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裁量のない「裁量労働制」、残業代ゼロで労働時間激増…NPOが7月23日電話相談

2017年07月22日 11:43  弁護士ドットコム

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政府は今秋の臨時国会で、野党が「残業代ゼロ法案」として反対する、「高度プロフェッショナル制」(高プロ制)の創設のほか、企画業務型裁量労働制の拡大などを盛り込んだ、労働基準法の改正を目指している。


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「企画業務型~」とは、企画・立案・調査・分析に当たる労働者を対象に、実際の労働時間と関係なく、決められた時間分の労働をしたとみなす制度。しかし、現実は裁量がほとんどなかったり、本来は対象としてはいけない労働者に対して適用したりと、単なる「残業代減らし」に使われていることが少なくない。「名ばかり管理職」問題と似たような構図だ。


こうした裁量労働制の悪用が増えているとして、労働相談を行っているNPO法人POSSE(ポッセ)が、7月23日(日)午後5時~9時に裁量労働制に関する無料の電話相談会を実施する。番号は、0120-987-215。


POSSEの坂倉昇平氏は「本来、裁量労働制には厳格な条件があるのに、曖昧な知識のまま、残業代を減らせるものとして広まっている部分がある」と語る。いったい、どんな風に悪用されているのか。POSSEに寄せられた相談事例を2つ紹介したい。


●「昇格したけど、裁量労働制で給料が減った」

大手外資系企業に勤める女性Aさんは、実力が認められ、入社間もなく昇格が決まった。それから数日後、会社から「企画業務型裁量労働制」の同意書へのサインを求められた。特に説明はなかったが、同僚から「みんなサインするもの」と言われ、疑問を持たずサインしてしまったという。そして、働き方が変わらないまま、残業代だけが出なくなった。


裁量労働制になったのに、Aさんは日中、オフィスにいることを求められ、変わらず月80時間前後の残業が続いた。あてがわれた仕事を締め切りまでに終わらせるだけで、裁量はほとんどなかったそうだ。基本給こそ上がったが、月収自体は残業代があった頃と同等か、下がることもあったという。


「人事からは裁量労働制だから、(別途支払いが発生する)深夜と休日出勤以外の勤怠は記録しなくてよいと言われました。客観的な数値として分かるのは、労働時間だけなのに、裁量労働だからと、会社は社員の健康にまるで配慮していなかった。上司からの目配せもありませんでした」


Aさんはほどなく精神疾患を発症し、休職。労働基準監督署に申告したところ、裁量労働制が無効と判断され、会社から約200万円の未払い残業代が支払われることになった。


「(見かけ上の)給料が悪くないので、裁量労働制で長時間働かされても、労働者が納得してしまいやすい。でも、給料があるから、いくらでも働いていいわけではない。体調を崩して、やっと分かりました」


●プロモーション担当なのに、「ゲーム会社だから」と誤った裁量労働制の適用?

裁量労働制には、Aさんのような「企画業務型」のほかに、19業種で採用できる「専門業務型」も存在する。


都内のスマホゲーム会社に勤務していた女性Bさんも、そんな専門業務型の裁量労働制を適用されたという。月の残業は70~79時間ほどだったが、裁量労働制のため残業代は支払われなかった。


専門業務型が許される19の対象業務には、「ゲーム用ソフトウェアの創作の業務」というのも存在する。しかし、Bさんの業務は、自社商品のプロモーション。声優とのコラボイベントの企画やメディアミックスなどに携わっていたという。本来、裁量労働制は認められないはずだが、会社の本業がゲーム制作だからと、拡大解釈された可能性がある。現在、裁量労働制が無効であるとして、会社と争う準備をしているという。


(弁護士ドットコムニュース)