なぜ、ストフェル・バンドーンはイギリスGPで11位に終わったのか? 考えられるのは、ピットストップ戦略が功を奏さなかったことだ。19周目の時点での各ドライバーの順位とピットストップとギャップは以下の通りだ。
ドライバー周回数、タイヤ、ギャップ7位 エステバン・オコン20周目(SS→S)8位 セルジオ・ペレス23周目(SS→S)+1.6秒9位 ストフェル・バンドーン26周目(SS→S)+1.5秒10位 ダニエル・リカルド32周目(SS→S)+2.6秒11位 フェリペ・マッサ25周目(S→SS)+4.9秒
これを見ればわかるように、フォース・インディア勢はバンドーンのアンダーカットを恐れて、早めにピットイン。その後、ポジションをキープすることに成功している。
一方、フォース・インディア勢にアンダーカットされたバンドーンはその後、最後列から猛烈な追い上げを見せたリカルドにオーバーテイクされたものの、10番手を走行。まだ入賞圏内にいた。
ここでマクラーレン・ホンダ陣営とバンドーンは3つのミスを犯した。ひとつは、マッサにアンダーカットを許したことだ。スタート時にスーパーソフトタイヤを履いたフォース・インディア勢がピットインしており、チームメートのアロンソもスーパーソフトからソフトにタイヤを替えていることから、バンドーン陣営が残りの周回数を気にして、躊躇する理由はなかった。にもかかわらず、マクラーレンはバンドーンのピットインを引っ張った。
マクラーレンの関係者によれば、「あそこでピットに入れると、ピットアウトしたときザウバーの後ろに回ってしまう」とピットストップを延ばした理由を説明していた。マッサはスタート時にバンドーンとは違ってソフトを履いていた。マクラーレン陣営は、ピットアウトして渋滞に引っかかっている間に、マッサにオーバーカットされることを恐れたのだろう。
それでも、マッサがピットインする直前の24周目の時点でも、バンドーンとマッサの差は4.1秒あった。つまり、バンドーンがマッサに逆転されたのは、ピットストップ戦略だけが原因ではなかった。
2つ目のミスは、ピットストップ作業だ。マッサの静止時間が国際映像に映らなかったので、FIAが発表したピットレーンの滞在時間で比較すると、マッサが27.5秒だったのに対して、バンドーンは29.3秒もかかっていた(静止時間3.8秒!!)。ここで1.8秒失ったわけである。
さらにインラップでもロスしている。マッサが1分34秒160でピットインしたのに対して、バンドーンは1分34秒824。コンマ7秒遅かった。
さらにバンドーンがピットアウトした27周目にマッサはその時点での自己ベストとなる1分33秒757をマーク。この結果4.1秒あったマージンは、限りなくなくなり、ピットロードを出たバンドーンはマッサに逆転を許したのである。
中団争いが激しさを増す現在のF1では、マシンそのものが持つ速さも重要だが、その速さをいつどこで絞り出すかも重要になる。イギリスGPの予選では初めてアロンソに勝ったバンドーンだが、レースではレギュラードライバー1年目の若さが露呈した結果となった。