の3選手だけでなく、予選結果が振るわず上位入賞が難しいと判断した#97近藤翼選手(ブリヂストン)も、あえてピットスタートを選択した。
 
 第5戦のレース中に、彼らだけが、まるで予選を戦う形になった。これならタイヤの内圧を含めて、1発のアタックにだけ合わせることができ、優位だからだ。しかも第6戦でも使わなければならないタイヤを温存することもできる。
 
 クラブマンシリーズでは、そういうドライバーは出てこなかったが、シリーズポイントを含めて結果を求められるプロフェッショナルシリーズは、やはり違ったのだ。

●予選(第5戦決勝)
 ピットスタートの優位性を生かし、第5戦のファステストラップを獲得したのは、青木孝行選手だった。同じ戦略となった佐々木雅弘選手は3位、近藤翼選手は4位となった。
 
 その間に割って入り2位に入ったのは、第5戦の勝者である#369平中克幸選手(GY)。北海道出身の十勝マイスターにとって、段違いの速さを見せるのは、難しくないのかもしれない。ただしタイヤの磨耗の部分では1レースを走ってしまっているので、ハンデは明確に存在すると思われた。
 
 5位には#770山田英二選手(ブリヂストン)、6位に#47蒲生尚弥選手(ブリヂストン)が入った。第5戦の予選ではトップ10に6台を占めたブリヂストン装着勢だったが、第6戦のスターティンググリッドではトップ10に8台が入った。つまりレース中のベストラップは、ライバルよりも優れていたことになる。

 気になる2本のタイヤ交換。ポールポジションの青木孝行選手は、フロント2本を交換した。ステアリングの効きを前提に考えたのだろう。2位の平中克幸選手は真逆で、リヤ2本を交換した。これはトラクション性能を重視した結果である。上位の他の選手は、無難な左側2本にニュータイヤを投入した。

●決勝レース
 少し抑え目な印象だった第5戦と異なり、第6戦は激しいバトルの応酬となった。
スタート直後の1コーナーで、マシン4台が絡む多重クラッシュが発生。

 レースは赤旗中断・再スタートとなる。セーフティカー先導による再スタートが切られ、2周終了時にセーフティカーが離れた。2度目のスタートも青木孝行選手は上手く決め、平中克幸選手との差を拡げようとする。
 
 しかし約1秒あったはずのギャップは、むしろ小さくなっていき、5周目にはついに2台が横に並ぶようになっていく。そして6周目、平中克幸選手がオーバーテイクに成功した、が、3位に付けていた佐々木雅弘選手が瞬間的にペースの落ちた2台をまとめて抜き去り、トップに立った。
 
 逆に青木孝幸選手は近藤翼選手にも抜かれ、4位へとポジションを落してしまった。ピタリと背後に付けプレッシャーをかけ続ける平中克幸選手と、それを留めようとするチャンピオン佐々木雅弘選手の攻防は緊迫したものだった。
 
 しかしコースを知り尽くした十勝マイスターは、彼にだけ見えるいくつものオーバーテイクポイントで勝負をかける。10周目の2コーナーでクリーンにトップに立つと、そのまま14周のレースを走り切った。
 
 平中克幸選手は地元で2連勝、2位にはペナルティ明けの佐々木雅弘選手が入り、3位は近藤翼選手が手にした。ブリヂストン装着勢はトップ10のうち7台を占め、その高性能ぶりを示すことができたと言えるだろう。

●コメント
2位を獲得した#1佐々木雅弘選手(ブリヂストン)のコメント。
「最高の2位を獲得できたと思います。この週末はペナルティやいろいろなことがあったわけですが、そういった状況の中でも2位を獲得できたのは良かったと思います」

「タイヤのパフォーマンスもまったく問題なく、最後までしっかりレースをすることができました」

「ただ優勝した平中選手は十勝が地元ということで、良くコースを知っているんでしょうね。ドライバーの差が出たと思います。次の富士スピードウェイや、その次のSUGOは逆にボクのホームコースなので、やり返したいと思います」

