モンスターエナジー・NASCARカップ・シリーズ第20戦インディアナポリス
カイル・ブッシュとトゥルーエクス・Jr.がクラッシュ!
ケンゼスが5位、スアレツ7位
モータースポーツの聖地のひとつ、インディアナポリスで行われた「ブリックヤード400」では、過去2連勝中のカイル・ブッシュがレースの半分以上で首位を走行し、レースを支配したが、2位で追い続けたマーティン・トゥルーエクス・Jr.と接触し2台はクラッシュ。
マット・ケンゼスが5位でフィニッシュした。エクスフィニティ・シリーズでもカイル・ブッシュとエリック・ジョーンズが首位を争ったが、終盤タイヤトラブルに見舞われ後退。トップ10フィニッシュを逃すこととなった。
水曜日夜にシリーズ唯一のダート戦が行われたトラック・シリーズでは、マット・クラフトンが自身初のダート勝利を挙げた。
Monster Energy NASCAR CUP SERIES
第20戦 Brantley Gilbert Big Machine Brickyard 400
開催日:7月23日
カイル・ブッシュとトゥルーエクス・Jr.がクラッシュ!
ケンゼスが5位、スアレツ7位
7月23日(日)、アメリカ中部インディアナ州インディアナポリスのインディアナポリス・モーター・スピードウェイでモンスターエナジー・NASCARカップ・シリーズ第20戦「Brantley Gilbert Big Machine Brickyard 400」が開催された。
インティアナポリスはスポーツイベントとして世界最多観客数を誇る「インディ500」の開催地でもあるモータースポーツの聖地のひとつ。NASCARの開催は1994年からと比較的最近だが、元々の路面がレンガ敷きで、今もスタート/フィニッシュラインにレンガ敷きが残るインディアナポリスの愛称である「ブリックヤード」を冠した「Brickyard 400」として定着している。
このインディアナポリス戦ではカイル・ブッシュが2015年、2016年と2連勝中。それもエクスフィニティ・シリーズと両方2年連続勝利。
カイル・ブッシュはトヨタ移籍以前も含めたインディアナポリスでの通算成績でも、過去12戦出走で10回のトップ10フィニッシュ、2位2回と非常に得意としている。今季ランキングは3位ながら未勝利のカイル・ブッシュの初勝利に期待がかかった。
22日(土)に行われた予選では、そのカイル・ブッシュが今季4度目となるポールポジションを獲得。デニー・ハムリンが5番手、マーティン・トゥルーエクス・Jr.が6番手、ルーキーのエリック・ジョーンズが9番手、マット・ケンゼスが14番手、ルーキーのダニエル・スアレツが15番手から決勝をスタートすることとなった。
午後2時46分に2.5マイルオーバルを50周、50周、60周の3ステージ合計160周(400マイル:約640km)して競われる決勝レースがスタート。ポールポジションのカイル・ブッシュが序盤から独走し、6番手スタートのトゥルーエクス・Jr.が追い上げて2位に浮上した。
9周目にトラブル車両によるイエローコーションが出されたが、その直後に雷雨の恐れがあるとしてレースは赤旗中断。その後雨が降り始めたため、止むのを待ち、コースを乾燥させるために1時間50分弱の中断を経てレースは再開。
ふたたびカイル・ブッシュが首位を逃げ、トゥルーエクス・Jr.が2位で追う展開に。その後方では他のトヨタ・カムリ勢も順位を上げてきていたが、ハムリンは30周目のコンペティション・コーション(主催者によって予定され出されるコーション)時のピットで他車と接触。ダメージを負ったボディパーツの修復のために最後尾近くまで順位を落としてしまった。
ステージ1はカイル・ブッシュがトップフィニッシュ。トゥルーエクス・Jr.が2位。ケンゼスが6位に入った。
