7月27日、鈴鹿サーキットでFIM世界耐久選手権(EWC)の最終戦、“コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレースが開幕した。2017年は『鈴鹿8耐開催40回目の勝者』の称号と、『EWCチャンピオン』のふたつがかかるこの大会。ポディウムの頂点に立つのは、そしてEWC年間王者となるのは果たしてどのチームだろうか。
白熱のタイムアタックが予想される予選は、28日(金)に各ライダー20分ずつの計時予選が行われる。2017年の鈴鹿8耐では2名、または3名のライダーの平均タイムが総合結果となり、11番手以下はこの結果でグリッドが決定。上位トップ10に入ったチームは、翌29日(土)に各チーム2名のライダーによって実施される『トップ10トライアル』と呼ばれるノックアウト方式の予選に進む。
27日(木)に行われた特別スポーツ走行でトップタイムをマークしたのは、ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チーム。2分7秒540を記録して2年連続優勝チームの速さを見せつけた。
その対抗馬の筆頭となるのは、MuSASHi RT HARC-PRO.ホンダだろう。この日の走行でもヤマハ・ファクトリーに次ぐ2分7秒756をマーク。2番手につけて十分な速さを見せている。ちなみにこの日、2分7秒台を記録したのはヤマハ・ファクトリーとハルク・プロのみ。2年連続でリタイアという悔しい結果に終わっているだけに、新型CBR1000RR SP2で雪辱を果たしたいところだ。
そして2012年ぶりの優勝を目指すのが、大会直前にライダーラインアップの変更を発表したF.C.C.TSRホンダ。事前に発表されていたSBKライダー、ステファン・ブラドルの体調不良により、ジョッシュ・フックが代わって起用された。フックにとって2015年には同チームから鈴鹿8耐と全日本ロードレース選手権に参戦していた、いわば古巣。この変更は大きな問題ではなさそうだ。
さらに、新型となったGSX-R1000を駆るヨシムラ・スズキMOTULレーシング、熟成2年目となるZX-10RRで戦うカワサキ・チームグリーンも虎視眈々と頂点をねらう。木曜日に行われた特別スポーツ走行では、ヨシムラは2分8秒321の3番手、チームグリーンは2分8秒430の5番手タイムを記録した。
そして9年ぶりの鈴鹿8耐復帰となる、モリワキMOTULレーシング。7月11~13日に行われた合同テストでは2分7秒346のトップタイムをマーク。この日は2分8秒938のタイムを記録して8番手につけている。
モリワキの高橋裕紀は「トップ10トライアルには残りたい」と、チームとしては2008年ぶりの鈴鹿8耐予選に向けた意気込みを語った。
「路面状況が変わったり、バイクも8耐仕様になって、前回までのテストから感触が変わりました。レースは今週だから、また合わせ込みと最後の調整をしてるところです」
「今年から(金曜日の計時予選のタイムは)3人のタイムを合算した平均なので、そこがどうなるかですね。ほかのチームについても読めないところがありますが、モリワキは悪くはないと思います。(トップ10トライアルに)残れるように、全力を尽くしますよ」
■SERTから参戦する濱原はチャンピオンとして表彰台に登れるか?
また、今回は鈴鹿8耐でEWCの世界タイトルが決定することにも注目だ。2016年9月にフランス・ボルドールで開幕したEWCの2016/2017シーズンは、鈴鹿サーキットで最終戦を迎える。
現在EWCランキングトップにつけているのは、132ポイントでスズキ・エンデュランス・レーシング・チーム(SERT)。これに僅か1ポイント差の131ポイントで、GMT94ヤマハ、さらに105ポイントで野佐根航汰を擁するYARTヤマハが続く。
今大会は最終戦としてポイントが通常のEWC8時間耐久レースの1.5倍となり、優勝すれば45ポイントが加算される。計算上は、トップのSERTからYARTヤマハの3チームまでもが年間チャンピオン候補だ。
とはいえ、この鈴鹿8耐はEWCのほかのラウンドとはまた趣が違うと言える。日本の各チームが年のはじめからこぞって準備をし、ライダーも世界のトップライダーを招へいするなど、EWCを年間シリーズで戦ってきたチームでも表彰台を獲得することはそう簡単ではないだろう。
そんなEWCのランキングトップにつけるSERTから、ひとりの日本人ライダーが参戦する。今年、全日本JSB1000クラスにヨシムラ・スズキMOTULレーシングから参戦している濱原颯道(はまはらそうどう)だ。全日本でも参戦初年度から名門、ヨシムラに指名された新人が、再び大抜てきを受けた。
普段はヨシムラのGSX-R1000Rで全日本を戦う濱原。今回、耐久仕様のバイクで走るにあたって、感触はどうだったのだろうか。
「バイクはヨシムラチューンのSERT仕様ですが、乗り換えは苦戦しませんでした。初めてSERTのバイクに乗った日から、このバイクを仕上げていこうと思ったんです。慣れというより、初めて乗るバイクという意識で向き合いました。だから、(SERTのGSX-R1000に)慣れるのは早かったと思います。バイクとのマッチングはできていますよ」
さらに、今日の特別スポーツ走行については「ベストタイムは11秒9。タイヤもユーズドだったり、ライダーによって使用条件が違いますが、期待度に対して応えられているかなという意味では、僕の中では60点くらいです」と濱原は語った。その表情から、EWCランキングトップのチームから鈴鹿8耐に参戦するというプレッシャーは見受けられない。
「予選ではバイクを壊さずに決勝に向けて温存して、その上で最上位を狙っています。何位であろうが、ベストは尽くしたいですね」
「世界チャンピオンになることしか考えてないです」そう言い切った濱原。どこまでも決勝レースを見据える大型新人が、まずは28日の予選に挑む。