インディカー・シリーズ第13戦ミド・オハイオが始まる直前に、佐藤琢磨に朗報がもたらされた。インディ500日本人初制覇の偉業と、それまでの功績を讃えて内閣総理大臣顕彰が授与されることが、官房長官から発表されたのである。
モータースポーツ界からは初めての受賞となり、琢磨のこれまでの努力と結果が公にも認められたかたちとなり、これ以上のグッドニュースもないだろう。
琢磨自身にとっても大いに励みとなるだろうが、それに伴ってさらに注目を浴びるわけで、ミド・オハイオはそれなりのリザルトを期待されても致し方ない。
ミド・オハイオの事前テストはアンドレッティ・オートスポート勢は参加しなかった。それでもマシンは順調に仕上がっていく。FP1/16番手、FP2/11番手と、チームメイトにやや遅れを取る形だったが、不安そうな表情はなかった。
土曜日になると琢磨のペースも上がり、FP3で2番手となり、トップはチームメイトのロッシ。
「昨日からチームメイトとのデータを比較しながら、セットを変えて来ましたけど、良い方向に進みましたね……」と順調な仕上がりをうかがわせた。
予選になるとQ1、Q2を難なく突破してQ3で3番手のグリッドを手に入れた。デトロイトのポールを除けば、セント・ピータースバーグ以来のファストシックス入りだ。
「気温と路面に合わせてだいぶアジャストしましたけど、ホンダ勢で最速というのはうれしかったですね。オハイオはホンダの地元でもあるし。(グラハム)レイホールが最後のアタックを失敗したからラッキーな部分もありましたけど……」
決勝前のウォームアップでも4番手となり、順調の仕上がりをアピールする琢磨。後は決勝でリザルトを残すだけだった。
決勝レースは、3番手をキープして始まった。後ろからハイペースでレイホールが追い上げる。3度4度とサイド・バイ・サイドとなり場内は大盛り上がり。琢磨もそう簡単に前は譲らなかった。だがマシンの仕上がりはレイホールの方が一枚上だったか、15周目に順位が入れ替わり、琢磨はその翌周にピットインした。
だが、ピットでタイヤの交換に時間がかかりポジションを落として、8番手となる。前を行くエリオ・カストロネベスにも追いつけど、なかなか攻略のチャンスは訪れず、42周目に2度目のピットイン。コースに戻っても再びカストロネベスが立ちはだかった。
琢磨にチャンスが訪れたのは、エド・ジョーンズのスピンでイエローコーションになった後だ。幸いにも3度目のピットインを終えており、トロントの二の舞は避けられたが、イエローが開けるとレッドタイヤの琢磨は猛追を始める。リスタート直後にヒンチクリフ、そしてロッシとかわして5番手に浮上した。
残りは20周を切り、前を行くパジェノーとの差はなかなか詰まらない。レースがほぼこう着したかたちでレースは90周目のチェッカーとなった。トップ5に入ったのはデトロイト以来で、ランキングも7位をキープした。
トロント、そしてミド・オハイオと2連勝したジョセフ・ニューガーデンがランキングのトップに立ち、インディカー・シリーズは乱戦模様になってきた。
「今日はレイホールとバトルしている間にペンスキーの2台に逃げられてしまいましたね。ピットでちょっと時間がかかってしまったのが残念でしたが、最後のペースカー明けには3台抜けましたし、アンドレッティのチーム全体でも良いレースができたと思います。予選3番手からの5位なので手放しでは喜べませんが、バトルをしての5位なので良かったと思います」
このレース後帰国する琢磨は、内閣総理大臣顕彰授与式にのぞむ。
「大変光栄なことですし、たくさんの皆さんが応援してくれたおかげだと思っています。モータースポーツ界にとっても初めてですし、他のメジャーなスポーツと同じ評価をしていただけたので、本当にうれしいですね。日本に戻るのが楽しみです」
授与式は8月4日に首相官邸で行われる予定だ。