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『銀魂』のヒットを支える、ムロツヨシ&佐藤二朗 “悪ふざけ”の魅力

2017年07月25日 06:03  リアルサウンド

リアルサウンド

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 7月14日に公開から4日間で観客動員74万2254人、興行収入9億8200万円というロケットスタートを切った映画『銀魂』。原作者の空知英秋の愛のある応援や、いい意味で“悪ふざけ”している作品の世界観を全力で楽しむ福田雄一監督をはじめとしたスタッフやキャストの雰囲気など、ヒットの要因はいろいろ挙げられるが、その“悪ふざけ”を大いなる魅力に昇華している俳優たちがいる。福田組常連の佐藤二朗とムロツヨシだ。


(参考:柳楽優弥が語る、『銀魂』土方十四郎役の手応え「こんなにカッコいい男を演じられる機会は滅多にない」


 現在、ムロは大河ドラマ『おんな城主 直虎』(NHK)で瀬戸方久を演じるほか、連続ドラマ『ハロー張りネズミ』(TBS系)にも出演中。佐藤も公開中の映画『メアリと魔女の花』で声優を務め、連続ドラマ『過保護のカホコ』(日本テレビ系)にも出演している。各々のキャラクターを活かし、バラエティ番組へ出演する機会も増えている、どちらも引っ張りだこの売れっ子俳優。


 そんな2人だが、『銀魂』でムロは平賀源外、佐藤は武市変平太を演じている。福田監督は「たいした役でもないから」と起用理由についてはぐらかしていたが、一方で2人を「精神安定剤」とも言っている。福田監督作品のなかで、彼ら2人の視聴者の目を留まらせる芝居の安定感には、絶大なる信頼を置いているようだ。


 その言葉通り、『銀魂』でも揺るぎない“悪ふざけ”の芝居を披露しているムロと佐藤。ムロは江戸随一の発明家として、著作権ギリギリの発明品たちを開発していく人物を演じているが、小栗旬演じる主人公・銀時との絡みでは、延々と銀時の胸元を無意味にパンチするシーンを繰り返すなど、一見意味のわからない演技を披露。小栗はこのシーンによって、胸に大きなあざができてしまったことを打ち明けるなど、行動すべてをプロモーションにまで使い切る“悪ふざけ”ぶりには脱帽だ。佐藤が演じた武市も、頭脳明晰な策略家というキャラ設定がありながら、劇中では“変人ぶり”を発揮。菅田将暉演じる新八とのシーンでは、強烈で意味不明なアドリブで、同じシーンに登場する来島また子役の菜々緒を、素で笑わせてしまうなど爆発的な“悪ふざけ”を披露している。


 この2人、3月まで日本テレビ系にて放送されていた連続ドラマ『スーパーサラリーマン左江内氏』(日本テレビ系)にも出演していたが、この作品でも自由奔放なアドリブ演技が話題になった。福田監督作品によくある“相手が笑ってしまった”シーンもそのまま劇中で使われることがある。このことに関して、福田監督は「二朗さんは二度同じ演技ができないからなんです」と理由を説明する。つまり、佐藤の突拍子のないアドリブで、受ける側が笑ってしまい、本来ならNGになってしまうのだが、そのテンションの芝居を二度できないため、断腸の思いで、素で笑ってしまっているシーンを使うというのだ。福田監督は「二朗さんの芝居はやり直すと、だいたいおもしろくない」と一刀両断する。


 佐藤もそのことはわかっているようで「福田組には遊びに来ているようなものなんで、もう一回やれといわれても覚えてない」と悪びれない。しかし、こうした発言は、福田監督の“オールエイジに通用する笑い”というポリシーに符合しているように感じられる。佐藤のこうした演技は、シンプルに笑えるのだ。さらに素の反応を作品に取り込みつつも、物語の世界観を崩すことなく成立させられるのは、演出側と演じる側の信頼関係があるからだろう。


 『銀魂』のイベントでも、小栗旬、菅田将暉、橋本環奈、岡田将生、長澤まさみ、柳楽優弥ら主演級の俳優たちがズラリと顔をそろえるなか、福田監督、ムロ、佐藤の“悪ふざけ”が、場を支配することが多々ある。「変にインテリジェンスを感じさせない笑いが好き」という福田監督にぴったりのムロ&佐藤。今後も福田組の風神・雷神として大暴れしてくれることは間違いないだろう。


(磯部正和)