2017 TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Race [Clubman Series] 第5戦

予選から不運が続いた菱井將文 それでも見事に3位を獲得
開催場所:十勝インターナショナルスピードウェイ
開催日:2017年07月29日(土)~2017年07月29日(土)

 昨年、熊本地震の影響で開催が中止された第5戦オートポリスの代替として、十勝スピードウェイでワンデーレースの2連戦が行われた。
 
 大量のシリーズポイント獲得の可能性があることもあって、遠隔地であるというハンデを超えて、エントリー台数が大きく増えた。今シーズンは当初から十勝スピードウェイで2連戦が設定された。
 
 TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Race 第5戦は、2連戦の第1レースということになる。ただしこの2連戦は変則的な構成になっていて、予選は1回のみで第5戦のスターティンググリッドが決まる。続く第6戦のスターティンググリッドは、第5戦のレース中のベストラップのタイム順で決まる、という形だ。

 それだけにドライバーはシンプルに戦うだけでなく、第6戦を見据えた戦略が求められることになった。

●予選
 シーズン開幕当初のマシン不調を解消してきた#75手塚祐弥選手(ブリヂストン)が先頭でコースインすると、1分37秒735をマーク。これは予想されていたポールポジションタイムに近いもの。
 
 しかし、その直後に#500小野田貴俊選手(YH)が、1分37秒602でトップタイムを奪う。続いてアタックに入った#38神谷裕幸選手(YH)、#84橋本洋平選手(ブリヂストン)、#771菱井將文選手(ブリヂストン)も、10分の1秒以下に迫るものの、小野田貴俊選手を超えることができない。
 
 その小野田貴俊選手は2度目のタイムアタックでさらにタイムアップ。しかし神谷裕幸選手が全てのセクターでベストタイムを叩き出し、小野田選手を100分の3秒上回り、見事に2戦連続のポールポジションを獲得。
 
 3位に橋本洋平選手、4位に菱井將文選手、5位に手塚祐弥選手という結果となった。実は徐々にタイムアップしていた菱井將文選手だったが、そのアタック中に他車のコースアウトによって赤旗中断という不運もあった。

●決勝レース
 スタートではポールポジションの神谷裕幸選手が好スタートを決め、それに予選3位の橋本洋平選手が続いた。
 
 予選2位の小野田貴俊選手はやや遅れ、予選4位の菱井將文選手はそれに詰まる形で、後続のマシンに左右から挟まれる形で1コーナーへ。結果としてそこで7位にまでポジションを落してしまう。

 逆に4位へとポジションを上げたのが手塚祐弥選手で、明らかにペースは速く、橋本洋平選手との激しい3位争いとなった。6周目、第3コーナーの進入で2台は接触し、橋本洋平選手はスピンしてコースアウト、コース復帰したもののリタイヤとなった。
 
 トップ争いを繰り広げていた2台は、少しずつ神谷裕幸選手かリードを拡げていく展開。結局神谷裕之選手が2戦連続でポール・トゥ・フィニッシュを達成した。
 
 手塚祐弥選手は3位でフィニッシュしたものの、橋本洋平選手との接触により30秒加算のペナルティを受け、11位。替わって3位には、少しずつポジションを取り戻していた菱井將文選手が入った。

●コメント
3位となった#771菱井將文選手(ブリヂストン)のコメント。
「スタートで前のマシンが出遅れて、それに付き合わされたので、1コーナーは左右でサンドイッチにされてしまったんですよ。それで5位にポジションを落してしまいました。そのスタートがなければ、タイヤのタレも少なかったので、前のマシンを追いかけることはできたと思います」

「ファステストを狙っていたんですが、残念ながら明日は5番手スタートなんで、ちょっと苦しいかなと思いますが、がんばります」

2017 TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Race [Clubman Series] 第6戦

手塚祐弥がポール・トゥ・ウィンで完全復活

開催場所:十勝インターナショナルスピードウェイ
開催日:2017年07月30日(日)~2017年07月30日(日)

