トップへ

【水瀬きいチーム激励連載】クラッシュとアクシデントの大きな代償:スーパーGT第3~4戦編

2017年07月27日 13:32  AUTOSPORT web

AUTOSPORT web

Ferrari 488 GT3の伊藤監督と新田選手を励ましにきたきい様
レースは不測の事態、想定外の連続だ。特に2クラスが混合でレースを行うスーパーGTでは、トラブルやクラッシュなど、アクシデントが絶えない。傷ついたクルマを、夜を徹して修復するメカニック、その横で頭を抱えながらソロバンをはじくチームオーナー……。そんな苦労を重ねたチームを、オートスポーツwebナビゲーターの水瀬きいが励ましつつ、その大変さを数字を目安に紹介します。

☆  ☆  ☆  ☆  ☆
 
 サリュー!

 オートスポーツwebナビゲーターの水瀬きいです☆ 今回は、第2戦でも取材した新企画、その名も『前戦で苦労したと思われるチームのお話を聞きつつエールを送るぞぉ☆』です!(編注:重ねて言いますが『【水瀬きいチーム激励連載】クラッシュとアクシデントの代償』が正式タイトルになります)

■INGING & Arnage Racingの場合
 今回は、第3戦オートポリスから、第4戦SUGOまでの間に行われたテストで、クルマがお怪我にあってしまったチームの方々に突撃します。まずは、今季第1戦岡山と第3戦オートポリスで、ヒジョーに不運なクラッシュに遭ってしまった、INGING & Arnage Racingです。伊藤宗治チーム監督兼エンジニア、新田守男選手がいらっしゃったので、話を向けてみると……。

「もう、せっかく忘れてきてたのに~! ココに聞きに来るかぁ!?」

 まあまあ新田選手、そんなに怒らないでください(汗)。伊藤監督によれば、「第1戦岡山でクラッシュした車両は、今は寝てる(置いてある)。で、第3戦でクラッシュしたのは、右リヤのタイヤまわり。そんなに壊れていないけど、損害は1本(1,000万円)くらいですかね」

 ふむむ。フェラーリだからなのか、修理費用もお高めです。ちなみに、今の車両は同じ三重を拠点としているARN RACINGにあった個体だそうです。

「でも、現実的には寝ているクルマもいたし、みんなの協力も得ながら直すことができた。でも、素でそのまま直すとなると、やはり1,000万円くらいかな」

 ちなみに新田選手、SUGO公式テストでは無事に走行を終えたのですが、テスト終了後にサーキットを出ようと別チームのトラックの後についてレンタカーで走っていたところ、トラックがバックしてきてあやうくぶつかりそうになったそうな。

「『ココでクラッシュするかぁ!?』って。その後もめちゃ慎重に帰ったよ。今回(第4戦SUGO)もなるべく乗らない(苦笑)。無事終えて帰ろうってね」

 では、きいからの励ましを。SUGOのマモノに打ち勝ってください☆

「打ち勝てるか! マモノいないところでマモノに遭っちゃったんだから。怖いんだからね!」

 ひ~。怒らないで~(泣)。でもそんな新田選手&INGING & Arnage Racingですが、第4戦はなんと2位表彰台! 伊藤監督も「今まで運が悪かったんだから、その分のツケがちゃんと返ってきたってことでしょう」と笑顔。「励まし、効いたかもしれないね!」とレース後ありがたいお言葉をいただきました~!

■Cars Tokai Dream28の場合
 続いては、スポーツランドSUGOでの公式テストでクラッシュしてしまったシンティアム・アップル・ロータス。チームの渡邊信太郎エンジニアにお話をうかがいました。

 あの~……。クルマがお怪我をされてしまったと聞いたのですが……。

「大ケガね(泣)。左リヤからぶつかってサスペンションは壊れ、エアボックスに左リヤタイヤが乗っかっちゃうくらいまで激しく押されました。なので今回は、左うしろ側は全部新しい感じ。エンジンも新しいですし。昨年も鈴鹿では大きいクラッシュしましたが、それ以上。今まででいちばん大きかったですね」

 な、なるほど。お怪我の治療にはどのくらいの時間が?

「SUGOテストの後にすぐに鈴鹿公式テストがあったので、間に合わせるようにしたんだけど、このクルマはマザーシャシーのなかでもミッドシップなので、モノコックは同じでも無理矢理うしろにもってきている。だからない部品が多く、作るのに時間がかかるんですよ。今回部品を作るのに1週間以上かかってしまうので、鈴鹿テストは不参加になりました」

 その修理費用ですが、いったいどのくらい?

