ホンダF1プロジェクト総責任者の長谷川祐介氏が、今年新たに採用したパワーユニットのコンセプトを来シーズン以降も維持するとの方針を明らかにした。
マクラーレンのパワーユニットサプライヤーとして2015年にF1に復帰したホンダは、コンパクト化されたデザインを追求、その“サイズゼロ”のコンセプトが大きな話題となった。
チャンピオン、メルセデスが採用するスプリットターボ方式は、コンプレッサーをエンジンの片側に、タービンをもう片側に配置するものだが、ホンダは復帰初年度に、V6エンジンのVバンクの中にタービンとコンプレッサーを収めるスプリットターボ方式を採用した。
しかしライバルたちとのギャップはなかなか埋まらず、ホンダは今年、リスクを承知で新しいコンセプトに変更、メルセデス同様の形式を採用したといわれている。
大きな変更を行ったことで、2017年には再び信頼性のトラブルが増えたホンダだが、長谷川総責任者は、2018年以降も現在のコンセプトをキープしたまま、開発を続けていくとの意向を明らかにした。
「今年、新しいパワーユニットコンセプトを導入しました。そのため私としては今年は再び1年目であるといったような考え方をしています」と長谷川氏はホンダの公式サイト上のインタビューにおいて語った。
「私たちの目標は2017年のコンセプトを2018年シーズン、さらにできれば2019年に向けて開発していくことです。エンジンの重量、重心、燃焼コンセプトは他のエンジンマニュファクチャラー3社と同じ方向に進んでいます」
「私たちにとってそれは良いことでした。他のエンジンマニュファクチャー3社に追いつくため、こういった部分の一部仕様をモディファイすることができます。去年のエンジンコンセプトは全く異なっていました。そのため小さなモディファイでは同じようなパフォーマンスを再現することはできませんでした。そのため今年はエンジンコンセプト全体を変更する必要があったのです」
しかしコンセプトを一新したことで、信頼性のトラブルが多発し、ホンダは対策に追われることになった。
「大まかに言うと、完全に新しいエンジンの設計をするには約1年がかかります。そのため2017年のエンジン開発を昨年5月にスタートしました」と長谷川氏。
「今年のパワーユニットは昨年末にでき上がっていました。同時にモノシリンダーテストや他のエンジンでの実験的テストも行いました。しかし完成したエンジンを初めて始動した時、期待に沿った耐久性、あるいはパフォーマンスをもたらしてはいないことが分かりました。多数の小さな問題も発見しました。そのため、細かい修正を行う必要が出てきたのです」
「こういった細かい要素を解決した後、今年初めにフルコンセプトのテストをスタートしました。これが最初の“スペックゼロ”です。最初の冬季テストの前に、ダイナモでテストを行いましたが、もちろんその時にはパワーが私たちのターゲットに達していないことは分かっていました」
さらに実際にコース上を走ると、車体側の問題も発生し、ホンダは難問を抱えることになる。しかしシーズン中にアップデートを繰り返し、オーストリアGPでは“スペック3”を本格投入した。
“スペック4”パワーユニットに関する作業も続けられているが、2018年に向けた開発も同時に行っているという。長谷川氏は現在のコンセプトは今後のシーズンに向けて大きなポテンシャルを秘めていると確信している。
「開発を止めることはありません。アップデートし続ける必要があります。もちろん、パフォーマンスとリザルトが何より重要ですが、同時に将来について学習もしています。今年はエンジンのコンセプトを修正しました。ですが来年は同じコンセプトを維持します」
「同じコンセプトを使用するのはいいことです。今年の開発と改善がダイレクトに来年につながるからです。ですから、今の開発をストップする必要がありません。そういう意味で、私たちはすでに来年のデザインをスタートしているといえるでしょう」