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退職金トラブル? 妻と娘が夫の死体遺棄容疑…それでも「夫の退職金」を相続できるか

2017年07月30日 11:23  弁護士ドットコム

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横浜市のマンションから一部白骨化した男性の遺体が見つかった事件。遺体は住人男性(63)と見られるが、死因はまだ分かっていない。死体遺棄容疑で、妻(60)、長女(34)、次女(29)が7月15日に現行犯逮捕されている。


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報道によると、この一家では夫の退職金をめぐってトラブルになっていたようで、娘に羽交い締めにされたり、妻に暴力をふるわれたりしたりと、警察沙汰になることもあったそうだ。


退職金は通常、誰のものになるのだろうか。また、仮にこのまま起訴され、有罪になった場合、退職金は誰のものになるのだろうか。田中真由美弁護士に聞いた。


●死体遺棄なら相続人の資格は奪われない

――退職金は家族と共有しなくてはいけない?


退職金は就労の対価の意味を持ちますので、どのように使うかは受領した本人の自由です。もっとも、同居している家族がいる場合、家計に組み入れるのが通常でしょう。


――離婚の場合は?


これから離婚する場合には、妻に対する財産分与の対象になります。ただし、離婚して2年以上経過して退職金を手にした場合には、妻、子どもには分配はありません。


――夫が亡くなった場合はどうだろうか。今回、家族が死体遺棄で逮捕されているが、もし有罪になっても財産を相続できる?


相続に関して不正な利益を得ようとして、不正な行為をなしたり、しようとしたりした者については、法律上当然に相続人の資格が奪われます(相続欠格、民法891条)。


たとえば、妻や子が夫を殺害した場合は、「故意に被相続人を殺して刑に処せられた者(同条1号)」として、相続欠格に該当します。一方、今回疑われている、死体遺棄の場合は、相続欠格に該当しないので、相続により夫の財産を受け取ることができます。


――家族に相続の資格がなくなった場合、財産は誰のものになる?


妻や子どもの相続資格が剥奪された場合には、夫の親など次順位の相続人が相続します。相続人がいない場合には、相続財産管理人が選任されて、清算手続きを行い、最終的には残余の財産は「国庫」に帰属することになります(民法959条前段)。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
田中 真由美(たなか・まゆみ)弁護士
あおば法律事務所共同代表弁護士。熊本県弁護士会所属。「親しみやすい町医者のような弁護士でありたい」がモットー。熊本県弁護士会子どもの人権委員会、両性の平等に関する委員会所属。得意分野は離婚、家事全般、債務、刑事事件、少年事件。
事務所名:あおば法律事務所
事務所URL:http://www.aoba-kumamoto.jp/