東京オリンピック・パラリンピック組織委員会は7月24日の理事会で、選手村内の「ビレッジプラザ」の建設用木材を、全国の自治体から無償で提供してもらう案を固めた。25日には公募要項が発表されたが、「無償」という言葉から「ちゃんと買え!」「ブラック企業の鑑」などと批判が集まっている。
必要な量は2000立方メートル、新国立競技場に相当
ビレッジプラザとは、敷地面積1.3ヘクタール、延床面積約6000ヘクタール、木造平屋建ての建物だ。大会期間中、
「チーム歓迎式典、花屋・雑貨店等の店舗、カフェ、メディアセンター等が配置され、認証を受けたオリンピック・パラリンピックファミリーや、メディア関係者、居住者の関係者が訪れる施設」
として使われるもので、建築に必要な木材は約2000立方メートルだという。日本林業調査会によると、これは新国立競技場に匹敵する量だそうだ。このうち、梁、柱、床に当たる部材を全国の自治体から公募すると発表したのだが、要項の中身を見ると
「事業協力者(編集部注:木材を提供する自治体)は、木材の調達、製材等の1次加工、仕口加工等の2次加工、往復の運搬、後利用に伴う設計・施工等を行う」
「これらに係る費用は、事業協力者が負担する」
とあり、自治体の負担が大きいと分かる。その上、木材の使用料は支払われないため、ネット上では「たかりと同じなのでは」「ほぼ利益が無いのにオリンピック関係ない地方自治体に負担を強いる謎システム」と批判が殺到していた。
しかし、この件に関してオリンピック組織委員会会場整備局の担当者に取材をしたところ、こうした批判とは少し違った事情が見えてきた。
自治体の「ぜひうちの木材を!」に応えた形 無償のわけも「自治体からの声」
選手村の施設を木材で建築することは、開催地が決まる前に招致委員会が提出した「立候補ファイル」の中で既に決定していた。その後東京開催が決まると、この記載を知った全国の自治体から、「ぜひうちの木材を使って欲しい」との問い合わせが相次いだという。
「立候補ファイルの時点では木材との記載だけで、国産に限定はしていませんでしたが、数件自治体から『協力したい』との声があったことから、今回こういったスキームに落とし込み、国産木材を募集することになりました」
しかし、借りるにしてもレンタル料を支払う選択もあったはずだ。なぜ無償での提供なのか聞くと、「オリンピックの大きな考え方の一つにボランティア精神がありますから」という理由の他、
「オリンピックの開催にコストがかかり過ぎではないか、という指摘があるのは、みなさんもご承知のことと思います。削減しながら会場作りを進める中で、自治体から無償でも構わないという声をいただいたため、こうした形になりました」
と経緯を説明する。「あくまでも、組織委員会は自治体から木材をお借りするだけ」だという。「借りている約1年の間、木材の所有権はそれぞれの自治体にある」といい、どうやら組織委員会が地方自治体から無理やり木材を召し上げる、といった見方は誤りらしい。
地方の自治体には、オリンピックに合わせ、自らの自治体も盛り上げていきたいと考えるところも多いそうで、「木材を貸してくれる自治体には、『公認プログラムマーク』の使用を積極的にプッシュ」しているという。
「マークそのものは非営利団体なら誰でも使えますが、まだ東京近辺での使用が多く、地方には普及していません。これを使っていただくことで、オリンピックに向けて街を盛り上げていって欲しいと思います」