トップへ

TrySail、3人で掴み取った奇跡の一夜 “実力”と“可能性”示した横アリ公演レポート

2017年07月27日 15:43  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 麻倉もも、雨宮天、夏川椎菜による声優ユニット・TrySailが7月9日、神奈川・横浜アリーナにて『LAWSON presents TrySail Live 2017 Harbor × Arena in YOKOHAMA』を開催した。同ライブは、7月末の神戸公演を含めた2都市3公演のアリーナライブツアーの初日。過去最大キャパシティとなる今回の公演では、会場に詰めかけた10,000名のファンと共に約3時間に及ぶステージを成功させ、彼女たちが持つ確かな実力と大きな可能性を証明する形となった。


参考:UNISON SQUARE GARDEN、なぜアニメと相性が良い? タイアップ曲からバンドの特性を考察


 公演タイトルにある“Harbor”にちなみ、今回の舞台は海をモチーフにしたテーマパーク。オープニングSEやライブ演出にも、そういった趣旨の内容が用意された。観客の期待を煽るようなアナウンスで呼び込まれた麻倉、雨宮、夏川の3人は、担当カラーであるピンク、ブルー、イエローのドレスに身を包み登場。メインステージやアリーナ中央に位置するセンターステージ、メインとセンターをつなぐ花道と、大きな会場をいっぱいに使って数曲披露し、スタートダッシュと言わんばかりに会場を大きく沸かせた。


 ファーストMCでは、麻倉が「今日は一体感が出るような熱いライブにしたいと思っていますので、みなさん私たちについてきてください!」と高らかに宣言。2015年のデビューからわずか2年。横浜アリーナをソールドアウトするほどの勢いを持ち、初めて体験する大きなステージに怯むこともない彼女たちの姿には、喜びと同時に驚きを感じたファンも多かっただろう。


 TrySailのパフォーマンスで驚かされるのは、お互いの良さを引き出し合う3人のバランスとチームワークだ。可愛らしい甘めの声でファンを魅了する麻倉、芯の通ったクールな歌声が印象に残る雨宮、そしてパワフルで伸びやかな歌声を持つ夏川。個性が際立つソロパートは楽曲を彩り豊かに表現し、個々の声が三位一体となるユニゾンパートでは綺麗なハーモニーを生み出す。また、立ち位置がくるくると変化するフォーメーションも、目が奪われるポイントだ。爽やかで疾走感のある「whiz」をはじめ、ユニゾンの美しさが際立つバラード「あかね色」、ロックサウンドを基調としたアッパーチューン「High Free Spirits」といった曲目を、この3人でなければ生みだせないダイナミズムを持って観客に届けた。


 また、TrySailのライブでおなじみのソロコーナーも設けられ、各メンバーの魅力にもスポットが当てられた。全員が歌手としてソロデビューを果たしているように、その歌唱力の高さは折り紙付き。さらに今回歌ったソロ楽曲が、いずれもライブ初披露という点もファン心を熱くした。


 麻倉はメインキャストとして出演するアニメ『プリプリちぃちゃん!!』(MBS/TBS系)のOP曲「トクベツいちばん!!」を歌唱。彼女のキュートな声とマッチしたハイテンションナンバーで、曲の終盤では「みんな一緒にー!」と会場全体を巻き込んで歌う一幕も。次に夏川へとバトンタッチし、クラムボンのミト(作曲)とthe ARROWSの酒井竜二(作詞)のタッグで製作されたデビューシングルSG「グレープフルーツムーン」を披露。綺麗なメロディと共に切ない恋物語が紡がれていく同曲は、「トクベツいちばん!!」から一変しロマンチックなステージを展開した。


 そしてソロパートのラストを飾ったのは、7月26日発売する雨宮の新曲「irodori」。歌唱後のMCで雨宮が「(「irodori」は)個性的で挑戦的な曲になっているので、今後の私の活動に重要な彩りを添えてくれる、そんな一枚になってほしい」と語るように、赤色をテーマにしたジャズ調のナンバーは、彼女にとって大胆なモードチェンジと言える。大人の色気を纏った歌声で情熱的なパフォーマンスを見せ、歌手・雨宮天の新たな可能性を力強く示した。


