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FIA F2 ハンガリー:松下信治が今季2勝目、崖っぷちの選手権3位争いで踏み留まる

2017年07月31日 12:12  AUTOSPORT web

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2017年FIA F2第7戦ハンガリー 松下信治が決勝レース2で優勝
崖っぷちからの生還。松下信治はFIA F2第7ラウンドのハンガリーで見事な勝利を挙げ、選手権上位争いに留まってみせた。  

 オーストリア、イギリスとマシンの仕上がりが悪くチーム全体として低迷を余儀なくされたARTと松下だったが、ARTが伝統的に得意としているハンガロリンクでも走り始めの状況はそれほど好転してはいなかった。

 予選8位から、レース1でもアンダーステアに苦しむことになった。

「スタートは特に失敗したわけでもなく普通でしたけど、周りも普通に同じくらい良かったんでオーバーテイクできなくて、そこは僕にとっては“普通”ではなかったですね。オプションタイヤ(ソフト)でスタートしたらマシンバランスがすごくアンダーステアで、そのせいでペースが全く上げられなかったんです」

 しかし早めにプライムのミディアムに換えると光明が見えてきた。

「プライムタイヤに換えてからは調子が良くて、トップ集団と同じペースで走れて(ジョーダン・)キングが遅かったんで抜いて。それからは一人旅でしたけど前のニック(・デ・フリース)にどんどん追い付いていきました。最後はセーフティカーが入ってシャルル(・ルクレール)がすぐ後ろに来てしまったんで、オプションを履いている彼の方が速くて抑えることはできませんでしたけど、でもやっと普通のレースができたという感覚ですね」

 5位でレース1を終えた松下とARTは、ようやく本来の姿を取り戻しつつあった。


 レース1のデータを徹底的に分析してさらにセットアップに手を加えた日曜のレース2では、現在はプレマに移籍してしまった敏腕エンジニア、ギヨーム・カピエットがマシンを仕上げストフェル・バンドーンが圧倒的な速さを見せつけた2015年の頃のフィーリングが戻ってきたという。

「昨日の問題はデータを分析して、今日は気温と路面に合わせてセットアップを変えてきました。それがドンピシャで当たったという感じでしたね。最初はアンダーステアが強かったんで後ろを見ながら走っていたんですけど、全然ついてこなかったんで、『あぁいけるな』って思って。ペースをマネージメントしながら走っていたんで、プッシュしたらもっと速く走ることもできたと思います。デグラデーションも全然なかったですね。少しアンダーステアが強かったですけど、結局のところそれが最後までリアタイヤを守ってくれたんだと思います。今日は2015年の時のクルマみたいでした」

 前日のレース1で“普通の”スタートしかできなかった松下は、レース後にデータを詳細に分析して路面のグリップレベルに合わせてスロットル開度を調整することを見付け出していた。それが功を奏し、4番グリッドから好加速でターン1までに一気にトップに立ったのだ。

「昨日のスタート失敗の原因を分析してスロットルの踏み方とかいろいろやりましたけど、路面のグリップが高いんで今日はもっと踏んだんです。昨日はほんのちょっとのことで上手く行かなかったんですけど、そのおかげで良いスタートが切れて、周りが思ったほど良くなかったこともあって一気に抜けました」

 結果的に、そこから首位を独走して完全勝利。松下は今季2勝目を挙げた。


 レース1で選手権3位のアルテム・マルケロフがリタイアに終わり、レース2でも2ポイントしか獲得できなかった。これでこの週末に25ポイント獲得した松下とランキング3位までの点差は32に縮まった。ランキング3位とはもちろん、スーパーライセンス取得のために必要とされる結果だ。

「今週がすごく大事だったんです。ここでマルケロフとの差が広がってしまったらヤバかったんですけど、結構差を縮められましたからね。首の皮一枚つながった。次のスパもモンツァも同じように後がない状況ですけど、予選を意識しながらレースペースで踏ん張っていけばこういうレースができると思うんで、去年のような失敗をしないようにエンジニアとしっかり話し合って戦いたいと思っています」

 ホンダを取り巻く状況が激変しているだけに日本人F1ドライバー誕生への道筋も不透明になりつつあるが、松下は「来年がどうなろうと今の僕にとって一番大切なのはF2で結果を出すこと。やるべきことをやれればチャンスは必ず来る」と自分のレースに集中している。

 F2のシーズンはF1と同じように夏休みを挟んで3週間後にスパ・フランコルシャンで再開される。