トップへ

ガブリエル・アプリンが見せた、シンガーソングライターとしての進化 日本語でも歌った来日公演

2017年07月22日 10:03  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 イギリスの田舎町ウィルトシャー出身のシンガーソングライター、ガブリエル・アプリンが、7月15日と16日に各日2公演ずつビルボードライブ東京にて来日公演を行った。


 ガブリエル・アプリンは、6月28日に最新EP『Miss You』をリリース。同作を携えて行われたこの公演は、2014年の『GREENROOM FESTIVAL』以来およそ3年ぶりの来日公演となった。本稿では、初日15日の第1部の模様をレポートする。


 ライブは1曲目「Sweet Nothing」からスタートした。爽快感溢れる女性コーラスが流れるなか、ドラムとキーボードのサポートミュージシャンとともにピンク色のスーツで登場したガブリエル・アプリン。アコースティックサウンドと、彼女の凛とした歌声が響き渡り、観客もその音に身を委ねる。曲が終わると「こんにちはー」「ありがとうございます」と日本語で挨拶。会場であるビルボードならではの客席との近さ、親密さもあり、終始ファンとのコミュニケーションも交えながらライブは進んでいった。この来日のために勉強したのだろう覚えたての日本語で会話を試みようとする様子からは、24歳らしい等身大さと、彼女の愛らしい一面が伝わってきた。


 エレクトロなサウンドが新鮮な「Night Bus」を挟み、「Please Don’t Say You Love Me」ではサビの部分を日本語で歌うというサプライズもあった。そこから、彼女ひとりによる弾き語りで「Coming Home」と「How Do You Feel Today?」を披露。ギターを爪弾きながら、丁寧に歌を届けた。声の抑揚や、高音の透明感がとてもクリアに伝わり、彼女の歌が持つ“癒し”の側面が感じられる一幕だった。


 再びサポートミュージシャンが加わり、ガブリエル・アプリンがエレキギターを持ったのが「Panic cord」。ドラムのカウントからスタートし、疾走感のあるアンサンブルが紡がれる。<Do Re Mi Fa So La Ti Do That’s the way the story goes, oh(ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド、人生ってそんなものだよね)>と歌うサビがチャーミングで、彼女らしい明るさや楽観的な部分が表れているようにも思えた。また、続く2曲ではギターを置いてキーボードを弾き、多彩なプレイヤーとしての魅力も発揮。密やかながらも壮大なバラードナンバー「Salvation」を歌いあげた。また、「The Power of Love」はフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドのカバーであり、CMに起用されたことをきっかけに全英ナンバーワン・シングルとなった彼女の代表曲とも言える楽曲。これまでもケイティ・ペリー「Teenage Dream」、シーロー・グリーン「F*ck You」、さらに先日は「Beauty and The Beast」(美女と野獣)のカバーも動画サイトに公開。カバーは音楽活動の中で楽しみなことのひとつだという。原曲のテーマを理解しながらも、軽やかでポップな楽曲としてリアレンジする才能が感じ取れる。「The Power of Love」では、原曲の重厚さを柔らかくアレンジしながらも、哀愁が感じられる情緒的な歌で観客を魅了した。


 ハイライトとなったのは2ndアルバム『Light Up The Dark』から選曲された本編ラスト3曲だろう。「Light Up The Dark」は、それまでのアコースティック路線の曲から一変したスリリングなロックチューンで、ガブリエル・アプリンもパワフルに歌い上げる。曲が終わると、観客からもこの日一番の大歓声があがった。そして、ミドルチューン「Heavy Heart」や、本編ラストナンバー「Fools Love」でも、艶やかな歌声でアダルトな曲の世界を描いていった。


 アンコールの拍手に誘われて再びステージに戻っていたカブリエル・アプリン。まずは弾き語りで「Shallow Love」を、その後はサポートメンバーを招き込み、キーボードの流麗な旋律から始まる「Home」を歌唱した。そしてこの日のライブを締めくくったのは、最新EPの表題曲でもある「Miss You」。彼女の今のモードを象徴するようなダンサブルな1曲を披露し、この日のライブは幕を閉じた。


 デビューアルバム『English Rain』はオーソドックスでアコースティックなポップソングを歌うシンガーソングライターという印象の強かったガブリエル・アプリン。しかし2ndアルバム『Light Up The Dark』ではロックサウンドに、そして最新EP『Miss You』ではエレクトロサウンドにチャレンジ。アーティストとしてのキャリアを積む中で、おそれることなく多彩な音楽性に挑めるのは、カブリエル・アプリンの作品の真ん中にあるギターやピアノで奏でるメロディと歌が、ぶれることなく貫かれているからだろう。17歳の時に初めてのEPをリリースし、今は24歳。早熟ながらも等身大な姿で真摯に歌を届ける彼女は、これからも良質なポップミュージックを奏でるシンガーソングライターとして、その名前をさらに多くの人々の間に広げていくだろう。(取材・文=若田悠希)