2017年スーパーフォーミュラ第3戦、富士スピードウェイで、ITOCHU ENEX TEAM IMPULの関口雄飛は予選3位からスタートし、表彰台には一歩届かぬも、最後まで息もつかせぬ白熱バトルで観衆を魅了
7月8日~9日、静岡県、富士スピードウェイにおいてスーパーフォーミュラ第3戦が開催されました。第2戦の第2レースで見事な優勝を飾った関口雄飛とITOCHU ENEX TEAM IMPULのメンバーは、チームが得意とする富士スポードウェイでシリーズポイントを逆転すべく、必勝態勢で第3戦に臨みました。
木曜日にサーキット入りした関口雄飛は、念入りにエンジニアとのミーティングを終え、金曜日のフリー走行1回目に臨みました。結果は見事にトップタイム。まずは岡山の流れを維持し、順調な滑り出しを見せました。
続く土曜日。チームとの全体ミーティングを午前8時に終え、9時10分から1時間のフリー走行2回目が実施されました。このセッションは予選でのセットアップを煮詰めるとともに、決勝に向けてのデータも収集しなければなりません。
何度もピットイン、ピットアウトを繰り返し、エンジニアと無線で次々と改良点を指摘していきます。関口雄飛は最終的に8番手で2回目のフリー走行を終えましたが、ニュータイヤは温存しており、チームも本人も、まずまずの手応えを得ていました。
午後2時30分からのノックアウト式予選Q1は、気温32度、路面温度49度という真夏のようなコンディションのなかでスタートしました。
1周目にゆっくりとタイヤを温めた関口雄飛は、まず1分27秒790をマークし、3周目に1分24秒590をマークしてまずは1セット目のアタックでトップに立ちます。
しかし、全19台が1秒以内にひしめいており、予断は許されません。続く2セット目のアタックでは、関口雄飛は残り5分でコースインし、1分24秒304とタイムアップしたものの、10番手へとドロップしましたが、まずはQ2進出を果たしました。
予選Q2までにセットアップをアジャストし、ゆっくりとコースインすると1分23秒893をマークし、2番手タイムでQ3進出を決めました。
セクター1では全車中ベストタイムをマークしており、さらに微調整を進めます。グリッドのトップ8を決める予選Q3、関口雄飛は8台による熾烈なアタック合戦の結果、1分23秒193をマークしたものの、わずかにトップには届かず予選3番手でチェッカーを受けました。
決勝当日、好天に恵まれた富士スピードウェイには、早朝から多くのファンが詰めかけ、にぎわいを見せています。前日の予選で3番手グリッドを得た関口雄飛は、岡山国際サーキットのような抜けないコースではないため、充分に優勝を狙えるポジションだと、決勝に向けて自信を深めていました。
星野監督も「関口はもう放っておいてもすべて自分で考えられるし、シミュレーションもできるし、若いスタッフやエンジニアたちとうまくやっているから、僕は何も言うことはないね」と温かい目で見守っています。
朝のフリー走行を含め、決勝スタート直前まで、チームはレースシミュレーションをし、ピットインのタイミングやタイヤ交換の有無を話し合いました。
気温、路面温度はテスト時から想定していた温度よりはるかに高く、タイヤやドライバーにとって負荷が大きいレースになることは予想できましたが、スタート直後のポジショニングや、それぞれのチームの戦略の違いによって、レース展開はまったく読めない状況でした。
レース中にタイヤ交換、給油は義務付けられていませんが、給油のみでタイヤ無交換、給油とリヤタイヤのみ交換、4輪とも交換といった戦略が考えられます。
午後2時10分、フォーメーションラップが始まりました。気温32度、路面温度は44度と、真夏のようなコンディションのなか、各車スタートのシグナルを待ちます。
レッドシグナルがすべて消えた瞬間、見事なスタートを決めた関口雄飛は、第1コーナーを2番手でクリア、トップの国本雄資選手を追います。関口雄飛の後方はまたしてもロケットスタートを決めた中嶋一貴選手と、予選2番手からドロップした石浦宏明選手でした。
レース序盤はこの上位4台が拮抗する展開で進んでいきましたが、トップを走る国本選手のペースが速く、次第に関口雄飛との差を開いていきます。
1周目、0.888秒、2周目、1.289秒、3周目、1.501秒と、僅かながらも着実に差が開きつつある展開のなか、関口雄飛はむしろ後方の2台を抑える形でレースを進めていきます。
9周目を過ぎたころからピットインするマシンが出始め、関口雄飛も15周目にピットインすると、タイヤ無交換、給油のみの作業でレースに復帰。順位がひと段落すると、関口雄飛は9番手、ピット作業をした中ではトップのポジションで中盤戦に突入しました。レースはその後、想像もしなかったサバイバルレースとなりました。
トップを走る国本雄資選手が31周目にトラブルでリタイアし、またタイヤ無交換で走り続けるマシンが次々バーストに見舞われたことで、上位陣も同様のトラブルに対する不安を抱え、やや安全策を取ってタイヤ4輪交換をするチームが増えました。それが結果的にタイヤ無交換作戦の関口雄飛にとって厳しい状況を招きました。
