2017年07月31日 10:34 弁護士ドットコム
総務省とチケット販売大手のぴあが、チケット転売防止のために、2018年にも、マイナンバーカードの認証機能でチケット購入者を特定して、本人のみ入場を認める仕組みを稼働させることが日本経済新聞に報じられた。
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このシステムでは、コンビニなどでチケットを購入する際に、マイナンバーカードをかざして、個人情報を登録する。当日、入場の際に、カードで認証できれば入場できる。これによって、転売ができなくなる。総務省とぴあは年内にも実証実験を始めるという。
なかなか浸透しきれないマイナンバーカードだが、認証の仕組みとして、どのような活用が想定されているのか。また、マイナンバーの活用と、マイナンバーカードの活用は似て非なるものなのか。水町雅子弁護士に聞いた。
マイナンバーカードは、実は、「マイナンバー」とは全く関係のない場面でも使えます。主な用途は、(1)自分のマイナンバーを証明する手段、(2)運転免許証のような身分証明書、(3)電子的な本人確認の3つです。
わかりにくいですが、マイナンバーを使うのは(1)だけで、(2)(3)ではマイナンバーは使いません。(1)は会社等に自分のマイナンバーを届け出る際、(2)は銀行の口座開設の際等で、今回のチケット購入は(3)です。
(3)電子的な本人確認とは、これは平たくいうと、ユーザIDとパスワードでログインして使っているようなサービスを、マイナンバーカードとパスワードで使うようなイメージです。ユーザIDとパスワードよりも、他人になりすまされるリスクが低く、安全な方法だと言われています。チケット購入のほかにも、ネットオークション、オンラインバンキング、オンライントレード、ネットでの行政手続などでの利用が考えられています。
よくニュースに取り上げられる話題としては、マイナンバーの活用よりも、マイナンバーカードの活用の方が多く、特に(3)電子的な本人確認としての活用が多いです。軽減税率やカジノ入館にマイナンバーカードが検討されたことがありましたが、それも(3)電子的な本人確認として利用です。スーパーのレジやカジノの入り口でお客さんがマイナンバーカードをピッとかざしてパスワードを打てば、ユーザIDとパスワードを入力したり、会員カードを提示して店員さんにバーコードを読み取ってもらうよりも、なりすましリスクが低くなります。
これに対して、マイナンバーの活用は、カードなしでも可能です。例えば、マイナンバーを不動産登記や銀行口座に付番すれば、脱税の調査等の際に、マイナンバー〇番の人はどのような不動産を所有しているのか、どの銀行の何支店に口座を開設しているのかを把握しやすくなります。また、不正是正にとどまらず、マイナンバーを活用することで、国民目線に立った行政サービスの向上や行政の無駄の排除等も可能です。
このように、マイナンバーの活用とマイナンバーカードの活用は基本的には切り分けて考える必要がありますが、これが大変わかりにくく、政府がマイナンバーカードを普及させようと考えるならば、まずこれを十分にわかりやすく説明し、このことが多くの国民の間で定着することが必要でしょう。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
水町 雅子(みずまち・まさこ)弁護士
内閣官房にて、マイナンバー制度の立案、マイナンバー法案の立法作業、指針・ガイドライン案等の作成を担当。マイナンバー・個人情報に関する著書・論文等多数。日本経済新聞社、2015年企業が選ぶ弁護士ランキング情報管理分野第5位。弁護士登録前にシンクタンクでSE、ITコンサル等を経た経験から、マイナンバー、個人情報以外にも、ITシステム開発紛争等をはじめとするIT法を専門とする。その他、企業法務、行政法務全般を扱う。ITをめぐる法律問題についてブログを執筆している(http://d.hatena.ne.jp/cyberlawissues/)。
事務所名:宮内・水町IT法律事務所
事務所URL:http://www.miyauchi-law.com/