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『コード・ブルー』夏ドラマ視聴率トップへ 成功の理由は“月9”と“プロデューサー”の底力

2017年07月31日 06:03  リアルサウンド

リアルサウンド

 『コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命』(フジテレビ系)が絶好調だ。「月9放送30周年」の今年、『突然ですが、明日結婚します』が過去ワーストの平均視聴率6.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)に終わったほか、ラブストーリーを捨てて必勝を期した『貴族探偵』も8.8%(同)に留まる中、2週連続の15%超え(同)にフジテレビは沸いている。


参考:山下智久と新垣結衣、ついに恋愛関係に?


 「これだけのキャストをそろえたのだから当然」「しょせん過去の遺産」なんて意地悪な声もあるが、何より第3弾を実現させられたのは、フジテレビと月9の底力にほかならない。


 なかでも、2008年の第1弾から9年が過ぎた今、主演級の俳優となった5人をそろえられたプロデューサー・増本淳の力は、もっと称えられていいだろう。近年の出演作品も所属事務所も五人五様であり、山下智久と戸田恵梨香が前期連ドラに主要キャストで出演していたなどスケジュール調整の難しさも含め、「成功の半分はプロデューサーの仕事で勝ち取ったのではないか」とすら思わせる。


 増本は入社2年目で『救命病棟24時』(フジテレビ系)第2シリーズにADとして参加したのち、第3シリーズやスペシャルドラマでプロデューサーを務めた経歴を持つ。さらにその後、『Dr.コトー診療所』(ある意味、救命)、『コード・ブルー』を手がけるなど、緊迫感あふれる世界観の構築に長けた「救命ドラマのスペシャリスト」なのだ。


■脚本家と若手俳優を発掘・育成する月9


 今シリーズから脚本家が林宏司から安達奈緒子に変わっているが、増本はこれまで『大切なことはすべて君が教えてくれた』『リッチマン、プアウーマン』『Oh,My Dad!!』の3作に渡って安達と仕事をしてきた。


 そんなこれ以上ない増本と安達の関係性が『コード・ブルー』を医療中心の物語から、主要キャスト5人のキャリアやプライベートを含めた医療群像劇に変えたと言ってもいいだろう。藍沢耕作(山下智久)、白石恵(新垣結衣)、緋山美帆子(戸田恵梨香)、冴島はるか(比嘉愛未)、藤川一男(浅利陽介)の5人は、脚本家の変更によってそれぞれのキャラが際立ち、魅力を増している印象すらある。


 そもそも安達奈緒子は、2003年の『第15回フジテレビヤングシナリオ大賞』受賞者。昨年『重版出来!』『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)で脚光を浴びた第22回受賞者の野木亜紀子から、今年『カルテット』(TBS系)で熱狂的な支持を集めた第1回受賞者の坂元裕二まで、「自ら脚本家を発掘・育成できる」のもフジテレビの底力だ。


 発掘・育成しているのは脚本家だけではない。『コード・ブルー』の新シリーズでは、成田凌、新木優子、有岡大貴、馬場ふみかの若手俳優4人がキャスティングされ、フェローや看護師という役柄と俳優本人の成長をリンクして楽しむことができる。このような若手俳優の大量抜てきは、1980年代から三上博史、吉田栄作、織田裕二、江口洋介らを起用してきた月9の伝統と言えるだろう。


 特に『大貧乏』『人は見た目が100パーセント』に続く3期連続のフジ連ドラ出演となる成田凌、『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』から2期連続のフジ連ドラ出演となる新木優子は、前作、前々作から見事な変わり身を見せ、主演俳優への階段を着実にあがっている様子がうかがえる。


■恋愛モードとフェローの扱いに不安


 もちろん諸手を挙げて絶賛するだけでなく、不安もある。安達は過去作の大半で恋愛要素を強く入れていただけに、「『コード・ブルー』にもそのムードを持ち込むのではないか」と勘ぐりたくなるのだ。


 実際、第1話のラストに、藍沢が救命に戻ってきた理由を「救命にはお前がいる。お前は面白い」と白石に告げるシーンがあった。意味深なラストシーンを見た視聴者は、すでに恋愛モードの導入に賛否両論の声をあげている。増本プロデューサーがいる限り、医療ドラマとしてのバランスを崩すことはないだろうが、デリケートな要素であることは間違いない。


 もう1つの不安は、「新たなフェローたちの成長をきちんと描き切れるのか?」ということ。前シリーズからのメイン5人、橘啓輔(椎名桔平)と三井環奈(りょう)夫妻、藍沢のライバル・新海広紀(安藤政信)の物語を描く必要があり、これだけで飽和状態に近い。フェローが「単に仕事ができないだけ」のお飾り的な存在になってしまわないか、緻密かつ濃縮された脚本が求められそうだ。


 『コード・ブルー』は、月9放送30周年の底力を存分に生かした作品に仕上がっているだけに、最後まで夏ドラマのトップを走り続けるだろう。それと同時に、「この底力を次の作品でも発揮するためにどうしたらいいのか」を考える秋以降の戦いもすでにはじまっている。(木村隆志)