世の中には「それってどういうメリットがあるんですか?」と聞きたくなるような、変わった取り組みをしている会社が少ないながらも存在する。日本企業なのに公用語を英語にしたり、便所を素手で掃除したり。いざ自分が所属する会社や団体でこういうことがスタートしたら、本気でイヤになる。
最近、似たようなことをスタートさせる団体が現れた。提唱者は、小池百合子東京都知事だ。(文:松本ミゾレ)
機運上昇のため、職員一丸となって行うラジオ体操っていうけど……
報道によると、小池都知事が7月14日、2020年に迫る東京オリンピック・パラリンピックの機運を盛り上けるため職員全員でラジオ体操をすると発表した。「都でも、都庁の職場で毎日、午後2時55分になれば、どこにいても体操を始められるようにしたい。フラッシュモブのような形に」と語ったという。
フラッシュモブ。日本では結婚式のビデオレターとかでしばしば見かける、みんながいきなり息を揃えて踊りだす、アレだ。やってる当人たちは気持ちいいかもしれないけど、傍から見るとだいぶ寒い。正直、小池都知事のこの発言を知ったときは、ちょっと引いてしまった。
「みんなでラジオ体操プロジェクト」などという名称でスタートするこの取り組み。今月24日から、パラリンピックの閉会式が予定される、2020年の9月6日まで実施されるという。都の職員たちは「こんなのに付き合わせないでよ」と思っているに違いない。同情を禁じえない。
職員はきっと「余計な手間を増やしやがって!」と思っているに違いない
ところでどうしてラジオ体操をセレクトしたのか。小池氏いわく、「ラジオ体操は日本人のDNAに刻まれたスポーツ。都民と国民の心を一つにしてほしい」という。まずラジオ体操は単なる準備運動としか考えてなかった身としては、この発言には違和感をおぼえる。
また、小池都知事は今後、都内の企業やその他の自治体にも、同じ取り組みへの参加を呼びかけていくという。十中八九これに倣う企業なんて出没しないと思うが、万が一感化される経営者がいた場合、その下で働く人たちは、シンプルに可哀想だなぁ。
だってたかがラジオ体操とは言え、やるタスクが余計に増えてしまう上に、その分の手当てだって出ないに決まっているんだもの。ラジオ体操をすることでオリンピック・パラリンピックへの機運が高まるという因果関係も不明だ。そんなの人による。
そもそもこう言っちゃアレだけど、今回のオリンピック開催を喜んでいる人が大多数とも限らない。都職員の多くはきっと「余計な手間増やしやがって!」と思っているに違いない。