ステージ2も前半はカイル・ブッシュとトゥルーエクス・Jr.のワン・ツー。中盤に短い間隔でイエローコーションが出され、ピット戦略が分かれるなか、コースに残る判断をしたエリック・ジョーンズが首位に浮上。ハムリンもここでコース上に残り、上位に復帰した。
ピットインにより一旦後退したカイル・ブッシュとトゥルーエクス・Jr.は交換したタイヤの優位性を活かしポジションアップ。3ワイドの激しいバトルをすり抜け、86周目には首位を奪還。
ステージ2もカイル・ブッシュが制し、今季7度目のステージウィンを挙げた。トゥルーエクス・Jr.が2位、エリック・ジョーンズが4位、ケンゼスが6位、ハムリンが7位と、トヨタ・カムリは5台がトップ10入り。
ステージ3もカイル・ブッシュとトゥルーエクス・Jr.の首位争いになるかと思われたが、111周目の再スタートが切られた直後、サイド・バイ・サイドでのバトル中に、イン側のトゥルーエクス・Jr.がバランスを崩しアウト側のカイル・ブッシュに接触。
2台は壁に激しくクラッシュし、トゥルーエクス・Jr.の車両からは出火するアクシデントとなった。幸いにもドライバーは共に無事だったが、レースの大半を支配していたカイル・ブッシュとトゥルーエクス・Jr.はここでレースを終えることとなってしまった。
これで首位に立ったのはケンゼス。ハムリンも3位へと浮上し、終盤戦へ。レースが残り30周を切るあたりから、最後まで走りきれる距離になるため、ケンゼス、ハムリンらを含む上位勢はグリーンフラッグ下でピットへ向かったが、何台かが燃料を徹底的にセーブして最後まで走り切ろうとする作戦に。
ケンゼス、ハムリンらはペースを落とした上位勢に対し、1周当たり1秒から2秒近く上回るペースで猛烈に追い上げ、チェッカー前には追いつくかと思われた。
しかし、残り10周というところで、エリック・ジョーンズを巻き込む多重クラッシュが発生。ドライバーは無事だったが、コース清掃のために20分間の赤旗中断。
レース再開後も立て続けにアクシデントが発生する荒れた展開となり、レースは最後の2周スプリント“オーバータイム”で決されることとなった。
163周目に再スタートが切られたが、2列目4番手にいたハムリンを含む数台が、再スタート直後のもみ合いの中で接触、その中の1台がスピンを喫したため、密集状態で加速していた後続が大混乱に。8台を巻き込む多重クラッシュとなり、レースはこの日3度目の赤旗中断となってしまった。
レースはハムリン3位、ケンゼス5位、スアレツ7位で2度目のオーバータイム・アテンプトとして166周目に再スタート。ハムリンは先の接触でボディがタイヤに接触していたのか、白煙を発しながらの走行となった。
ファイナルラップに入ったバックストレートで、ややペースの落ちたハムリンに後続が接触し、ハムリンがスピン。これに後続が追突し、多重クラッシュに。ファイナルラップに入っていたため、レースはこの時点で順位が凍結され、イエローコーションのままチェッカーとなった。
ケンゼスが5位、スアレツがルーキー最上位の7位に入り、今季6度目のトップ10フィニッシュを果たした。
次戦第21戦は7月30日(日)、アメリカ東部ペンシルバニア州ロングポンドのポコノ・レースウェイで行われる。
ドライバー マット・ケンゼス
「多くのクラッシュが発生し、クレイジーなレースだった。我々のトヨタ・カムリは好調で、3番手(18号車と78号車の次)の速さを持っていたと思う。そしてその2台がクラッシュしたので、私が勝てると思ったし、グリーンフラッグのままレースが終わればそうなるはずだった」
「しかし、コーションが立て続けに出てしまい、私は再スタートで前走車に詰まってしまったので、勝ったのは私では無かった。全体的に見れば悪い一日では無かったが、もっと上でのフィニッシュができるはずだった」
NASCAR XFINITY SERIES
第18戦 Lilly Diabetes 250
