アドビシステムズは、10代と10代の生徒を担当している教師を対象に、学習、クリエイティビティ、将来の仕事に関する調査を実施。6月末に結果を発表した。日本、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ドイツの5か国で行った。見えてきたのは、他国よりも保守的な若者の姿だった。
自分の生徒を「創造的である」と受け止める教師は、たったの2%
調査対象は、日本は12歳~18歳、他国は11歳~17歳の若者と、この世代を担当している教師。調査期間は、日本は2017年5月後半から6月1日、他国は2016年9月後半から10月6日までで、オンラインで回答を募った。
自分の特徴を表す言葉を複数回答で選んでもらう質問では、日本の1位は「恥ずかしがり」(33%)だった。他国では、アメリカは「頭が良い」(63%)、イギリスは「努力家」(50%)、オーストラリアが「創造的」(46%)、ドイツが「少しなまけ者」(45%)と並んでいる。
特徴的なのは、「創造的」と捉える人の少なさだ。日本以外の4か国では軒並み40%前後を記録し、上位5項目にも入っているのに対し、日本で自分を創造的と捉えているのはたった8%だった。同様の質問を教師にしても、生徒が創造的だと捉えているのは2%と極めて低く、グローバル平均の27%を大きく下回った。
10代が上の世代よりどの程度創造的か訊ねた質問でも、日本の若者の36%は自らを「創造的でない」と認識しており、5か国の中で最も高い割合を記録した。
将来の仕事についても、創造性が求められる仕事を「たくさんある」と回答したのは31%で、約7割は「創造性が求められる仕事は一握り」と捉えていることが分かった。調査を行ったアドビシステムズはこれらの回答から、日本の若者は「『創造的』であることは特別なこと、限られた人のことであると考えている可能性が高い」と分析している。
将来目指す仕事は「看護師」「教師」など伝統的な仕事
日本を含む世界各国の教師は、10代の生徒を教育する際、ビデオやポッドキャストなどのインタラクティブツールを使うことの重要性を感じているようだ。これらのツールを使うことを「やや重要」「とても重要」を選んだ教師の割合は、日本は72%で、「事実や歴史を暗記する」(58%)よりも高かった。
ただ、実際の教育現場ではまだ、事実の暗記を中心に行われていることも判明した。教師が考える学習方法の優先度・重要度と、実際に行われている方法にはギャップがあるようだ。
アクティブラーニングや実習・演習については、効果的だと捉えている割合は52%と半数程度。8割前後を記録している他国と比べて低かった。
将来の仕事に関しては、「自分の生徒は今から想像できないような仕事に就くだろう」と答えた日本の教師の割合は、グローバル平均を下回って73%だった。また、子どもたちに聞いた「将来憧れている・目指している職業」も、日本は教師、薬剤師、看護師など、保守的な職種が目立つ。
同社はこれらの結果から、「日本は生徒と教師いずれも、将来の仕事や今後の社会で起こり得る変化に対し、やや保守的な見通しであると思われる」と見ている。