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F1 Topic:ハミルトン、F4レースで大怪我を負ったビリー・モンガーをイギリスGPに招待

2017年07月19日 16:02  AUTOSPORT web

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優勝したルイス・ハミルトンとビリー・モンガー(左)
「そして、いまこの表彰台の下にいるビリーにも、感謝したい。彼との出会いは、僕にとって大きな励みになった。来てくれて、ありがとう。今日のレースは彼のために戦った」 イギリスGPで4連覇を達成し、通算最多タイとなる5度目の優勝を飾ったルイス・ハミルトンは、表彰式でのスピーチでそう言った。 

 ビリーとは、今年4月にドニントンパークで行われたイギリスF4のレース中にアクシデントに見舞われ、両脚切断の大ケガを負ったビリー・モンガーくんのことだ。ハミルトンは事故後、初めて開催された母国グランプリに、イギリスに住むモンガーくんを招待していた。

 ただ、モンガーくんは18歳の少年で、手術を終えたはかりということもあり、家族のサポートが必要だった。そのため、ハミルトンはモンガーくんだけでなく、モンガーくんの一家全員をシルバーストンに招待していた。

 金曜日と土曜日は、父親のロブさんと2人でサーキットを訪れ、モンガーくんは特別にメルセデスのガレージに入る許可を得て、間近でフリー走行の様子を見ていた。


 日曜日には母親のアマンダさん、弟のデブリンくん(17歳)、妹のボニーさん(16歳)も駆けつけた。現在、イギリスF3選手権にカーリンから参戦しているデブリンくんは、「自分のレースでシルバーストンに来たことはあるけど、F1で来たのは初めて」と、華やかな雰囲気を楽しんでいた。


 父親のロブさんは「ルイスには本当に感謝している。この3日間は、息子は毎日興奮しっぱなしだった。レースは本当に素晴らしい」

 著名人が、ハンディキャップを背負った人をサポートするのは、決して珍しいことではない。特にハミルトンには、生まれつき脳に障害を持つ弟、ニコラスがいるので、その思いは強かったようだ。当初、医師はニコラスが生涯、自分の脚で歩くことはできないだろうと家族に告げ、実際ニコラスは11歳になるまでに車イスでの生活を余儀なくされていた。

 その後、ニコラスは異母兄のルイスを応援するためにサーキットを訪れ、モータースポーツの素晴らしさを知る。いつしか、レーシングドライバーになりたいという夢を持ったニコラスはリハビリを開始。その傍ら、脚の不自由を理由にライセンス発行を渋るモータースポーツ協会を説き伏せ、レーシングライセンスのテストも受け、見事クリアする。

 そして、2011年にルノーUKクリオ・カップにレースデビューするという夢を実現した。もちろん、ニコラスを支え続けたのは、ハミルトンだった。一時、レースを休んでいたニコラスだが、今年復帰。再びルノーUKクリオ・カップに挑戦している。

「すでに2戦を終え、10位と5位だった。今年はあと5戦ある。もっと上を目指すよ」(ニコラス)


 足が不自由なニコラスは、足でのクラッチ操作が難しいため、ステアリング裏にパドルを装備した特別仕様でレースを戦う。そのニコラスから、レースの話を聞いていたモンガーくん。いつの日か、レースに復帰する日が来ることを祈りたい。

 なお、モンガーくんに、ハミルトン以外で最もお気に入りのドライバーはだれかを尋ねたところ、答えは「リカルド」だった!!