都営新宿線内で7月24日朝、アルミ風船が浮遊し、運転を見合わせるトラブルがあった。
アルミ風船はその材質上、通電する特性を持つ。1500ボルトの電圧が流れる地下鉄の架線に触れるとショートを起こし、断線する危険性もある。そのため、運転を止めた上で駅の係員ではなく、保安係員が撤去しなければならない。
風船を見つけるまでに2時間、感電しない特殊な棒を使って撤去
東京都交通局の広報担当者に問い合わせたところ、詳しい経緯が明らかになった。8時47分、曙橋駅の係員が、線路内に飛ぶアルミ風船を発見。新宿方面に浮遊していたことから、9時2分に岩本町~新宿駅間で運転を見合わせ、岩本町~本八幡駅間は折り返し運転を実施した。9時34分に保守係員が現場に到着し、曙橋~新宿三丁目間で点検を行ったが風船は見つからず、10時45分に運転を再開したという。
しかしその直後11時に、点検をした方向とは逆の曙橋~市ヶ谷駅間で風船を発見したため、再度新宿~岩本町駅間で運転を見合わせ、11時21分に風船を撤去。11時23分に再開した。最初に駅係員がアルミ風船を見つけてから運転が全て再開するまで、2時間半ほどかかったことになる。
同担当者によると、アルミ風船の撤去方法はマニュアルがあるわけではなく、「保守係員がその場で臨機応変に判断」しているという。今回は、感電しない特殊な棒を使って風船を割り、ガスの抜けた風船を回収して対応した。作業自体は数分で終わるが、風船の場所を特定するのに時間がかかったため、大幅な遅れに繋がったという。
「最初は新宿方面に浮遊していた風船が、空調やトンネル内の電車の通過によって方向を変えたため、発見に時間がかかったのだと思います」
昨年12月、大阪の市営地下鉄で、列車のパンタグラフにアルミ風船がひっかかるトラブルがあった。今年3月には都営大江戸線月島駅で風船の浮遊が見つかり、運転を見合わせている。最近では、6月に京急線・井土ヶ谷駅構内で同様の理由から、上下線で運転がストップした。相次ぐトラブルに、ネットでは「またアルミ風船かよ」「もう、アルミ風船は2㎏の重り付きでないと販売できません、とかすればいいのに」と、苛立つ声も聞かれている。
ビニール袋の中にアルミ風船を入れるようお願いしている路線も
東京都交通局は現在のところ、風船を持ち込む際の規制や利用者への注意喚起は検討していないというが、同様のトラブルがあった駅やその周辺では、注意喚起のポスターを掲示しているという。
他の路線でも、様々な対策が講じられている。仙台市営地下鉄では2007年から、駅構内にアルミ風船を持ち込む際、駅員が配布したビニール袋を被せるようお願いをしている。仙台市交通局の担当者は
「袋自体にそれなりの重さがあるので、何も被せない時と比べて飛びにくくなりますし、ビニールが絶縁体の役割を果たすので、もし飛んでもショートする可能性が低くなります」
と話す。また、利用者は袋の端の結んだ部分を握って持つことになるため、何もしない状態と比べ、手を離しにくくなるというメリットもあるそうだ。取り組みは「かなり効果がある」ため、導入から10年経った今も続けているという。
東急電鉄は、自社のホームページ上で「アルミ風船を駅構内に持ち込む際の注意」として
「浮遊したアルミ風船が鉄道の電線などの設備に接触すると、列車が運行できなくなるなどの影響があります。駅構内にアルミ風船を持ち込む際には、絶対に離さないようお願いします。もし、駅構内で手を離してしまった場合は、すぐに駅係員にお知らせください」
と呼びかける。過去にアルミ風船によるトラブルがあったため、再発防止のため掲載しているそうだ。
夏になり、各地でイベントも多く開かれるため、風船を手にする機会も増えることだろう。持ち運ぶ際には、充分気を付けたいところだ。