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長瀬智也の色気と坂口健太郎の爽やかさ 『ごめん、愛してる』正反対の演技の魅力

2017年07月30日 11:12  リアルサウンド

リアルサウンド

 純愛ドラマへの出演は約20年ぶりとなる長瀬智也がみせる男臭さと大人の色気が話題になっている『ごめん、愛してる』。オリジナルの韓国ドラマは2004年に放送され、韓国では「冬のソナタ」よりもヒットしたというが、どこか懐かしく、正反対の男の間で揺れ動くヒロイン気分を存分に味わえるのが本作の魅力だろう。


参考:吉岡里帆、子守唄で長瀬智也の心を溶かす 『ごめん、愛してる』キスシーンの衝撃


 幼い頃に母に捨てられ、愛されることを知らず裏社会に生きてきた長瀬演じる律がやっと探し出した実母(大竹しのぶ)は息子のサトル(坂口健太郎)を溺愛し、サトルはアイドル・ピアニストとして屈託なく生きていた。


 実の母から「ろくな育ち方をしていない野良犬のよう」「もし、サトルに何かあったら身を挺して守って」と言われる不憫な律。拠り所となる家族にも恵まれず、何も持たずに生きてきた律は、生まれたときから母のあふれる愛の中で育った裕福なサトルのボディガードとして雇われたものの、一線を超えた自己犠牲まで強いられている。


 そんな不幸な境遇にありながら優しさを持ち合わせる律に少しずつ心を開いてきた凛華(吉岡里帆)が第3話の印象的なキスから第4話にかけて急接近。しかし、凛華は幼なじみのサトルが自由奔放なサックス奏者の塔子(大西礼芳)に夢中なのが辛くて仕方ない。


 自分の想いがどうしても届かない。好きだからこそ、憎くも感じる。報われない愛に執着した三角関係。普遍的なテーマだからこそ、その役を演じる俳優の魅力が光るのだ。


 競争社会のてっぺんで安穏と暮らす誰からも愛されるサトルの屈託ない爽やかな笑顔。肝心な塔子には「自分のものにしたいほど好きじゃない」と、さほど興味は持たれていないものの、嫌われる要素はひとつもない。付き合って損なことはひとつもない男として描かれている。


 そんなサトルを演じる坂口健太郎。今回のピアノを演奏するシーンのために楽譜が読めない状態から1か月の練習で難しい曲を弾けるようになったというが、そういった努力を前面に押し出さないクールさが彼の魅力でもある。


 塩顔ブームの火付け役となったくらいで、薄い顔と高身長でどんなファッションもセンス良く着こなしてしまう器用な印象は、今回のアイドル・ピアニストという役柄にもピッタリだ。さらに、純粋ゆえに孕む狂気のようなものもまとっており、今後も目が離せない。


 一方、「得体が知れない」「育ちが悪い」と価値のない存在のように扱われる律だが、人の心の機微に敏感で誰よりも愛情というものを求めているのが分かる。


 長瀬智也の演技から伝わる「ハングリー精神」にどこか懐かしさを感じる人も多いのではないだろうか。世の中を嘆いたり、不平を言うのは誰にでもできること。でも、困難に立ち向かっていく気概をもつのは難しい。ありきたりの正義感とは違う、自分なりのやり方で筋を通す男に、強さと色気を感じるのだ。


 テレビやネットの動画では、かわいいペット動画があふれているけれど、それと同時に簡単に捨てられるペットがいることがいることも私たちは知っている。王道のラブストーリーではあるけれど、日常で心に引っかかっていること、目を背けたくなる現実がそこにはある。それが普遍的な愛の物語に注目したくなる理由かもしれない。(石田陽子)