イギリスGPが開催されていたシルバーストンでジャック・ビルヌーブと談笑している紳士がいた。デビッド・リチャーズである。
リチャーズは共同経営者として、1984年にプロドライブのを設立。90年代は世界ラリー選手権にスバルを走らせていたことで有名だが、F1関係者にとっては、ベネトンやBARのチーム運営を行った人物として知られている。ビルヌーブはそのときのドライバーである。
「ジャックとは、彼がBARを離れた後もずっとコンタクトを取り続けており、2013年にはわれわれが参戦していたオーストラリアのV8シリーズのサーファーズパラダイスのレースに、1戦だけ参加してもらったこともある」
F1のチーム運営を離れた後も、リチャーズはプロドライブのオーナーとして、ル・マンで長年GTカーを走らせてきた。その功績が讃えられ、今年のル・マン24時間レースでは、ル・マン24時間レースを運営するACOフランス西部自動車クラブから、『スピリット・オブ・ル・マン』賞を授与された。
そのリチャーズがいったい何をしにシルバーストンにやってきたのか?
「じつは、来年の1月からイギリス・モータースポーツ協会の会長になるんだ。だから、これからは自分の会社が参戦しているル・マンだけでなく、イギリスのモータースポーツ発展のために、さまざまなモータースポーツを見ておかなければならない」
シルバーストンといえば、イギリスGP直前にバーニー・エクレストンとの間で締結されていた開催契約を1年前倒しして2018年限りで終了する決定を下したばかり。「2019年以降のイギリスGPは、開催されるのか?」、「開催されるとすれば、どこで行われるのか?」など、問題は山積している。
そんな重要な時期に新会長に任命されたリチャーズ。
「確かに大変だが、やりがいのある仕事だ。それより、いったいどうしてしまったよ、ホンダは?」
65歳を迎えても、ますます元気なリチャーズだった。