F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。今回はオーストリア&イギリスGP編だ。
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☆ ストフェル・バンドーン
フェルナンド・アロンソばかり注目されるがこの2連戦12位と11位、直近4レースを完走中。トラブルがなかったフリー走行では3セッションで先行、イギリスGP予選9位へ。走りこむことができればしっかり結果につなげる。
☆☆ ニコ・ヒュルケンベルグ
濡れ乾き路面の名手、シルバーストン予選Q1でメルセデス勢に割り込む4位(!)。ドライ部分を巧みに探るライン・ワークが彼のタレント、カート時代に雨中特訓で身につけたとか。1977年のイギリスGPからルノーRS01ターボが初参戦して40年、イギリスGPの6位は価値あり。またルノーPUは4位/5位/6位フィニッシュだ。
☆☆ エステバン・オコン
「1年目はまず全てのレースで入賞が目標」と開幕前に宣言。モナコ以外きっちり実行している新人は、中団グループバトルのなかにいてもミスが極めて少ない(イギリスGPのスタートも見事だった)。
☆☆ セルジオ・ペレス
負け嫌いなメキシカン、予選Q3になると“奥の引き出し”から速さの源を出してくる。シルバーストンがその典型パターン、先行オコンを出し抜く。首脳陣からあらためて『チーム・ファースト』を諭された二人、それを受け入れ10戦8度目のダブル入賞。
☆☆☆ フェルナンド・アロンソ
スペインの雄ラファエル・ナダルが残れなかった今年の『ウインブルドン・テニス』、イギリスGP決勝日と重なった決勝でロジャー・フェデラーが最年長Vを。オーストリアGPに続いてチェッカーまで残れなかったアロンソ、またも4度目のリタイア。みんなもっとアロンソの勇姿を見たい……土曜予選Q1トップ時にはシルバーストンで大歓声があがった。
☆☆☆ マックス・フェルスタッペン
まだ50戦目にしてトップ・メンバーの一人、ますます大人びて見える19歳。レッドブルリンクにあれだけのファンを集めたカリスマ性、シルバーストンで魅せたアタック能力。92~93年ベネトン新鋭時代のミハエル・シューマッハーがだぶる……。
☆☆☆ キミ・ライコネン
5位と3位という結果に終わった2連戦、レースのベストラップはベッテルより速かった。マシンにはほぼ満足気でもゲーム展開が悪い流れ、イギリスGP終盤にタイヤトラブル。仏頂面のキミ、黙して語らず。
☆☆☆☆ セバスチャン・ベッテル
オーストリアではバルテリ・ボッタスのスタートにいらだち、イギリスではフェルスタッペンのブロックにいらいら。ポイントリーダーだからこそ勝負にこだわる気力の表れだ。そうやってチームを引っ張るベッテル。1点差となった今、チャンピオンシップはこれからリスタート。
☆☆☆☆ ダニエル・リカルド
恐れを知らぬ“ミツアナグマ”のようなレース。最後尾スタートになっても歯向かっていくリカルド、ハンガーストレートからストウで“オーバーテイク祭り”。次々に獲物を捕らえるさまはまさに動物的、一発で抜くブレーキング・ラインをたっぷり見せてもらった。
☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン
近代F1で全集回リードはまれなこと。PPウイン+最速ラップに加えてまたまたグランドスラム達成。今年、中国GPとカナダGPに続いて3度目だ。シーズンに3度はアルベルト・アスカリ、ジム・クラーク、ナイジェル・マンセルとタイ記録。くりかえしになるが『歴史的な大勝利』だ。
☆☆☆☆☆ バルテリ・ボッタス
この2連戦に二つの技を見た。レッドブルリンクでぎりぎりのスタート、登り坂のここでは発進力が勝負ポイント。一瞬の遅れが大差になってしまう。フリー走行後にグリッドからスタート練習できるのは3回だけ、彼はそこで励んだのだろう。PPからのダッシュ成功が勝因となった。
シルバーストンではグリッドペナルティがあったため、戦術としてベターなソフトタイヤを金曜から重点セットアップ。予選4位→9番グリッドからソフトで32周ロングスティントをカバー。
後半スーパーソフトでスパートをかけて2位、見事なレースメイキングだ。カナダGPから2位・2位・1位・2位、巧さ×速さ×駆け引きが三位一体となった結果である。夏のタイトル戦線に『第3の男』が上がってきた。