 声優ならではの企画を見せてくれるのもTrySailライブの醍醐味。曲と曲の幕間には、「TrySailゴールデン劇場」と題した朗読劇「1912×豪華客船」が行われた。筆者は朗読劇にまったく馴染みはないが、謎が謎を呼ぶミステリアスな展開に夢中になって耳を傾け、言葉だけを頼りに想像を膨らませる体験は新鮮であった。会場が朗読劇によってクールダウンしたのも束の間、「ここからどんどん飛ばしていきますが、準備はいいですか?」という雨宮の合図をきっかけに再び熱いライブパートへ突入。


 冒頭のMCで麻倉が「一体感」と述べたように、観客もメンバーと一緒に楽しめるような楽曲が揃っているのもTrySailの魅力のひとつ。会場のスクリーンに掛け合いパートの歌詞が表示された楽曲もあり、特に「Brave Sail」ではメンバーとファンが一体となって曲を作り上げていた。また、もっと一体感を出したいというメンバーが、横浜アリーナに集まった10,000人にTrySail史上最大級の「360度ウェーブ」を要望する。「それでは出航!」というメンバーの合図にあわせて、客席の端から端まで満たしたブルーのサイリウムが上下し波を表現。一望したメンバーは「綺麗~!」と感動した様子を見せた。
 ライブも終盤へと差し掛かり、雨宮の「みなさんの“アドレナリン”出せますか」という掛け声から、アニメ『エロマンガ先生』(TOKYO MXほか)のEDテーマ「adrenaline!!!」を披露。「Baby My Step」では、観客の大合唱とメンバーの歌声がバチバチぶつかりあうような熱い展開を見せる。歌い終えたメンバーは「この組み合わせいつか来ると思ってましたけど」「いや~レコーディングのときから恐れていたことが起きてしまいましたね」「“アドレナベイビー”……どこで息してたんだろう」と、さすがに息の上がった様子を見せた。


 観客の満足気な様子を見た雨宮は、「ライブをするとき、みなさんの笑顔がなによりもご褒美だなって思っているんですけど、今日はみなさんの素敵なご褒美をたくさんたくさん受け取ることができました」と、元気の源がファンの笑顔であると告白。その後で歌われた「ひかるカケラ」の歌詞にある<こんなに広い世界で キミと出逢えたよ/だからもう迷いなんていらない/明日が見えなくなって 泣きたくなっても/キミがいれば大丈夫>という一節は、TrySailがファンに送る心からのメッセージのように思えた。


 ソロパートや朗読劇をはじめ、幕間に流れる映像やメンバー同士の掛け合い、VJを使った演劇風のダンス、さらには会場一丸となって歌う演出など、アトラクション要素の高い内容はまさにテーマパーク。TrySailは、2015年5月23日に行った1stライブ『LAWSON presents TrySail First Live 2015 “Sail Out!!!”』から、ショートコントやソロコーナーに挑戦し、ファンを楽しませるための努力を続けてきた。みんなに喜んでもらうためなら、どんなことにでも挑戦していこうとする姿勢が、彼女たちを横浜アリーナという大きな舞台に運んだ理由のひとつであるのは間違いない。


 アンコールで再びステージ登場した3人。麻倉は「こんなに広いし、普段とは違う振りやフォーメーションもあって心配だったんですけれど、本番になるはみんながすぐそばにいたから、安心して全部出し切れました!」と今回の公演を振り返る。続けて雨宮は「Trysailにはこんなにたくさんの味方がいたんですね!」と改めて驚きを表し、「私は超絶ビビリなんです。でも、みんなにパワーをもらって楽しいライブができました!」とメッセージを送った。最後に夏川が「ここに立っていることが本当に奇跡です。でも、それをTrySailを好きでいてくれる人で埋め尽くせるのは本当に幸せでした!」と感謝の言葉を述べ、8月26日に発売される2ndアルバム『TAILWIND』から1曲披露しライブは幕を閉じた。


 7月29日と30日、神戸ワールド記念ホール(兵庫)の2daysライブで同ツアーはファイナルを迎える。ファーストライブを行ったパシフィコ横浜・国立大ホールで船出を迎えてから、驚異的な速度で成長を遂げるTrySail。これから新たな目的地に向けて大きく帆を張り、新しい風をつかんで誰も見たことのない景色へ連れて行ってくれると、期待に胸を膨らませるばかりだ。(泉夏音)