FIAの欧州格式選手権であるETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップの第4戦が、初開催となるスロバキアリンクで行われ、ここまで連勝に連勝を重ねてきたフレートライナーのアダム・ラッコが未勝利に終わる波乱の展開に。
代わって勝利を挙げたのは、チーム・タンクプール24のノルベルト・キス(メルセデス・ベンツ・トラックス)、トラックスポーツ・ルッツ・ベルナウのアントニオ・アルバセテ(MAN)、そしてシリーズの紅一点であるラインアート・レーシングのシュティフィ・ハルム(MAN)というフレッシュな顔ぶれとなった。
7月14日金曜の公式練習から「セットアップに満足がいかない」と漏らしたキスだったが、かつてスポーツカー・シリーズで走行経験のあったこのスロバキアのサーキットをいち早く攻略してみせ、レース1に向けたスーパーポールセッションでトップタイムを記録。そのまま土曜午前のレース1も制し、待望の今季初勝利をマークした。
2位表彰台には第2戦から5連勝をマークし、6連勝を狙ったラッコのフレートライナーが入り、惜しくも連勝記録はストップ。3位には昨季王者のヨッヘン・ハーン(イベコ)が続いた。
一方、フロントロウにつけていたアルバセテとサイド・バイ・サイドのバトルを展開したハルムは、その最中に彼のトラックをプッシングしてしまうロスが響き4位。このバトルでコースオフを喫したアルバセテも、一時10番手までドロップしたものの、怒涛のチャージで5位までカムバックを果たした。
続く午後のレース2でグリッドポジションを活用したこのふたりは、アルバセテ、ハルムの順でチェッカー。アルバセテはETRC参戦100戦目の節目となるレースで、2015年のル・マン戦以来となる2017年初勝利を挙げた。
翌16日の日曜レース3に向けた予選では、王者ハーンが意地のポールを獲得したものの、スロバキアのトラックは新たな勝者に有利なのか、スタートのターン1でキスとアルバセテがハーンのイベコをかわして前に出ることに成功。
さらに続けざまのターン2でインにダイブしたキスがアルバセテをオーバーテイクし、実質的に勝負あり。前日の今季初勝利に続き、キスが今季2勝目。2~5位にはレースを通じて4台でのバトルを繰り広げたアルバセテ、ハーン、ラッコ、ハルムが入った。
そして週末の最終戦となるレース4では、前戦で8位フィニッシュとなったゲルト・コーバー(イベコ)がリバースポールからのスタート。しかし、1コーナーのアウト側から突如先頭に躍り出たのは、4番グリッドからスタートしたハルムのMANだった。
抜群のダッシュを見せたハルムは、ポールのコーバーやフロントロウのサッシャ・レンツ(MAN)をまとめて抜き去ると、後方でバトルを続けるハーンやキスとのギャップをみるみる広げていき、悠々8周のトップチェッカー。2万5000人の観衆を前に、見事な今季2勝目を挙げた。
「本当に完璧な週末になったわ」と、表彰台の頂上で喜びを語ったハルム。
「昨日の頑張りを結果につなげるために、レース4に向けてはセットアップを変更したの。それが中古タイヤを機能させるのに驚くほど効果的だった」
「スタートは完璧だったし、ヨッヘン(・ハーン)を引き離すことができた。前のレースから、彼のトラックはどこが速くて、どこが遅いかも把握できていたしね」
選手権リーダーは、依然として初の王座獲得に向け視界良好のフレートライナー、ラッコだが、2位には週末2勝を挙げたキスとなり、ハーン、ハルムと混戦状態が続く。ETRCの次戦はサマーブレイクを挟んで、8月26~27日のハンガロリンク戦で再開となる。