学生の頃、夜な夜なニッポン放送の「オールナイトニッポン」を聴いていた。今ならスマホなりパソコンなりで時間を潰せるけど、僕が中学生の頃はまだ2000年になるかならないかで、こういったものはそこまで普及していなかった。
夜中って笑いの沸点が低くなっているので、結構しようもないことで笑ってしまう。しかも当時の僕は10代前半。リスナーの投稿を読み上げるMCの声で、ゲラゲラ笑っていたものだ。
ご存知のとおり、「オールナイトニッポン」自体は今でも放送され続けている。そして先日の放送回が発端となって、ちょっと面白いテーマがネットで話題になっていた。(文:松本ミゾレ)
「ゲレンデの食堂で広瀬香美の着メロが鳴ると、複数人がポケットに手を入れてた」
7月20日放送の「SUPER BEAVER 渋谷龍太のオールナイトニッポン0(ZERO)」で、ガラケー時代に流行した着メロを使ってのイントロクイズというコーナーが設けられた。
そこで、電話で登場した中学生のリスナーが着メロに触れた経験がないと語ったそうだ。その時の様子が同局のサイトで記事化され、2ちゃんねるでも書き込みが寄せられた。
ちょっとそのスレッドの内容から、印象的な書き込みをいくつか紹介してみたい。
「着うた流す人見なくなったな」
「ゲレンデの食堂で、広瀬香美の着メロが鳴ると、複数人がポケットに手を入れてたあの頃」
「今どきは携帯つうかスマホの着信音ってどうなってんだ?」
「単音から三和音になった時の衝撃はすごかった。カラー液晶になったのもちょうどその頃」
「21年くらい前か。本見て手打ちやで、今の子は知らんやろ」
こういった具合に、着メロをすっかり耳にすることがなくなったと感じている人は多い。また、着メロ全盛期の時代の思い出を語る人(恐らくみんないい歳したおっさん連中)も大勢いた。
電話やメールよりもLINEの通知の方を気にするのが今の時代
考えてみれば、たしかに最近は着メロを聞く機会も減っている。そもそも携帯電話が普及した当初は、着メロなんてほとんどなくて、みんな着信音は初期設定の呼び出し音にしていたものだ。
そのうち、着メロのダウンロードサイトなんかも登場してくる。月額315円とか払って好きな曲の着メロを手に入れる人なんて、結構いた記憶がある。
それから、2000年代前半には着うたも登場し、当時の流行歌の、せいぜいワンフレーズぐらいしか再生できないものをお金を出してダウンロードする人も多かった。
今、着メロも着うたも、往時の勢いはほとんど見えなくなっている。ガラケーが廃れ、スマホが全盛期となっている現在では、携帯というツールの立ち位置も随分変わってしまっている。電話やメールよりも、LINEの通知を気にしているユーザーの方が圧倒的に多いだろう。
いちいち通知のたびに音楽を鳴らすのも、その設定をするのも、なんとなくめんどくさくなったし、メリットも感じられなくなったのではないだろうか。端末だって数年以内に買い換えるので、愛着も湧きにくいだろう。
最初にメールと電話ができるだけのシンプルな機能の携帯電話が普及して、次に「今度は着メロがあるよ~。録音機能もあるよ~。カメラも~……」とどんどん付加価値が増えていったのが、これまでの携帯電話の変遷。
機能が増えた分、使われないものは目立たなくなるし、誰もが使わなくなる。着メロは、消耗が前提の日用品の機能としては不要なもの。ごちゃごちゃした追加機能なんて、本来必要ではない。携帯電話に限らず、日用品は常にシンプルで、万人が使いやすい機能が長く残る。着メロ、着うたはそういった意味で、時代の徒花のような存在だったということだろう。