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「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『怪盗グルーのミニオン大脱走』『心が叫びたがってるんだ。』

2017年07月21日 19:42  リアルサウンド

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 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、編集スタッフ2人がそれぞれのイチオシ作品をプッシュします。


参考:『怪盗グルーのミニオン大脱走』から探る、イルミネーション大躍進の理由


■怪盗グルーのミニオン大脱走


 リアルサウンド映画部のヒゲロン毛担当・宮川がオススメするのは、『怪盗グルーのミニオン大脱走』。


 3月に公開された『SING/シング』が日本でも大ヒットを記録したイルミネーション・エンターテインメントによる大人気シリーズ最新作がついに公開。スピンオフ作品の『ミニオンズ』も含めると4作目となる『怪盗グルー』シリーズ。もはやその勢いはとどまることを知らず、今回も安定の面白さで、爆笑させてくれることもあれば涙を誘ってもくれる。


 今回は、主人公のグルーたちと、そんなグルー以上の人気を誇るミニオンたちの活躍はもちろんだが、グルーの双子の兄弟ドルーと、元子役の悪党バルタザール・ブラットという新キャラクターの2人が面白い。グルーとドルーのコミカルな掛け合いや、80年代カルチャーに染まりまくったブラットの憎めないキャラクターはずっと観ていられるほど全く飽きることがない。


 ちなみに自分は字幕版を観たのだが、吹替版も非常に気になるところ。どう考えてもそのままの笑福亭鶴瓶の吹替はもはや一種の芸として確立されてきた感もあるし、中島美嘉、芦田愛菜、そしてイルミネーション作品には外せない宮野真守が今回はブラットの相棒ロボット、クライヴ役で吹替を担当しているのも見どころだろう。ブラットには松山ケンイチ、ドルーには生瀬勝久と、実力派俳優2人による新キャラクターの吹替も楽しみだ。特に、字幕版ではグルー役のスティーヴ・カレルが1人2役でドルーの吹替も担当しているので、字幕版との大きな違いとして、そこを見比べてみるのも面白いかもしれない。


 そして『怪盗グルー』シリーズには欠かせない音楽。ファレル・ウィリアムスによる5曲の新曲はもちろん、マイケル・ジャクソンの「BAD」やa-haの「Take on Me」など、かつて子役として活躍していたが今は……というバルタザール・ブラットのキャラクター設定と合わせた80年代のポップ・ミュージックの数々も作品を華やかに彩っている。これはサントラも欲しくなる。


 最後にどうでもいいことをひとつ。先日行われた日本語吹替版の記者会見で、グルー役の笑福亭鶴瓶が、生瀬勝久と芦田愛菜の出身地が自身と同じ兵庫県・西宮市であることから、「こんなことある? 西宮が3人もおんねんで!」というようなことを言っていた。会見の取材に出席していた自分は思わず心の中でこう叫んだ。「僕も西宮です!」と。西宮のスターたちが集まった吹替版、やはり観ないわけにはいかない。


■心が叫びたがってるんだ。


 今叫びたいことは、「かき氷に溺れたい!!!」です。そんなリアルサウンド映画部のゆとり女子・戸塚がオススメする作品は、『心が叫びたがってるんだ。』。


 本作は、2015年に公開された劇場版オリジナルアニメ『心が叫びたがってるんだ。』(以下、『ここさけ』)を、『君に届け』の熊澤尚人監督が実写化した青春群像劇。本音を言えない少年・坂上拓実、言葉を封印された少女・成瀬順、恋を諦めた優等生・仁藤菜月、夢に敗れた野球部の元エース・田崎大樹、4人の高校3年生が、“地域ふれあい交流会”の実行委員を通して成長していく模様を描く。


 思わず泣いてしまいました。自分の高校生時代が蘇ってきて。青春ってこんなにもみずみずしいのか、と忘れてしまっていたあの頃を思い出します。生身の人間が演じているためか、アニメ『ここさけ』よりも生々しく、胸をひどくえぐられるシーンや、「無責任すぎる」とイライラしてしまうシーンもありました。でも、その“エグさ”や“無責任さ”もまた、高校生らしいなとなんだか懐かしくなります。子どもでもなく大人でもない。そんな狭間で揺れる高校生は、人生で最も不安定な時期ではないでしょうか。だからこそ、脆い。自分のことでいっぱいいっぱいになってしまい、周りが見えない。身勝手であり視野が狭いのです。そして、一度折れてしまった心は回復するのにとても時間がかかります。本作には、そういった高校生の心の動きがとてもリアルに描写されていました。


 そして何よりも、坂上拓実を演じる中島健人さんがとてつもなく“王子様”でした。坂上拓実はあくまでエアーな少年、普通の高校生という設定なのですが、あんなに優しい男子高校生は中々いないんじゃないかな、と。稀な存在だと思いました。その優しさこそが残酷になってしまう時もあるのですが、それでもやはり振る舞いが“王子様”そのものです。人をバカにしたり、蔑んだりしない。誰かを傷つける悪意を持った言動もしない。そして、成瀬順の叫びを全て受け止めてあげるのです。さらにピアノも可憐に弾けるのだから、もう完璧です。そんな役を中島健人さんが演じているのだから、輝かないわけがないのです。眩しすぎて直視できないくらいにキラッキラでした。さらに、田崎大樹と野球部員のぶつかり合いも目頭が熱くなるポイントです。これぞまさに青春ど真ん中。


 本作の予告編には“《最高の失恋》があなたをきっと強くする”とあるのですが、決して恋愛だけの映画ではありません。劇中で登場する“告白”にも、恋愛だけでなく様々な種類があります。


 個人的に一番心に残っているのは、成瀬順と彼女の母親・泉の歯がゆい関係性でした。お互いのことを大切に想っているからこそ、うまくいかない。親子という最も近しい間柄だからこそ、近すぎて見えない。娘のことがわからず、「どうして?」「なんで?」という疑問が不安に変わっていく母。次第にイライラし、強い言葉で娘を傷つけていきます。そして、娘を傷つけた自責の念で、自身も傷つく。自分で自分の首を絞め、どんどん追い詰められていきます。そんな母に言葉をかけてあげたいけど、発することができない娘。すれ違う不器用な親子に胸が締め付けられました。


 “言葉”は人を喜ばせることも人を傷つけることもできる。『ここさけ』は改めて“言葉”の大切さ、青春時代のむず痒さを感じられる作品です。週末あなたも劇場で叫んでみてはいかがでしょうか?(リアルサウンド編集部)