開催日:7月22日
トヨタ・カムリ勢、首位を争うも
タイヤ不調でトップ10フィニッシュならず
7月22日(土)にNASCARエクスフィニティ・シリーズの第18戦「Lilly Diabetes 250」がインディアナポリス・モーター・スピードウェイで開催された。
この週末はカップ・シリーズとエクスフィニティ・シリーズがインディアナポリスで開催されたが、今季、エクスフィニティ・シリーズにのみ、インディ戦での新た規則変更が加えられた。
フロントバンパーの開口部拡大やスプリッターサイズの変更など空力に関する変更もあるが、最大の変更点は、リストリクター・プレートという吸気量を制限するパーツの装着である。
NASCARでは、カップ、エクスフィニティ、トラック全て、超高速ロングオーバルのデイトナとタラデガではリストリクタープレートの装着が義務づけられている。
しかし、インディアナポリスはデイトナと同じ1周2.5マイルながら、バンク角が浅く、直線を4つの直角コーナーで結んだようなレイアウトということもあり、通常レギュレーションで戦われてきた。
今回のエクスフィニティでは、更なるドラフティング(数台が連なって空気抵抗を低減する)やその後の追い抜きを増やそうという試みで規則が変更された。
午後3時50分に2.5マイルオーバルを30周、30周、40周の3ステージ合計100周(250マイル:約400km)して競われる決勝レースがスタート。カイル・ブッシュは11番手からみるみるうちに順位を上げ、15周目に出されたコンペティション・コーション時には2位へ浮上。
一方、2番手スタートから上位を争っていたエリック・ジョーンズは、このコンペティション・コーション時のピットで他車と接触しスピン。32位へと後退。
再スタートでカイル・ブッシュは首位に浮上、その後も首位争いを繰り広げ、ステージ1を2位でフィニッシュ。マット・ティフトが10位。エリック・ジョーンズは追い上げ12位でステージ1を終えた。
ステージ2もカイル・ブッシュが首位を争い、エリック・ジョーンズはトップ10圏内へ。一方、ティフトはステージスタート前のピット時に作業者のペナルティを受け20位以下へと後退。
カイル・ブッシュとエリック・ジョーンズはステージ2の終了間際にグリーンフラッグ下でピットイン。ステージ2終了時の順位は落としたが、その後ピットインせず、ステージ3は1-2体勢での再スタートとなった。
その後もカイル・ブッシュとエリック・ジョーンズは首位争いを繰り広げたが、終盤、チームはタイヤの異常摩耗によるトラブルを防ぐべく、タイヤ交換のためグリーンフラッグ下でピットイン。ここでエリック・ジョーンズはピット作業トラブルでペナルティを受け、さらに後退。
トヨタ勢はタイヤのトラブルを心配してピットインしたが、そのまま走り続けた上位勢がトップ10でフィニッシュ。トヨタ勢はティフトが11位、カイル・ブッシュが12位に終わった。
次戦第19戦は7月29日(土)、アメリカ中部アイオワ州ニュートンのアイオワ・スピードウェイで行われる。
ドライバー マット・ティフト
「我々のカムリは本当に好調だった。ピットロードペナルティを受けて後退したが、ステージ2スタート前のピット作戦で有利なポジションに戻ろうとした」
「しかし、ピットアウト直後のコーション走行中だというのに激しい振動に見舞われ、再度ピットインせざるを得ず、そのためにドラフティングの集団から離れて上位争いから脱落してしまった。うまく行けば勝ちも狙えただけに残念だ」
NASCAR CAMPING WORLD TRUCK SERIES
第11戦 Eldora Dirt Derby 150
開催日:7月19日
マット・クラフトンがダート戦を初制覇
NASCARキャンピング・ワールド・トラック・シリーズ第11戦「Eldora Dirt Derby 150」が7月19日(水)にアメリカ北部オハイオ州ロスバーグのダートオーバル、エルドラ・スピードウェイで開催された。
