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社長から専業主婦に月30万円の「愛人手当」…手渡しなら夫にバレない? 税金は?

2017年07月25日 10:23  弁護士ドットコム

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中小企業の社長と月30万円の愛人契約を結んだが、振り込みと手渡しのどっちがいいのかーー。ネットのQ&Aサイトにそのような相談が寄せられている。


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相談者は専業主婦で、この社長から、お金を経費として、会社名で振り込みたいと言われた。別会社の社長という設定で、接待費のような名目にするそうだ。相談者は受け取った証拠になってしまうので、手渡しを希望しているが、社長から、以前別の愛人契約をしていた際にも問題は起きなかったと言われている。


専業主婦であるため、現在収入がないが、振り込みをきっかけに夫にバレてしまうのではないかということや、愛人手当にかかる税金がどうなるのかを気にしている。実際に、振り込みにすると扶養から外れてしまう可能性や、税金がかかる可能性があるのか。逆に手渡しの場合はどんな問題があるのか。松本崇宏税理士に聞いた。


●法律上無効であっても、課税対象になる

愛人手当に税金はかかるのか。


「一般的に愛人契約は、公序良俗に反する行為として無効になると考えられます(民法第90条)。


法律上無効であるといっても税金の世界では、それが違法・不法に稼いだ所得であろうと、所得が存在する限り税金の課税対象となります。


今回のケースでは、会社から支払われるということですので、贈与税ではなく、所得税の課税対象になると考えられます(社長個人から受け取る場合は贈与税の課税対象となります)」


手渡しと振り込みどっちがいいのか。


「どちらであろうと税金の額が変わることはありません。


手渡しならバレないだろうと思うのは間違いです。


社長が以前の愛人契約では問題がなかったと言うのは、たまたま税務調査が入らなかっただけでしょう。数年間税務調査が入っていないとしたら、そろそろ税務調査が実施されるかもしれないと考えるべきです。過去の愛人契約よりも現在の愛人契約の方が、発覚する可能性が高まっていることを頭に入れておきましょう。


愛人手当を会社に負担させようとする社長なら、他にも個人的な経費を会社に負担させているかもしれません。社長の公私混同な経費は税務調査で指摘される可能性が高いでしょう。経費が厳しく見られる中、毎月特定の女性の口座に30万円が振り込まれているのを見れば、愛人手当の存在を疑うのが自然ではないでしょうか。 


なお、税務の世界で愛人は『特殊関係人』と呼ばれており、税務調査では愛人への支払いについては重点的に調査される項目となります」


●バレないようにするのは難しい

愛人手当のやりとりが夫にバレる可能性はあるのか。


「専業主婦で収入がないとのことですので、夫の方では配偶者控除の適用を受け、一定の金額の所得控除を受けている可能性が高いと思います。


配偶者控除の適用を受けるには、妻の年間の合計所得が38万円以下である必要があります。それを超える愛人手当を貰う場合には、配偶者控除の適用から外れることになります。


専業主婦である妻に、所得があるため配偶者控除の適用が受けられない。そうなると、夫は妻に何の所得があるのか疑問に思うことでしょう」


結局、手渡しでも振り込みでもバレないようにするのは難しいということか。


「税務調査で愛人手当の存在が発覚した場合、きちんと処理をしていないと多くの人を巻き込んだ大問題になりかねません。


社長、社長の会社、愛人の方はもちろん、何も知らずに配偶者控除の適用を受けていた夫も所得税の修正申告等が必要になります。


愛人契約としてお金をもらっている場合、税金や社会保険料の問題が絡んできます。税金も社会保険料も日本の大事な財政基盤ですので、その調査は厳しく行われます。お金が動いている以上、バレないようにするのは難しいでしょう」


【取材協力税理士】


松本 崇宏(まつもと・たかひろ)税理士


「デリヘルはなぜ儲かるのか」(小学館文庫)の出版を機に日本で唯一、風俗業種に特化した税理士事務所。全国の風俗業の税務申告、相談の対応をしている。


新刊「風俗オーナー限定 最強の『節税』」(幻冬舎)が平成29年6月に発売


事務所名   : 税理士法人松本


事務所URL: http://www.deri-tax.com


(弁護士ドットコムニュース)