「1本(1,000万円)いきますねぇ。結局カウルもバラバラになってしまったのでもう一度作ったんですが、カラーリングとかもやり直さなければいけないので、人件費もぜんぶ発生してしまう。イメージとしては、部品代の倍くらい。500万円分くらいの部品費は使ってしまったので、そのくらいですね」

 ところでGT300マザーシャシーといえば開発ができるクルマですが、今回のクラッシュ修復の際に、何か新しいアイデアを盛り込んだりしていますか?

「もちろん、どこかのタイミングで入れようとしていたアップデートは入れています。時間ができたという意味でポジティブにとらえれば、風洞やCFDのテストをして、ボンネットの形状の適正化なんかもしてます。今年のMCはストレートが遅いのですが、このクルマはエアリストリクターがツインで、影響が大きいらしく、そのあたりの改良もしました」

 そうなんですか~! では、きいからの励ま………

「おもしろいこと言うんでしょ? メディアとしてはまさかハズさないですよね~(渡邉エンジニア)」

 ヤバい! おもしろいこと何も浮かばない! え~っと……ピンチはチャンスってことで、がんばってください☆ 1本くらいじゃまだおもしろいのは出てきません☆

「なるほどね(笑)。もう1本か~」

 なんて言ってたら、ホントに決勝でクラッシュしちゃいました……。できれば軽傷で済んでいますように……。

■GAINER TANAX AMG GT3の場合
 続いては、同じくSUGOテストの際にエンジントラブルに見舞われてしまったというGAINER TANAX AMG GT3のピットに来てみました。福田洋介エンジニアにお話しをうかがいます。あの~……エンジンがお怪我をされたと聞きましたが。

「今はニューエンジンになっています。SUGOテストのときは、もうそろそろオーバーホールした方がいいかな、と思っていたくらいでした」

 なるほど。気になるお値段なんですが、エンジン1基の値段ってあんまり想像つかないですね。

「じつは、オーバーホールとニューエンジンを入れるのはそんなに金額が変わらないんです。オーバーホールだと往復運賃がかかりますからね。でも、オーバーホールしておくと、スペアエンジンを手元に置いておけるというメリットはあります」

「エンジンは、運賃入れて500~600万円くらい。まあ痛いことは痛いですね」

 では、エンジントラブルになったことで『無駄な時間過ごしちゃった~』みたいなことはありました?

「それはないですね。SUGOで壊れた時点ですぐに鈴鹿公式テストがあったので、ネットでオーダーを入れて、“お急ぎ便”で送ってもらってギリギリでした」

 なんでも、メルセデスベンツAMG GT3はカスタマー用に専用のホームページがあって、そこで部品をポチっとすると届けてくれるらしいんです。“お急ぎ便”は飛行機、通常は船だそうですが、まるでアマ●ンみたいじゃないですか!

 というわけで、出費はあったもののあまり困っていないとのことなので、エールを送らずに帰ります☆ でも、事前のきいの予想が当たりますように! とお願いした結果、優勝でしたね~(笑)。おめでとうございます!

■31号車TOYOTA PRIUS apr GTの場合
 では最後に、鈴鹿公式テストで1~2コーナーのスポンジバリアにクラッシュしてしまった、31号車TOYOTA PRIUS apr GTの金曽裕人監督のところに来ました。前回に続きスイマセンが……。なんでも鈴鹿サーキットから請求書が来たと聞いたんですが……。

「スポンジバリア代75万円が来たよ。ホントは95万円だったけど、カスっただけの部分をマケてもらった。ビックリして請求書をスマホの待ち受けにしようかと思ったくらい(笑)」

 ひょえ~! ちなみに、レースではこういうバリア修理費用は請求がないんだそう。テストのときだけらしいですよ。えと、それでプリウスの方のダメージは……

「それがまたいいスポンジバリアでね~(笑)。クルマはめちゃダメージ少なかった。鈴鹿サーキットの方も『あれは特殊なスゴいものなんです』って言ってた。二輪のライダーも怪我しないらしいからね。結果的にはミラーが曲がったのと、ウイングが曲がった。じつはあまり壊れてなかったんだけど、そーっと出てこようとしたらウイングがスポンジに引っかかってて、ググーっと引っ張っちゃって、それでバリア代が増えちゃった(苦笑)」

 そうですか~。では、おサイフを励ましておきますね☆

 というわけで、今回は4チームに取材をさせていただきました。超ハードスケジュールのなか、チームのメカニックさん、そしてチームオーナーさん、ご苦労さまでした!