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アーケイド・ファイアからBSS、モッキーまで……個性豊かなカナダ出身アーティストの新譜5選

2017年07月30日 10:03  リアルサウンド

リアルサウンド

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 英米に負けないほど、個性豊かなミュージシャンを生み出しているカナダ。今回は、カナダ出身のアーティストの新作をまとめて紹介していこう。


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 まずは、『The Suburbs』でグラミー賞を受賞して、いまやカナダを代表するバンドとなったArcade Fire。英米チャート1位に輝いた『Reflektor』から約4年振りとなる新作『Everything Now』は、Daft Punkのトーマ・バンガルテルやスティーヴ・マッキー(Pulp)が参加。エレクトロニックなサウンドを前面に押し出して、ダンサブルなビートが際立っている。力強いグルーヴで突き進むアルバムの前半から、歌をしっかりと聴かせる後半へ。各曲が密接に繋がったドラマティックな構成も見事で、アルバムのスケールは一段と増している。


 一方、カナダのインディー・シーンの顔役、Broken Social Scene(BSS)が、7年振りの新作『Hug of Thunder』を発表。ケヴィン・ドリューとブレンダン・カニングを中心にして結成されたBSSは、カナダのインディー・シーンで活動するアーティストが集結したバンドで、作品ごとに参加メンバーが変化する。今回はFeist、エミリー・ハインズ(Metric)、エイミー・ミランとエヴァン・クランレー(Stars)といった古くからのメンバーが勢揃い。ジャム・セッションをベースに作り上げられた曲は、躍動感溢れるバンド・サウンドと、ダブやエレクトロを織り交ぜた大胆なスタジオワークが融合。アルバムに混沌としたエネルギーが渦巻くなか、曲ごとにボーカルが変わり、次々と新しい風景を見せてくれる。


 そのBSSのメンバーでもあるチャールズ・スピーリンやオハッド・ベンチェトリットを中心にしたバンド、Do Make Say Thinkも8年振りに新作『Stubborn Persistent Illusions』を発表。インストを中心にして雄大なサウンドスケープを生み出す彼らのポストロック的なサウンドは、レーベルメイトのGodspeed You! Black Emperorと比較されることも多いが、重厚なゴッド・スピードに比べると、ぐっと軽やかでロックンロールの疾走感に貫かれている。静と動を織り交ぜながら、アルバム一枚で大きな世界を生み出してリスナーのイマジネイションを刺激する音作りは、円熟味を増してきた。兄弟バンド、BSSの新作と併せて楽しみたいアルバムだ。


 さらにBSS関連のアーティストを。BSSのメンバーであり、シンガー・ソングライター、ファイストだ。プロデュースを担当したのは長年の付き合いのモッキーとルノー・ルタン。ゲストには旧友のチリー・ゴンザレスをはじめ、ジャーヴィス・コッカー(Pulp)。カナダの鬼才サックス奏者、コリン・ステットソンなどが参加している。「自分の素に近い状態で作った」と彼女が語る本作は、音数を絞り、ローファイな質感を持ったサウンドが特徴。感情を剥き出しにした歌声に加えて、ギターの演奏もエモーショナルで力強い。ブルージーなムードを漂わせながら、そこから官能的な美しさが匂いたつ刺激的なアルバムで、今年11月に予定されている久々の来日公演も楽しみだ。


 そして、最後に紹介するのは、ファイスト以外にも、ジェイミー・リデルやジェーン・バーキンなど様々なアーティストのプロデュースを手掛けてきたモッキーの『How To Hit What And How Hard』。ほとんどの楽器をモッキーが演奏していて、盟友チリー・ゴンザレスや、LAの音楽シーンのキーパーソン、ミゲル・アトウッド・ファーガソンなどが参加。R&B、ファンク、ジャズなど様々なリズムを取り入れながら各曲をミックステープのように繋いでいく本作は、自由気ままなグルーヴ探求の旅。美しいメロディや繊細なアレンジも光っていて、アルバムを包み込むメロウネスも心地良い。ちなみに本作は海外では配信のみなので、CDで楽しみたい方は素敵な紙ジャケ製の日本盤でどうぞ。(村尾泰郎)