アメリカではダートオーバルで行われるレースも盛んであり、全国的なシリーズ戦の他、各地でローカルレースも数多く開催されるなど親しみのあるレースである。
NASCARも60年代まではダートレースが行われていたが、舗装化が進み、70年を最後にトップシリーズでのダートレースは行われていなかった。
2013年にトラック・シリーズで久しぶりのダートレースが復活。以来、夏の夜のイベントとして人気を博し、今年が5度目の開催となる。
2015年には、今季シリーズ最多の3勝を挙げているクリストファー・ベルがデビュー3戦目にして自身初勝利を挙げたコースでもある。NASCARはダートオーバル上がりのドライバーも多いが、今大会はその他、ダートオーバルシリーズのチャンピオンなどダート・スペシャリストも多くスポット参戦した。
ダートレースということもあり、通常とは異なるフォーマットでレースは実施。1台ずつの予選のあと、予選結果によって5グループに分けた予選ヒートレース(各10周:上位5台が決勝進出)とラストチャンスレースを行って、決勝レースのグリッドと出場車両を決定。
予選ヒート2を制したクラフトンが2番手、ヒート4を制したベルが4番手グリッドにつけた。
19日(水)午後9時50分、0.5マイルダートオーバルを40周、50周、60周の3ステージ合計150周(75マイル:約120km)して競われる決勝レースが、このレース独特の4ワイド隊列でのパレードラップの後にスタート。各車土煙を上げ、タイヤをスライドさせながらの激戦が展開された。
ステージ1の終盤、残り7周での再スタートでは、2位のベルと3位のクラフトンが首位争いを展開。イン側のクラフトンが首位に立ち、アウトのベルは前車をパスしようと狙ったが、痛恨のスピン。そこに後続が突っ込み、車両にダメージを追ってしまった。
このアクシデントにより出されたイエローコーションままステージ1は終了。クラフトンがステージウィン、ライアン・トゥルーエクスが7位、グラント・エンフィンジャーが8位に入った。
ベルはステージ1のクラッシュで23位まで後退していたが、ステージ2で見事な追い上げを見せ、トヨタ勢最上位の4位フィニッシュ。グラント・エンフィンジャーが6位、今季初出場でダートオーバルチャンピオンであるリコ・アブリューが8位、クラフトンが9位に入った。
ステージ3では、118周目に好走を見せていたアブリューが壁にヒットしリタイア。首位争いを展開していたベルは、残り25周で右前タイヤのパンクに見舞われ後退。
残り19周でリスタートが切られると、クラフトンが首位へ浮上。クラフトンはそのまま逃げ切り、昨年の第6戦以来27戦ぶりの勝利、自身にとっては初のダートレースでの勝利を飾った。エンフィンジャーが4位、19歳になったばかりのノア・グラッグソンが7位、ベルが9位でトップ10フィニッシュを果たした。
次戦第12戦は7月29日(土)にポコノ・レースウェイで開催される。
ドライバー マット・クラフトン
「私にとって初めてのダートレースでの勝利で、本当に楽しかった。このレースのために、他のダートレースに幾つか参加し、ライン取りなど多くを学んだ。正直なところ、それまではまったく経験が無く、これからも学び続けなくてはならないと思っている」
「レース序盤は好調で、ステージ1で勝つことができた。ステージ2へむけ若干セッティングを変えたのだが、裏目に出てポジションを落とすこととなり、追い上げなくてはならなかった」
「リコ(・アブリュー)とクリストファー(・ベル)がアウト側ギリギリを走っていたが、正直私には彼らのようなを走りはできなかった。彼らの走りは文句なく素晴らしいショーだった。それでも最後はイン側のラインでアドバンテージを得られて、勝つことができた。本当に嬉しい」