ピットストップを済ませたマシンの中ではトップを走っていた関口雄飛でしたが、後方からさらに速いペースで追い上げてきたロッテラー選手と激しいバトルを展開。
手に汗握る接触寸前のバトルの末、関口雄飛は36周目のダンロップコーナーでひとつポジションを落としてしまいます。
その後、ピット作業を42周目まで引っ張り、首位を走っていた小林可夢偉選手がタイヤ交換後のリスタートに戸惑い、戦線離脱。この時点で関口雄飛は4位を走行していましたが、後方からタイヤ交換を済ませた昨年のGP2チャンピオン、ピエール・ガスリー選手が万全の状態で激しくチャージしはじめていました。
スタンドに詰めかけた観客の注目はレースの首位争いではなく、実質的な4番手争いであるこのふたりの見応えあるバトルに注がれました。コーナーの立ち上がりで激しくリヤをスライドさせて、なんとかマシンをコース上にとどめるような関口雄飛に対し、フレッシュタイヤゆえにブレーキング、コーナーリング、立ち上がりのグリップに勝るガスリー選手は随所で激しく関口雄飛に迫ります。
ストレートでも両選手ともオーバーテイクシステムを駆使しつつ、激しく、クリーンなバトルを展開。ラスト5周の攻防戦は、テレビカメラもこの2台のバトルしか映さない状態で、ファンを魅了する本物のレースを見せてくれました。
結局、4位争いはそのまま0.035秒差で関口雄飛のマシンが先にコントロールラインを通過。肉眼では、ほとんど同時に近い緊迫したゴールでした。
星野一義監督も、関口雄飛がピットに戻ってくるや否や、「よく抑えた、よく頑張った」と握手を求め、激しい4位争いの攻防戦を守り抜いた走りを賞賛しました。
チャンピオンシップポイントでは関口雄飛がランキング3位に浮上。着実にタイトル争いを見据えた戦いぶりを身に着けた関口雄飛は、王座を目指して、シリーズ後半戦へと突入します。
関口雄飛のコメント
「岡山でいい結果が出て、その流れを金曜日まではキープできていましたが、天候や路面温度の違いで一瞬にして勢力図が変わってしまうのが今のスーパーフォーミュラの難しさです」
「予選では頑張れるところは精一杯頑張ったのですが、予選3番手は悔しい結果でした。マシンのセットアップはとても上手くいっており、路面温度や気温の変化に合わせてアジャストしながらQ3まで進んだのですが、ほんの少し足らなかったですね」
「今回のレースは岡山と違って、1回タイヤ交換が許されているということですが義務ではないので、悩みどころでした。ヨコハマタイヤの耐久性は素晴らしく、タイヤ無交換でもいける状況でしたが、決勝当日の気温や路面温度が過去最高になるかと思うので、そのあたりを計算して、タイヤ交換してプッシュ、プッシュでいくのか、本当に最後の最後まで、作戦を決めかねていました」
「決勝は自分では普通のスタートが切れたと思ったのですが、まわりが上手くなかったせいで結果的に良いスタートが切れました。それはひとつの進歩でしたね」
「ただ本番のペースは国本選手が凄く速くて、自分たちは逆にペースが悪かったので、後方の中嶋選手がピットに入ったときは、アンダーカットされないようにピットインのタイミングを合わせるしかなかったので入りました」
「ロッテラー選手とのバトルは、ブレーキングで耐えに耐えて、頑張ったのですが残念でした。でもあのバトルも自分的にはベストを尽くしたので、悔いはありません」
「ガスリー選手が迫ってきたときは、正直マズイと思いましたが、絶対に抜かれないようバックミラーを見ながら、相手がオーバーテイクボタンを押したなと思えば、即座にこちらも押して対応し、ギリギリのブレーキングで抑え切りました」
「スタンドの皆さんからは、僕がオーバーテイクボタンを押したタイミングがブレーキングゾーンに入ってから押しているように見えたかも知れませんが、実際には押してからロールバーのライトが点滅するまで約5秒近く遅れるのでそう見えただけで、僕だってブレーキングゾーンでオーバーテイクボタンを押したりはしませんから(笑)」
「とにかく彼を最後まで抑え切れて4位のポイントをゲットできたことが嬉しいです。厳しいレースではありましたが、いまのスーパーフォーミュラはご存じのように毎回ウィナーも変わりますし、ラップタイムでも週末を通じてセッション毎にトップが入れ替わる激しい状態です」
「そんななかで5位ではなく4位で終われたことを嬉しく思いますし、苦しい戦いを勝ち抜いて得た4位です。今日、チームとともに勝ち得た4位のポイントは、シリーズ後半戦へと進むにつれて、きっと大切な役割を果たしてくれるでしょう」
「目指すはシリーズチャンピオンです。ポイントを取りこぼすことなく、シーズンをまとめていくことの大切さを昨年のタイトル争いから学びました」
「今日は3番手でスタートして、ポジションをひとつだけ落として4位でゴールという形になりましたが、自分にとって価値ある4位だと思っています。応援してくださった皆さん、本当にありがとうございました」