 前日に行われた第5戦、#38神谷裕幸選手(YH)が2戦連続となるポール・トゥ・フィニッシュを決め、その速さを見せつけた。
 
 しかしハイレベルなドライバーたちがシビアなレースを繰り広げているのはプロフェッショナルシリーズも、クラブマンシリーズも変わらない。わずかな差が速さを生み、ドライバーたちの勢力図が入れ代わっていく。

 この第6戦は、いくつかの特別なルールが設定された。まず予選は行われず、第5戦の決勝レースでのベストラップのタイム順でスターティンググリッドが決まる。そして通常1レース4本が使えるタイヤは、この2レースについては合計6本の使用が許される。

 ベストラップは通常、決勝レースの2~3周目に記録される。その時に前車との距離があればいいが、詰まっているとタイムが出せない。しかし、あくまでもレースだから、前車との距離を開ければ、オーバーテイクが難しくなり、順位を上げることができない。
 
 6本というタイヤの数は1セット+2本なので、第5戦で使ったセットに対して2本交換することができる。その2本をどのように使うのか? その戦略も第6戦の注目ポイントとなっていた。

●予選
 第5戦のファステストラップを記録して第6戦のポールポジションを獲得したのは、#75手塚祐弥選手(ブリヂストン)。前車とのスペースが開いていたこともあり、意識して、しっかりとタイムを出してきた。
 
 それに次ぐタイムは#500小野田貴俊選手(YH)で2番グリッド、4番手となった神谷裕幸選手とのバトルを展開しながらマークしている。以下3番手に#84橋本洋平選手(ブリヂストン)、5番手から#771菱井將文(ブリヂストン)と、上位入賞者が並んだ形になった。
 
 2本のタイヤ交換については、ほとんどのドライバーは左側2本を選択してきた。これは右回りの十勝スピードウェイでは左側のタイヤに大きな負担がかかるためで、常識的な戦略ということがいえる。

●決勝レース
 スタートから安定した速さを見せたのは、手塚祐弥選手だった。ベテラン小野田貴俊選手を上手く押さえ込みながら、少しずつリードを拡げていく。そして前日の勝者、神谷裕幸選手もまた3位へとポジションを上げ、2人を追う形になったものの、橋本洋平選手と菱井將文選手がぴったりと背後に付く。
 
 そして2周目、混戦の3台が激しい攻防を繰り広げた結果、3位に菱井將文選手、4位橋本洋平選手、そして神谷裕幸選手は5位へと後退した。
 
 セカンドグループのバトルによって、トップ2台は連なるように抜け出す。そんななかで4周目、橋本洋平選手が駆動系のトラブルによってリタイヤとなった。

 手塚祐弥選手がほんの少しずつ小野田貴俊選手を引き離していたが、5周目にその差は一気に拡がる。タイヤのグリップダウンに苦しみ、小野田貴俊選手は1周で約1秒ずつ遅れはじめ、そこへセカンドグループが追いついてきた。9周目に菱井將文選手に、10周目には神谷裕幸選手にも抜かれ、4位へ。
 
 結局、10周目には5秒近いリードを手に入れた手塚祐弥選手は、独走体制でチェッカーフラッグを受け、今シーズン初優勝を初のポール・トゥ・フィニッシュで飾ることになった

●コメント
 優勝した#75手塚祐弥選手(ブリヂストン)のコメント。
「昨日の第5戦のファステストを取ったことで、ポールポジションからスタートできました。オーバーテイクが難しいコースなので、有利でしたね」

「じつは第3戦富士スピードウェイが終わってから、タイヤのマネージメントのことについて、いろいろと勉強してきたんですよ。どうしてもタイヤへの負担が大きくなってしまうので、それを改善できないだろうか? それでいろいろと試してみて、クルマのセッティングからドライビングスタイルまで見直したのが、今回のレースで生きたと思います」

「レースは14周でしたけど、20周くらいまでは十分に使えると思います。自分としてもレベルアップできて、やっとPOTENZA RE-71Rを使いこなせるようになったと思うので、これからの後半戦もしっかり勝っていきたいと思います」